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投稿日: 2022.07.04 17:24
更新日: 2022.07.04 19:04

ポール・トゥ・ウインのリンク&コーに、今度はライバル陣営から疑問符「三味線だ」/WTCR第5戦


海外レース他 | ポール・トゥ・ウインのリンク&コーに、今度はライバル陣営から疑問符「三味線だ」/WTCR第5戦

 スペインのモーターランド・アラゴンに続き、イベリア半島連戦となった2022年WTCR世界ツーリングカー・カップ第5戦が7月1~3日にポルトガルのヴィラレアル市街地サーキットで開催され、予選ポールポジションを獲得したサンティアゴ・ウルティア(シアン・パフォーマンス・リンク&コー/リンク&コーCo 03 TCR)が、レース1ポール・トゥ・ウインで今季2勝目を獲得。続くレース2は“ジョーカーラップ”戦略を決めて終盤の大逆転劇を演出したロブ・ハフ(ゼングー・モータースポーツ/クプラ・レオン・コンペティションTCR)が、待望の今季初優勝を飾っている。

 シリーズ創設の2018年以来、通算100戦目を迎えたWTCRは、これが2022年折り返しの1戦に。ここまで3勝を挙げポイントリーダーに立つミケル・アズコナ(BRCヒョンデN スクアドラ・コルセ/ヒョンデ・エラントラN TCR)は、前週の地元戦でも予選ベストラップの平均で算出される改訂版コンペンセイション・ウエイトの規約を巧みに利用し、予選ポジションを抑えつつ決勝中のスピードを維持してレース2を制圧してみせた。

 その結果、このラウンドに向けホンダとアウディが40kg、リンク&コーが20kgのウエイトを搭載するのに対し、ヒョンデは0kgのままで市街地戦に挑む状況を整えた。それだけに、ラリークロス方式の“ジョーカーラップ”を採用するヴィラレアルに向け、戦前から「この週末はBRCが主役になる」との声が挙がっていた。

「もちろん、このストリートサーキットには良い思い出がある。僕がWTCRで初勝利を挙げた場所でもあるからね」と意気込みを語ったランキング首位のアズコナ。

「僕らは本当に良いポジションにいるし、今は週末のレースに集中し続けようと思う。目標は生き残り、ミスを犯さないことだ」

 そう語ったアズコナに対し、高速レイアウトの市街地戦で立ちはだかったのがアズコナと同様シーズン勝利を挙げているウルティアとリンク&コー陣営で、最初のプラクティスではウルティアが、2回目では現役王者ヤン・エルラシェール(シアン・レーシング・リンク&コー/リンク&コー03 TCR)が最速タイムを記録する。

 勢いそのままに臨んだ予選では、ウルティアとエルラシェールがフロントロウを独占し、直線速度の低さに苦しんだアラゴンでの雪辱を晴らすグリッドを得た。

「とてもうれしい結果だ。同じく初ドライブだった開幕のポー(市街地)でも良い走りができたし、僕はストリートと相性が良いみたいだね」と、自身初のヴィラレアルで2020年以来となる予選最前列を獲得したウルティア。

「良いラップを刻んでポールポジションを獲得できたが、それはつねに難しいことであり、市街地サーキットではさらに難しいこと。だからこそとてもハッピーだよ。明日はチームがどのような戦略を取り、ポイントを獲得するための優先順位がどこにあるかを見ていきたい。僕はプロフェッショナルとしてここにいるし、チームの判断には100%従うつもりだ」と続けたウルティア。

 その発言の真意は、この予選終了時点でわずか1ポイント差でランキング2位と3位につけるウルティアとエルラシェールの立ち位置を念頭に置いたもので、前人未到の3連覇を狙う現チャンピオンか、それとも初の王座獲得を期待しての新鋭か。シアン・レーシングはタイトルに向けた“優先順位”という難しい決断を迫られることに。

ここまで3勝を挙げポイントリーダーに立つミケル・アズコナ(BRC Hyundai N Squadra Corse/ヒョンデ・エラントラN TCR)は、予選Q1で縁石によるダメージを受ける場面も
レース1に向け、ウルティアとエルラシェールがフロントロウを独占し、直線速度の低さに苦しんだアラゴンでの雪辱を晴らすグリッドを得た
レース1で3位に喰い込んだネストール・ジロラミ(ALL-INKL.COM Münnich Motorsport/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)は、ライバルの行為に苦言を呈する

 その答えは明けた決勝レース1で早くも具現化され、ホールショットを奪ったウルティアが3周目に早くも“ジョーカー”を消化すると、クリーンエアでプッシュした2番手エルラシェールは5周目にロングコースへと飛び込み、さすがのドライブでウルティアから首位を奪ってみせる。

 しかしその直後にチームから無情の指令が降り、チャンピオンに「ポジションを返すよう」無線が飛ぶと、2台はウルティア、エルラシェールの順でチェッカー。戦略どおりシアン・レーシングがワン・ツー・フィニッシュを達成したが、3連覇を狙う26歳のフランス出身ドライバーにとっては、チームの判断を含め失意のレースとなった。

「僕らの戦略はワン・ツーを維持することで、それはうまくいった。でも、これについてこれ以上コメントすることはできない。今回の判断がシーズン残りの期間で最終的に報われることを願っているが、それにしても……痛いね」とエルラシェール。

■一部のチームが三味線を弾いているとの声

 その一方で、引き続き最多重量40kgを搭載しながら奮闘の3位に入ったネストール・ジロラミ(ALL-INKL.COM・ミュニッヒ・モータースポーツ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)は「一部のチームは、平均ラップタイムを抑えるため実際のペースよりも遅い予選ラップを設定することで、計算によるウエイト加算の影響を最小限に抑える戦略を利用している」と不満を述べた。

「これについて話すのは難しいが……僕らはミラーをガードレールに擦り付けてでも、最後の10分の1秒を絞り出している。でもセッションが終了するとセクタータイムが表示され、明らかにおかしな表示が含まれる。全然、コース上のパフォーマンスと足し合わないんだ」と明かしたジロラミ。

「それはアラゴンで起こったし、ここでも起こっている。それが現実になっても(自身の3位表彰台獲得で)報われないのに、なぜそんな危険を冒すのか。本当に苛立たしいね」

 さらに戦前の“槍玉”に上がったBRCヒョンデの現チームアドバイザーを務めるガブリエル・タルキーニは、前戦に関して「確かに我々は戦略を実行したが、これはルールで許可されているものの範囲内で実施したもの」だと認めつつ、この週末のシアン・レーシングのパフォーマンスレベルに疑問を投げかけた。

レース1ではチームから無情の指令が降り、チャンピオンに「ポジションを返すよう」無線が飛ぶ
「なぜヤンが背後でジョーカーに入って来なかったかは分からないが、レースは落ち着いて戦えた」と勝者サンティアゴ・ウルティア(Cyan Performance Lynk&Co/Lynk&Co 03 TCR)
「今回の判断がシーズン残りの期間で最終的に報われることを願っている」と、2位に甘んじた現役王者ヤン・エルラシェール(Cyan Racing Lynk&Co/Lynk&Co 03 TCR)

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