私は二日目のレースはコースに行かないことにした。必要なことはすべて見たからだ。私はあのときのフォーミュラEには良い印象を受けなかった。
マシンは遅すぎるし、ロンドン市民にとってこのイベントが時間とお金の面で高い価値があるとも思えない。コースから帰る途中、もうひとりのジャーナリストとともにパブに寄った私は、彼とフォーミュラEの何が問題なのかについて議論した。
標準シャシーとバッテリーパックが使用されているのでマシンが遅すぎる。またマシンがすべて似通っているという結論に達した。電動レースは方法次第でエキサイティングなものになり得るが、マシンは急進的で印象強いものにする必要がある。
第一世代と呼ばれるマシンにはそのどちらもなかった。そしてマシンだけでなくチームとマニュラクチャラーがさらに技術開発を行う余地があるとも感じた。このシリーズが自動車産業への関連性を持つためには重要なことだ。
こうしてバタシーでの初めてのフォーミュラE観戦は退屈だった印象を残して終えた。あのコースは二度と使われることはないだろう。ちなみに、フォーミュラEがロンドンに戻るときには、ドックランズの金融街の新しい会場で行われるはずだ。
そしてより速くエキサイティングなマシンが走ることになる。現在のフォーミュラEのマシンはあのときよりはるかに見ていて面白い。
だが、このチャンピオンシップにはまだいくつか問題があると思っている。技術開発は制限がきつく、モーターレースというのは、パワートレインだけでなくマシン全体が重要だ。
それがヨーロッパでERAシリーズが始まることに私が大いに興奮している理由だ。同シリーズでチームは、F4のモノコックをベースにマシン開発ができるのだ。費用効率も良く、同時にイノベーションを促すものだ。
ジャガーI-Paceによるサポートレースは中止となり、また予選と決勝の間に見るものがほとんどなくなってしまったが、シリーズが再開されれば私はもちろんロンドンのレースに行くし、ヨーロッパでの数戦も見に行くだろう。
観客に対しても大きく改善されていることを期待する。それでも私は、電動レースはショーを改善するためにさらに必要なことがあると思うのだ。
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サム・コリンズ(Sam Collins)
F1のほかWEC世界耐久選手権、GTカーレース、学生フォーミュラなど、幅広いジャンルをカバーするイギリス出身のモータースポーツジャーナリスト。スーパーGTや全日本スーパーフォーミュラ選手権の情報にも精通しており、英語圏向け放送の解説を務めることも。近年はジャーナリストを務めるかたわら、政界にも進出している。
