トヨタ・レーシングのテクニカルディレクター、パスカル・バセロンは、ル・マン24時間までにエンジンに関するレギュレーションが改訂されない限り、アウディに挑戦することはできないだろうと語った。
WEC第2戦スパでは、2013年仕様のトヨタTS030ハイブリッドを登場させたトヨタだったが、レースではトップを争いながらもハイブリッドシステムのトラブルによりストップ。3台のマシンが登場したアウディR18 e-トロン・クワトロ勢が表彰台を独占した。
バセロンが英autosport.comに語ったところによれば、スパの後チームが解析を行ったところ、現行の性能調整(バランス・オブ・パフォーマンス=BoP)ではアウディのターボディーゼルが、トヨタの自然吸気V8エンジンに対し優位にあるという。
「我々は状況に満足していない。なぜなら、我々はアウディと戦うことができないからだ。実際のところ、我々のル・マンにおけるチャンスはほぼないだろう」とバセロンは語る。
このバセロンのコメントは、トヨタがスパ戦後に出したプレスリリースの楽観的な文面とは対照的だ。バセロンは、WEC世界耐久選手権のレギュレーションを定めたACOとFIAに対し、ル・マン24時間を前にBoPの見直しが必要だと訴えた。
「我々は、BoPを進化させる必要があると考えている。そのためのプロセスは現在進行中で、これによって何が起きるかを見定めなければならない。我々はACOとFIAが正しくBoPを定めることがどれほど難しいかを過小評価していないが、我々は彼らがBoPを正そうとしていると信じている」
バセロンは、最新のアウディR18 e-トロン・クワトロが、トヨタTS030ハイブリッドに対し70〜80馬力ほどのアドバンテージを見積もっていると明かした。
一方、ACOのスポーツマネージャーを務めるバンサン・ボメニルは、「プロセスは進行中だ。我々はいつもデータを解析している。これ以上多くを語ることはできないが、すべてのクラスについて解析が行われていると思ってもらっていい」と語る。
また、これに対しアウディスポーツ代表のヴォルフガング・ウルリッヒは、スパの結果は変化が必要なほど十分なものではないと主張する。
「片や新車を投入した初めてのレースで、もう一方は2レース目なんだ。それに、片方はレースの半分しか戦っていない。どうやってBoPを見直そうというんだ? 新型のトヨタは、少なくとも我々が投入したル・マン仕様(3号車)には匹敵する戦闘力を持っていた」とウルリッヒは語る。
これらの意見に対し、バセロンはまた、ターボディーゼルエンジンに対するエアリストリクター径が3%減らされ、一方で燃料タンクがそのままとされた段階で、冬の間に大きなミスを犯したという。バセロンは続ける。
「昨年我々は、パワーを出すことに集中しており、燃費のことは置き去りにしてしまったことが間違いだったんだ。我々がふたつのうちひとつを取るならば、ディーゼル技術はこれを利用することができる。昨年、アウディは我々よりも3〜4周は多くラップできていた。でも、今年は2周短いんだ」とバセロンは、アウディが燃費の優位性をパワーに回したのではないかと推測した。
さらに、バセロンは予選と決勝を比較し、トヨタの2013年仕様が決勝でトップを争うことができたのは、アウディ勢、特にロングテール仕様を投入した3号車が、実際の実力を出していなかったのではないかと推測した。
「我々のマシンはレースではよりベターに見えたけど、それはアウディ勢のエンジンセッティングに関連があるはずだ」とバセロン。
では、アウディ勢はレースでパワーを絞って戦っていたのか?
「その通りだ。これははっきり結論が出ている」