WEC世界耐久選手権に参戦しているアウディは25日、今季のLMP1クラスに投入する新たなR18 e-トロン・クワトロのカラーリングをフランスのル・マン市街地でお披露目した。同時に、マシンの詳細なスペックも発表されている。
アウディは、新たなLMP1車両規則が導入される今季に向けて、昨年までと同じ『R18 e-トロン・クワトロ』の名を冠した新たなマシンを開発。昨年12月に車両の外観やスペックの一部などを公開していた。ただ、これまで公開されていた外観では、カーボン地にロゴなどが施されるデザインとなっていた。
25日に公開された新たなカラーリングでは、昨年までとはイメージが変わり、フロント部分はホワイトが主体のデザインに。コクピットから後方にかけてはシルバー地にホワイトやブラック、レッドのラインが施されるようなデザインとなっている。
「各カラーはシンボルなんだ」と説明するのは、アウディのモータースポーツや特別プロジェクトのデザインマネージャーを務めるディルク・ファン・ブラッケル。彼によると、シルバーは「過去のレースでの成功」、ホワイトは「ハイブリッド」、ブラックは「軽量なデザイン」、そしてレッドは「アウディのパフォーマンス」を表現しているのだという。
また、今回はカラーリングと同時に、マシンの詳細なスペックも明かされた。まず、以前の発表で「効率の観点からさらに開発を進めた」とされていたV6ターボディーゼルエンジンは、昨年までの3.7リッターから4リッターに排気量が増加している。
エネルギー回生システムに関しては、すでに報道されていたように、12月の発表時に採用するとしていた熱エネルギー回生システム(ERS-H)は非搭載に。ブレーキング時にフロントアクスルのMGUで運動エネルギーの回生を行い、フライホイールに貯蔵する昨年までと同様のハイブリッドシステムのみが搭載されることになった。ただ、この運動エネルギー回生システム(ERS-K)にも最適化が施されているとアウディは以前の発表で明らかにしている。
また、ハイブリッドシステムによる1周あたりの放出エネルギーは、4段階(2MJ/4MJ/6MJ/8MJ)のうちの最小となる2MJが選択された。
アウディスポーツを率いるヴォルフガング・ウルリッヒは、ERS-Hを非搭載としたことについて次のように語っている。
「我々はそのシステム(ERS-H)から予想していたものを引き出すことができなかった。それに、多くのリスクがあり利益の少ないことは、ル・マン24時間に向けては良い選択ではないからね」
またウルリッヒによると、マシンの重量配分を最適化するため、今季870kgまで引き下げられた最低重量(昨年は925kg)を下回るような軽量化が求められているという点もこの決定を下した要因のひとつとなっているという。
一方、1周あたりのエネルギー量を最小の2MJとしたのは、それがターボディーゼルエンジンにとって最適との計算によるものなのだという。
「我々の計算によると、ディーゼルエンジンと2MJのシステムの組み合わせは、それより大きいエネルギー量を選択し、(システムの重量増により)望まない場所にウエイトを積む問題を抱えるより良い選択なんだ」
なおカラーリングが発表された25日には、1号車アウディR18 e-トロン・クワトロをドライブするトム・クリステンセンが新たなマシンでル・マン市街地からブガッティ・サーキットまでを駆け抜けるパフォーマンスも披露されている。