今シーズンの前半戦のドライバー22人を、今宮純氏がコースサイド、パドックでの独自の視点で評価。2回に分けてお届けします。第2回目は、今季の前半戦の"ベストイレブン"ドライバーを選出。最高評価が☆☆☆☆☆5つ
☆
エイドリアン・スーティル
ボクサーにたとえれば“中量級"の彼にはウェイトハンデがある。ニューC33が14年マシンの中で最も“ヘビー級"なのがフェラーリPU(パワーユニット)合体で判明、今季ワースト無得点ザウバーの悩みはこの“重たさ"に尽きる。コーナリングに顕著に見られ荷重移動時に「モター〜モター」っとキレがない。まるで<メタボ・コーナリング>だ。
☆☆
ジェンソン・バトン
キャリア現役最長15年、バーレーンGPで250戦、日増しに哲学者然に見えるようになった。デビューしたころのチャラさは全く消え、今年いっこうにアップデート効果がないMP4/29に真摯な態度で努力。それをR・デニスさんはもっと理解してあげないと。レース人生最大の選択を熟考しているようなジェンソン、いっそ、日本国籍になっちゃえば……。
ジュール・ビアンキ
5月モナコ激走・9位初入賞、7月シルバーストーン・テスト2日目最速(フェラーリ)といい仕事ぶりで存在アピール。小林の“大敵"だが、しばしば細かなミスを犯す癖がまだある。
☆☆☆
ニコ・ヒュルケンベルグ
この企画スタートから評価してきた彼が、ハンガリーGPで凡ミス(本人も猛省したと聞いている)の同士討ち。今年10戦連続入賞でストップ、大事なのは後半戦だ。どのチームも記憶に残るのは春より秋の結果なので。
小林可夢偉
いつも英国AS誌の巨漢若手ライター氏は、プレスルームで間食ばかりしているがカムイ・ファンのようで誌上で高評価している。以前、優勝経験者に「カムイはもっとうまくなれると言っておいてくれ」と、間接アドバイスされたことがある。自分などが言うまでもなく今年の彼は上達、難しいクルマ、遅いクルマで本当にうまくなった。結果より内容、それを鈴鹿で見て欲しい(!)。
ニコ・ロズベルグ
純粋な意味でドライバー資質が今年レベルアップしたとは思えない。首位で折り返した前半レースを精査すると、正しい時にいつも正しいところにニコはいた。リタイアは1度きり、トラブルに苛まれることもなかった。11点リードをもらいここから「男対男の勝負」、表情に厳しさが増し、もうディカプリオには似ていないニコ。
☆☆☆☆
ダニール・クビアト
四つ星は4人、ウラル山脈で発掘された新人クビアトは末恐ろしい新人だ。開幕前テストは僅かで、ボッタスと違いFP1走行経験も皆無なのに初戦から4レース連続入賞(!)。まだ断定できないが、新人セナやシューマッハーにも劣らない大器かも。二十歳ロシア人がいいマネージメントに恵まれ、鼻高々にならなければドライビングセンスは抜群なので、今後は“ロシアF1革命"も、と言っておこう。
ルイス・ハミルトン
2度続いた最後尾同然スタートから、3位に這い上がるレースに耐えるルイスの変貌を見た。PP→独走イメージが強く、タレントスター気取りだった彼は前半に覚醒した。愛犬も彼女も表に一緒に出てこない、そんなことにうつつを抜かして場合ではないのだ。やってもらおう首位攻防戦。
バルテリ・ボッタス
「朝から全員に挨拶して回り、帰る時もマッサ担当にもそうするんです」と白幡メカから聞いた。挨拶まわりだけで20分、質実剛健バルテリはそういう真面目タイプ。低迷していた古豪ウイリアムズを変えた彼、ベルギーGP後の誕生日28日で25歳。後半始まりとなる高速レース2戦の“白いダークホース"にいち押し。
フェルナンド・アロンソ
夏休み里帰り中の浜島エンジニアが個人的な見解でこう言った。「99.999%フェルナンドはずっとうちに……」、そのモチベーションに応えねばならないのが名門だ。前半F14 Tの苦戦原因は“空力重視策"失敗と、Pタイヤ摩耗度合のシビアが重なったから。が、それはウエット条件だと2種ドライ使用義務から解放されるので「雨に期待」。フェルナンドもキミも、そこに活路を見出すか(!)。
☆☆☆☆☆
ダニエル・リカルド
世界一恐れを知らない動物“ミツアナクマ"を愛する青年が、4冠王ベッテルや最強メルセデスに堂々立ち向かっていく姿は前半戦のまさに最大主役。前期ドライバーズNO.1に挙げよう。彼の具体的な速さは最適なブレーキング(リフト&コースト関係なく)、自由なオーバーテイク判断、そしてタイヤマネージメント(データ以上)。貴重な2勝を讃えて、前半戦リカルドに“五つ☆"を授与する。