WEC世界耐久選手権第6戦富士は悪天候により赤旗終了という結果となったが、地元での連覇を期し2台体制で参戦したトヨタ・レーシングは、アレックス・ブルツ/ニコラス・ラピエール/中嶋一貴組7号車トヨタTS030ハイブリッドが優勝。連覇という目標を達成した。
前日の予選で2〜3番手を得ていたトヨタだが、フロントロウ2番手だったアンソニー・デビッドソン/セバスチャン・ブエミ/ステファン・サラザン組8号車が、スターティンググリッドへの試走中に、ピットレーンクローズにわずか5秒間に合わず、最後尾スタートを強いられてしまう。
しかし、中嶋一貴がステアリングを握った7号車は、セーフティカーラン先導の下、1号車アウディの不運なトラブルにも助けられ首位に浮上。3度の赤旗という展開の中で、トップでレースを終えることになった。
「いちばん心が痛いのは、レースを見に富士スピードウェイに来てくれたファンの皆さんのことを考える時です。今日の勝利を本当に勝利と呼べるのかどうか疑わしいですが、1位という結果はチームにとって重要な意味を持つと思います」とレース後一貴は語った。
「ただ、天候を考えるとレース中断の決定は正しいと思います。雨足は想像を絶するもので、特に2度目の赤旗直前の降雨は酷かった。セーフティカーの後ろを走っていても、ドライブは困難でした。その状況でWECのように、スピード差の大きなレースカーが混走するレースを行うのは危険過ぎました」と一貴。
一方、8号車はセーフティカーランに合流する時点で1周のビハインドを背負ってしまうことに。デイビッドソンは「レースを見に来たファンにとっては残念な結果だろう。でも、こうしたレースでも仲間が表彰台の中央に立つのを見るのは気持ちが良いね。我々にとっては、スターティンググリッドに付けなかったのが痛恨だった」と振り返った。
今回のレースで7号車がアウディの連勝を止める形にはなったものの、2位に2号車が入ったため、アウディは今季のマニュファクチャラータイトルを決めた。これについて木下美明チーム代表は「彼らにはおめでとうと言いたい。彼らは非常に高度なレースを展開してきた」とライバルを祝福した。
すでにタイトルは決してしまったが、トヨタ・レーシングはこの富士のレース後、次戦上海にも2台体制を維持して参戦することを明らかにした。ただし、次戦上海はスーパーフォーミュラ最終戦鈴鹿と日程が重なっているため、一貴は欠場。7号車はブルツとラピエールのふたりで挑むことになるという。