ロータスF1チームで昨年、ロマン・グロージャンを担当していたレースエンジニアの小松礼雄氏。今シーズンはチーフエンジニアに昇格してグロージャン、そしてパストール・マルドナドの2台のマシンでF1を戦います。
今季の躍進著しいロータスF1チーム。上位3つのワークスチームに次いで、4~5番手を争うパフォーマンスを見せていますが、前戦のハンガリーGPでは2台で4度のペナルティというまさかの展開に……。金曜日走行前には金銭問題でピレリからタイヤが支給されずという難局が訪れましたが、小松エンジニアはどう対処していったのでしょうか。
F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラム、第11回目の一部をお楽しみください。
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セッションまで1時間を切ってタイヤがない!
ペナルティを受けたときのチーム内の動き
ハンガリーGPは最初から最後まで大変な週末でした。まずは金曜日ですが、ピレリへの支払いの問題でFP1開始50分前までタイヤを受け取ることができませんでした。こんな事態は経験したことがありませんが、情けない話ですね。セッション1時間前にミーティングをしますが、その時でさえタイヤが来るのかどうか、まったくわからない状況でした。タイヤをリムに取り付け始めてから、タイヤウォーマーに入れるまでも時間がかかるので、実際にタイヤを温め始められたのはセッション開始10分前!
通常ですと最低2時間半はウォーマーで温めますが、この時はまったく時間が足りないので設定温度を上げて急速に熱を入れました。こういうことは、タイヤにも良くないし、また有意義な走行はできません。今の規則ではFP1開始から30分以内に1セット目のタイヤは使わなければいけません。でもウォーマーに入れてから40分では全然時間が足りないので、結果的に1セット目のタイヤではインストール(インスタレーションラップ/計測ラップではなく、システムチェックのためのアウト・イン)をするに留まりました。2セット目のタイヤも、なるべくウォーマーに入っている時間を稼ぎたかったので最後まで待って、セッション終了直前に1ランだけやりました。もちろん、予定していた空力のプログラムは何もこなせません。ジョリオン(パーマー)なんか、赤旗で計測ラップもできなかった。ホント、うちのオーナーはいろんなチャレンジを僕らに与えてくれます。。。
というわけでFP2が本当の意味での初セッションになりました。このセッションも赤旗がありましたが、とにかくロングラン優先で進めました。FP3に向けては路面温度の違いなどを考慮に入れながら修正をして、少しずつクルマは良くなって行きました。しかし、この状況では厳しい予選になるだろうなとは思っていました。この段階でQ3に残る可能性はあまりないと思っていたし、Q3に行けたとしても9位が限界だろうと予測していました。なので、予選はレースにむけてオプションタイヤをセーブするプログラムで行くことに決めました。
Q1は2台とも無事にクリア、特にパストールのタイムは良かったですね。しかしそのパストールはQ2でミスをして14位、Q3に進めませんでした。1コーナーでロックアップしてコンマ4秒ロスしたところでQ3進出のチャンスはなくなりました。それ自体もいけませんが、さらにいけないのはその後さらにタイムロスし続けたところです。もちろん、タイヤの状況は厳しくなったわけだけど、彼はQ1では1分23.89秒を出していたわけです。それからコンマ4秒足しても1分24.3秒で最悪回ってこれたはずです。
そうすれば(セルジオ)ペレスの前の13位です。それを1分24.6秒で帰ってきたので、僕はそれについては怒りました。無駄に、抜きにくいフォース・インディアの後ろになったわけですから当然です。良いドライバーというのは例えミスをしても大崩れしません。逆にロマン(グロージャン)の方はほぼ想定どおりのタイムでQ2をクリアして、良くやってくれました(最終的に予選10位)。最後のQ3のアタックでは少し失敗しましたけど。失敗しなかったとしても、ベストで(マックス)フェルスタッペン抜けて9位になれたくらいなので、結局、ほぼ予想どおりでした。ホントは予選10位になるくらいだったら11位から新タイヤでスタートした方が良いんですが、それはしょうがないですね。
レースのパストールはプライムのミディアムタイヤスタートでリバースストラテジーを選びましたが、その他は誰もリバースストラテジーを採りませんでしたね(苦笑)。ウチはやはりあの予選順位で行くと、オプションの方がもちろんいいタイヤというのは分かりきっていたのですが、最大のリスクは、前にフォース・インディアの(セルジオ)ペレスがいたことです。
フォース・インディアはトップスピードがあるので抜きにくい。あの人たちが仮にリバースストラテジーで来て、ウチがリバースでなかった場合は、完璧にウチのレースは終わってしまうわけですよ。そういうリスクのマネージメントでいったら、リバースの方が良いわけです。もちろん、予選で失敗しているので、本来のポジションよりも後ろにいるというのも大きなファクターです。
まあでも、今回のレースはウチの2台はスタートが恐ろしく悪かったですね。それは今、ウチの社内で調査していますけど、あそこまで悪いと悲惨です。そのお陰で序盤、マクラーレンに詰まってしまったので。スタートが悪くなければ、マクラーレン、トロロッソにも詰まっていることもなかったと思いますから、緊急に原因を突き止めて、処置をしないといけないです。
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予想外のレース展開で明暗分かれたロータスの2台
3度のペナルティを受けたマルドナドに小松エンジニアは……
クルマ側でのピットレーン速度の制御……etc.