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ル・マン/WECニュース

投稿日: 2010.10.15 00:00
更新日: 2018.02.15 22:55

世界最強のGTカー、ポルシェ911 GT3 RSRの足跡


世界最強のGTカー、911 GT3 RSR

ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト 社長:マティアス・ミューラー)のポルシェ911 GT3 RSRが再び世界最強のGTレースカーとなりました。GT2カテゴリーのレギュレーションに準拠し、ポルシェ インテリジェントパフォーマンスの理念に基づき開発された最速のコンペティション仕様の911は、世界中のサーキットで優れたラップタイムと高い信頼性、そしてきわめて低い燃費を記録して2010年も着実にその足跡を残しました。最高出力450 PSを発生する4リッター水平対向6気筒エンジンを搭載した911 GT3 RSRは、2010年ル・マン24時間レースのGT2カテゴリーで優勝したほか、ル・マン・シリーズおよびアメリカン・ル・マン・シリーズでチャンピオンシップタイトルを獲得、ドバイおよびスパ・フランコルシャの24時間レースでも総合優勝を飾りました。これらはフェラーリ、BMWおよびアストンマーチンという強豪を抑えての勝利です。

公道仕様の911 GT3 RSをベースに開発されたポルシェ911 GT3 RSRは、レースでの勝利以外でも感動をもたらしています。アメリカン・ル・マン・シリーズでは、ラップタイムと燃費の比率で求められる総合効率でも最高のGTカーであることが証明されました。これにより、環境クラス「ミシュラングリーンXチャレンジ」でも2年連続となる総合優勝を果たしたのです。また、ル・マン24時間レースの「ミシュラングリーンXチャレンジ」でも優勝しています。「レーシングカーの効率に重点を置くのは正しいメッセージを発信することになると思います」と、ポルシェのモータースポーツ部門のトップであるハルトムート・クリステンは話しています。「私達も非常に力を入れているグリーンXチャレンジで勝利したことで、ポルシェ911はただ速いだけでなく、高い効率性をもつことも証明されました」。

現行のポルシェ911 GT3 RSR(タイプ997)は2007年から世界中のカスタマーに供給されています。この911のトップレーシングモデルには年々改良が加えられてきました。2009年モデルではリアに搭載された水平対向6気筒エンジンの排気量が3.8リッターから4.0リッターに拡大され、より低回転域から最適なトルク特性を発揮するとともに、ドライバビリティも向上しています。デビューから4年目を迎えた現在でも、最強のGTカーであり続ける911 GT3 RSRの最大の特長は、デザインの見直しが行われ大型化されたエアインテークを備えたフロントセクションです。最初に目を引くのは、フロントフードに設けられたルーバーと呼ばれるエアアウトレットで、ラジエーターのエアダクトが大幅に見直されたことを示します。これはオプションのエアコンを取り付けるために外気の取り入れおよび排出を見直す必要があったためです。リア下回りのエアロダイナミクスもさらに最適化が図られたほか、リアウイングの調整範囲も大きくなっています。2008年モデルと比較して、ブレーキシステムが車両重量に対して最適化されたこと、およびワイヤハーネスが軽量化されたことにより、さらにドライビングダイナミクスが高まっています。

911 GT3 RSRのギアボックスには、大きな成功を収めたスポーツプロトタイプであるRSスパイダーからのノウハウがフィードバックされています。ポルシェのエンジニアが開発した6速シーケンシャルギアボックスは先代に搭載されたユニットより大幅に軽量で、内部フリクションも極小になっています。また、ドライブシャフトに対してよりフラットになっているため、サスペンションのセッティングにも自由度が増しています。

今日の成功への道筋は、レース仕様のポルシェ911(タイプ996)ですでに付けられていました。ル・マン24時間のGTクラス参戦用に製造された911 GT3 Rは1999年のアメリカン・ル・マン・シリーズのGTクラスで事実上すべての勝利を独占しました。2001年には改良された911 GT3 RSバージョンがレースに参戦、この車両は参戦したクラスでの成功を収めただけでなく、2003年にはデイトナ24時間レースでポルシェのワークスドライバー、イェルク・ベルクマイスターとティモ・ベルンハルトのドイツ人ドライバーペアとチームオーナーのケビン・バックラーがパワーで大きく勝るプロトタイプを抑えて栄誉ある総合優勝も果たしています。また同年、ポルシェのワークスドライバーであるマルク・リーブ(ドイツ)がロマン・デュマ(フランス)とステファン・オルテリ(モナコ)とともにスパ24時間レースで、大きなパワー差のあるGT1クラスの全車を抑えて優勝しています。

2004年シーズンには、後継モデルの911 GT3 RSR(996)がデビューしました。3.6リッター水平対向6気筒エンジンの最高出力は455 PS(335 kW)/8,500 rpm、最大トルクは410 Nm/7,200 rpmにそれぞれ高められました。このモデルは、アメリカン・ル・マン・シリーズ(GTクラス)、ル・マン耐久シリーズ(GT)、FIA GT選手権(N-GT)、ル・マン24時間およびスパ24時間のクラス優勝、プチ・ル・マンと、デビューシーズンを数々の勝利で飾りました。

「毎年911 GT3 RSRが積み重ねてきた功績には感動すら覚えます。ラップタイムだけを見ても驚かざるを得ません。レギュレーションで私達に次々と制約が課せられているにもかかわらず、このモデルは毎年速さを増しているのですから」とポルシェのワークスドライバーであり、自らのキャリアの勝利のほとんどをRSRで挙げているイェルク・ベルクマイスターが話しています。アメリカン・ル・マン・シリーズ5冠のベルクマイスターは、2011年シーズンも不安なく戦えるとコメントしています。「シーズンが終わると、いつも自分達は限界に達した、車両も行くところまで行ったと感じます。でも、ポルシェは必ず何か新しいものをぶつけてきます。そして、2011年も同じことが起こると期待しています」。

ポルシェ911 GT3 RSR(タイプ997) – 主な戦績

2010年
アメリカン・ル・マン・シリーズ(GTクラス)優勝
ル・マン・シリーズ(GT2クラス)優勝
ル・マン24時間(GT2クラス)1位
ドバイ24時間レース(総合)1位
スパ24時間レース(総合)1位

2009年
アメリカン・ル・マン・シリーズ(GT2クラス)優勝
ル・マン・シリーズ(GT2クラス)優勝
FIA GT選手権(GT2クラス)優勝
ニュルブルクリンク24時間レース(総合)1位

2008年
アメリカン・ル・マン・シリーズ(GT2クラス)優勝
セブリング12時間レース(GT2)1位
ニュルブルクリンク24時間レース(総合)1位
ドバイ24時間レース(総合)1位

2007年
インターナショナルGTオープンチャンピオンシップ優勝
ル・マン24時間(GT2クラス)1位
ニュルブルクリンク24時間レース(総合)1位
スパ24時間レース(GT2クラス)1位
プチ・ル・マン(GT2クラス)1位
サンパウロ1000マイルレース(GT2クラス)1位

ポルシェ911 GT3 RSR – 技術仕様(2010年シーズン)

エンジン:水冷式水平対向6気筒エンジン、4バルブ3,996 cc、ストローク 80.4 mm、ボア 102.7 mm、331 kW (450 PS) / 7,800 rpm、最大トルク430 Nm / 7,250 rpm、最高回転数9,400 rpm、ドライサンプ、独立スロットルバタフライ、フューエル・インジェクション、エアリストリクター2 x 28.6 mm。

トランスミッション:シーケンシャル6速トランスミッション(ドグクラッチ)、水冷式オイルクーラー、シングルマスフライホイール、油圧式シフター、トリプルカーボンファイバークラッチプレート、後輪駆動、リミテッド・スリップ・ディファレンシャル(45/65%)。

ボディ:亜鉛コートされたスチール製モノコックボディ(911 GT3 RSベース)、空力特性を最適化したフロントセクションとフロントスポイラー、空力特性を最適化したフロントアンダーフロア、可変リアウイング、90リッターの安全燃料タンク(急速給油機能付き)、エアジャッキ、ロールケージを溶接、難燃性のシートカバー材を使ったフルバケットレーシングシート(ドライバーシートのみ)、ハンスヘッド/ネックサポート対応の6点シートベルト、電気式消火システム。

サスペンション:
フロント:マクファーソンストラット式サスペンション、ザックス製ガス封入式4段調整式ダンパー、ダブルコイルスプリング(メインスプリングおよびヘルパースプリング)、キャンバー調整式フロントアクスルアーム、調整式スタビライザー(両側)、パワーステアリング。
リア:固定マウント式サブフレーム付きマルチアームアクスル、ザックス製ガス封入式4段調整式ダンパー、ダブルコイルスプリング(メインスプリングおよびヘルパースプリング)、無段階調整式強化リアアクスルタイバー、調整式スタビライザー(両側)、無段階調整式サスペンション(高さ、キャンバー、トレッド)

ブレーキ:バランスバー付きブレーキシステム。フロント:モノブロック構造6ピストン固定式キャリパー、ベンチレーテッドディスク(Φ380 mm)、競技用ブレーキパッド
リア:モノブロック構造4ピストン固定式キャリパー、ベンチレーテッドディスク(Φ355 mm)、競技用ブレーキパッド

ホイール:
フロント:3ピース構造BBSアルミホイール(11J x 18 -34)、センター ロックシステム
リア:3ピース構造BBSアルミホイール(13J x 18 -12.5)、センター ロックシステム

エレクトリカルシステム:モーテック製ディスプレイ(データロガー付き)、マルチファンクションディスプレイ(ギアシフトインジケーター付き)、アジャスタブルトラクションコントロール、バッテリー:12V 50Ah。オルタネータ140 Ah

車両重量:約1,220 kg(A.C.O.レギュレーション適合)/1,245 kg(FIAレギュレーション適合)


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