F1ジャーナリストたちの間で、ささやかれる裏話──そこには記事にできない極秘情報から、実に些細な小ネタまで、興味深い内容がつまっている。『F1速報』サイトの人気連載、トム・ハンター氏(仮名)「パドック裏話」の番外編として始まった当企画。おかげさまで、2015年の夏もハンター氏の同僚であるジャーナリスト3名による「禁断の座談会」を開催することができた。相変わらずハンター氏は欠席で、もはや「お約束」となりつつある。出席者の身元を明かすことはできないため、最小限のプロフィールで勘弁してほしい。
A氏:美食と美女には一家言ありの情報通ジェットセッター
B氏:どんなことも裏を読んでしまう、悪気のない毒舌家
C氏:ぱっと見ラテン系、パドック滞在時間No.1を誇るネタの宝庫
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──いよいよ第2回は核心へ……ということで、ドライバーについて聞いていきたいんですが、やっぱりレースに関係ない話を中心に、お願いします。
A氏:だから、なんの取材なんだって。
C氏:それなら私は本当は興味がないんだが、ドライバーのパートナーについて話をしようか。キミ・ライコネンとの間に男の子が誕生したミントゥさん、一般の方かと思っていたら、フィンランドでは知らない人がいないくらいの有名人らしいよ。
A氏:このあいだも赤ちゃんと一緒のバカンス写真が流出(?)していたよね。
C氏:彼女は元キャビン・アテンダントで機内サービスもしていて、ライコネンと出会ったのも飛行機の中が最初とか。
A氏:えっ、そこで携帯電話の番号を渡したり?
C氏:偶然、共通の知り合いもいて、最初は友達と一緒に会うことになって。
B氏:やたら、くわしいな。ライコネンが飛行機の酒を飲みつくしちゃったとか?
C氏:残念ながら、それは不明なんだが……ミントゥさんはキャビン・アテンダントのトレーニング講師もやっていて、エクササイズの動画を公開したりしていたらしい。
──いわゆる「YouTuber」ですか!? そういえば以前、調べたときに肩書きが「ブロガー」となっていたんですよ。
A氏:「美人すぎるトレーナー」みたいな。
C氏:フィンランドでは「カリスマ・ブロガー」のようだね。パドックでも、常にライコネンの一歩前を歩いている。彼女のほうが「オレについてこい」みたいな貫禄で。
A氏:堂々としているというか、表情が1ミリも変わらない。
C氏:フェルナンド・アロンソの新しい彼女(ララ・アルバレスさん)もテレビ関係の仕事をしている人だから、カメラに囲まれても場馴れしている。もともとは二輪の仕事が多いと聞いたよ。
B氏:そういえばジェンソン・バトンの昏睡強盗被害もあったね。
──日本のニュースでは「道端ジェシカさんと、その夫でレーシングドライバーのジェンソン・バトンが」と報道されていました。
B氏:主語が違うんだ。催眠ガスを使った強盗ってヨーロッパではよくあるんだよ。特に列車強盗、パリ発ミラノ行きは要注意。
──気をつけます。でも、どうしたら防げるのか……えーと、話を元に戻しましょう。
C氏:そうそう、ライコネンは「ツン」としたタイプに弱いんじゃないかという仮説を立ててみたんだ。インタビューのときでも、こちらが下手に出ると「I don't know」と、つれなく返してくる。でも、ちょっと上から質問すると、ベラベラしゃべるんだよ。
A氏:「そうじゃなくて」と自分から説明してくるんだよね。
C氏:このライコネン攻略法を使えば、なんと2分半くらい話してくれる。
──それは(ライコネンにしては)長いですね!
C氏:ただ上から質問するには、こちらも準備が必要。たとえば予選なら公式データに出ないセクタータイムをチェックして、モニターに映らないアタックも把握していないとダメ。ちゃんと見ていた上で質問すると、ちゃんと答えてくれる。これはライコネンに限らず、アロンソとか、すごいドライバーはみんな同じだね。こいつは、ちゃんと見ていないなと思うと「I don't know」という答えになる。
──ちゃんと質問を準備していかないと。
C氏:今年はモナコGPの予選後に、ちょっとした事件があったんだ。ライコネンの共同インタビューで、よく質問するジャーナリストがいるんだが、彼が状況を勘違いして質問したら、ライコネンが噛みついてきた。「そんなことはない、オマエは間違っている!」と怒ったから、シーンとしてしまって。
A氏:昨年はドイツのジャーナリストがツイッターで書いたことに対して、怒ったことがあった。「あれ見たぞ!」って。
C氏:意外と細かいところまで見てるんだよね。今年はイタリアのガゼッタにも文句をつけたし。
B氏:もしかして彼女がチェックしてるんじゃないの(笑)? だって以前は、そんなことなかったでしょ。
C氏:言われてみれば、この1〜2年だ!
A氏:まあ口数が多くなったのは良いことだし、最近はパドックで立ち止まってファンにサインしたり、ライコネン自身が変わってきてるんだと思う。
B氏:早く帰るのは変わらないけどね(笑)。
──今季はルーキー当たり年と言われていますが。
B氏:ケンカしていたら面白いんだけど、トロロッソの若者ふたりは本当に仲良さそう。
A氏:みんな、いい子なんだよ。そうじゃないとレッドブル・グループでやっていけない。
C氏:私の個人的な意見だけど、マックス・フェルスタッペンとカルロス・サインツJr.のお父さん同士は、かなりお互いを意識しているはず。大人だからケンカはしないけど、微妙な距離感がある。
A氏:絶対ふたりで同じ場所にいないよね。
C氏:特にサインツ父が、すごく意識しているのは確かだよ。「カルロス(息子)はフェルスタッペンと比べて、どうか?」って直接、聞かれたからね。私が「いまのところ五分五分じゃないの」と答えたら「はあ!? 予選で何勝何敗だと思ってるんだ?」と。前半戦の予選対決はサインツJr.の6勝4敗なんだよ。「そこんとこ、冷静に判断してくれ」とサインツ父は言うわけ。すごい親バカなんだけどさ。
──フェルスタッペン父は、よく険しい顔でピットに立っていますよね。
B氏:それは人相が悪いだけで、サインツにカマしてるわけじゃないのでは。
C氏:ヨス・フェルスタッペンはエンジニアリングルームから帰ってきた息子を捕まえつつ、レースエンジニアにも話しかけたりしている。それを見たカルロス父が、うちも負けてられないとヒートアップ(笑)。
──息子よりもお父さんが前に出て、よくわからない戦いになってますね。
C氏:まじめな話、お父さん自身が政治の大切さを、よく知っているからね。カルロス父は、それもあって自分はラリーで王者になれたと考えているし、ヨスは「自分のレース人生は、いるべきときに、いるべき場所にいなかった」と悔やんでいる。
──ルーキーではフェリペ・ナッセは、どうですか。
C氏:いまのザウバーじゃ評価できないよ。クルマが遅すぎる。
B氏:マーカス・エリクソンよりは上かな。
A氏:さっきの予選対決で言うと、前半戦はナッセの6勝4敗。ザウバーはベルギーからフェラーリの新しいパワーユニットが入って、それだけで20馬力アップすると聞いたよ。空力もベルギーとシンガポールで変えてくるって。
C氏:ザウバーは早々に現行ラインアップ継続を発表して、確実に「カネ」を確保した。だから私は、もう来季にシフトすると思っているけど。
──後半戦を目前にして、そろそろ2016年の話も気になりますよね。次回は大胆すぎる(?)ストーブリーグ予想と日本のファンにとって一大関心事マクラーレン・ホンダの話に突入したいと思います。
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今回も、ほとんどレースに関係ない話で大いに盛り上がった覆面座談会。第3回はキミ・ライコネンのフェラーリ残留決定を受けてのストーブリーグ情報から、どこまで書けるかギリギリのホンダ批評まで。明日にはベルギーGPの走行が始まるわけだが、それはそれとして座談会は続くので、お読みいただければ幸いだ。