10月20日に決勝レースが行われたWEC世界耐久選手権第6戦富士。サーキットでご覧になった方も多いと思うが、WECではレースウイークエンドに『ホットラップス』という同乗走行枠が設けられている。このひとつに、オートスポーツweb編集部ヒラノが同乗した。
この『ホットラップス』は主にVIPやゲスト向けに、WEC参戦メーカーが用意した市販スーパースポーツを参戦ドライバーが運転、サーキットをかなりのスピードで周回し、ゲストにサーキットの迫力、ドライバーのテクニックを体験してもらおう……というものだ。
実は前戦オースティンから、この『ホットラップス』のひとつの枠が『メディア・ホットラップス』に変更されたのは聞いていた。同乗走行の対象をメディア向けに変更したという訳だ。ただ、金曜日の夕方に仕事をしていた際に、おもむろに富士スピードウェイ広報T氏が来て「じゃあ〜……ヒラノさんはポルシェね」と言われた時には、なんのことかサッパリ。「?」と思っていたが、この『メディア・ホットラップス』と聞いてナットクした。
個人的にはこういう同乗走行は一般の人が体験してこそ……と思っているのだが、今回の場合は対象がメディアのみなので仕方がない。せっかくのご厚意を他の媒体に譲る訳にもいかず了承し、翌土曜日に、他のメディア仲間とともにコントロールセンター脇に向かった。
●蒼々たるスーパースポーツが大集合
土曜のピットウォーク後、コントロールセンター脇に行ってみると、すでに『ホットラップス』で使用する車両が集結していた。車両は6台で、ドライバーはこんな感じだ。
・アウディR8/エマヌエーレ・ピッロ
・ポルシェ911カレラ/リヒャルド・リエツ
・アストンマーチン・バンキッシュ/スチュワート・ホール
・アストンマーチン・ラピードS/ダレン・ターナー
・トヨタ86ワンメイク仕様/脇阪寿一
・トヨタ86ワンメイク仕様/伊藤大輔
どれを取っても、明らかに速いのは間違いない。しかもドライバーの面子もハンパない。個人的には「いつかポルシェに乗る」のが夢みたいなものでもあったので、ポルシェワークスドライバーの助手席か……と楽しみにしていたが、実際に当日になってみると、アストンマーチン(のどちらか)に変更になっていた。とは言え、アストンマーチンだって一生に乗る機会が何回あるかと言ったら……。ありがたく乗車させていただくことにした。
ドライバーたちは、クルマの横でミーティングを済ませ、おもむろに乗車。最初のゲストたちが助手席に乗っていく。同乗はストレートは通過せず、ピットレーンで乗り換えるスタイル。次々と同乗者が乗り代わっていく中、当初バンキッシュの予定だった自分は、いつの間にかクルマだけが変更になり、ラピードSになっていた。
「4ドアか……」と思ったのは正直に告白しておこう。ただ、その後ラピードSの実力をまざまざと痛感させられるのだが。
●文化の違い? ヘルメットはナシ
さて、あっという間に自分の時間がやってきた。運転席で笑顔で迎えてくれたのは、スチュワート・ホール選手。今回のWEC第6戦富士では、GTEアマクラスの96号車バンテージで参戦していたドライバーだ。日本での知名度はそこまで高くないが、イギリスF3を経てスポーツカーに転向。09年にはワークスLMP1のローラ・アストンマーチンをドライブした実績もある。しかもけっこうイケメンだ。
ちなみに、最初の同乗者が乗り込む時点で気になったのだが、アウディ、ポルシェ、アストンマーチンはドライバーも同乗者もみんなヘルメットを被っていない。そんなに飛ばさないからなのか、文化の違いなのか……。ちなみに、トヨタ86の2台は、しっかりとヘルメットを装着して走行していた。
ホール選手と握手を交わした後、おもむろに発進。周囲に目をやると、情熱的なレッドのレザーが施された内装はまさに高級車。シートもレザーだが、しっとりとホールドしてくれる感じがたまらない。走行車の間隔をキープするため、ピットロード出口の赤信号で止められる。そこまでにホール選手と少し会話。正直、この時点で4ドアだしノーヘルだし、そんな飛ばさないだろう……と思っていた。
赤信号が消えると、予想に反してホール選手は一気にアクセルを踏み込んだ。エンジンがうなりを上げ、あっという間に1コーナーが近づいて来た。後で調べてみたら、このクルマ6リッターV12エンジンを積んでいて、550馬力もある。いや、ちょっと強烈すぎるんですけど……(泣)。
1コーナーでは、思いきり縁石に乗せていく。ただ、足回りが縁石の凹凸を見事にいなしていて、同乗している側からしたら「ちょっと楽しい」程度。ここで、ホール選手が何事か説明していることに気がついた。
「1コーナーを抜けたらフラットアウトだ。コカコーラでは一気に減速して、またフラットアウト。100Rは我慢して我慢して……」という調子で、コーナーごとにドライビングを教授してくれる。ヘルメットなしではちょっと不安になるGがかかっているが、ラピードSはどっしりと安定していて破綻がない。
あっという間に1周の走行は終わり、ピットへ戻る。ホール選手に「楽しかったよ!」と伝え、『ホットラップス』体験は終わった。う〜む。まさにホット。
●この企画はヨーロッパ的思考のプロモーション!?
驚きの体験となった『メディア・ホットラップス』。ではなぜ、スーパーGTでも行われている『サーキット・エクスペリエンス』のように、一般のファンを対象にしないのか。それは、こうして体験したメディアがそのクルマの素晴らしさを語るからではないだろうか。
たしかに一般のファンが乗って、その素晴らしさをブログやTwitterで語っても“プロモーション効果”はあるのは間違いない。ただ、メディアがこうして書けば、その効果はより大きい。ヨーロッパ的な、プロモーションを第一義にとらえた考え方だろう。WECに参戦しているメーカーがこうして車両を出し、ワークスドライバーにその役目を担わせるのもうなずける。
そういう意味では、本来ならばもっといろいろなクルマに乗った経験があり、市販車についても蘊蓄のあるライター氏が乗った方が、この企画の観点からすれば良かったのかもしれないかも……?
