FIA GT1世界選手権でランボルギーニ・ムルシェラゴLP670 R-SVを駆り、オールインクルシブ・ミュニッヒモータースポーツから参戦するドミニク・シュワガー。今季最多のポールポジション獲得ドライバーながらもなかなか優勝には手が届かなかったが、ついにスペインのナヴァーラ戦で念願の優勝を果たした。そんなシュワガーに、快晴の心地よい、初夏の陽気に包まれたミュンヘンのビアガーデンで、ビールとソーセージを片手に、初優勝について語ってもらった。

──あらためて、優勝おめでとうございます。今回のナヴァーラでは、ドミニク/ニッキー・パストレッリ組が予選レースで2位、決勝レースが優勝。そして、同じチームのマーク・バッセング/マルクス・ビンケルホック組が予選レースで優勝、決勝レースで2位と、チームにとっても大快挙でしたね。
ドミニク・シュワガー(以下D):別にすごくはないよ。たまたまチームメイトがライバルになっただけだしね(笑)。やっと念願の世界選手権で優勝するという目標が叶って、とても嬉しいよ。日本からもたくさんのお祝いメールや電話をもらったんだよ。でも、1勝しただけであって、決してこれだけに満足していない。

──今季最多ポールポジションを獲得しながらも、ピットストップミスやテクニカルな問題で何度も苦い思いをしていたドミニクですが、今回のレースはノーミスでしたか?
D:予選レースではファステストラップを出せて、そこそこの手応えを感じた。しかし、前戦のシルバーストンの決勝レースではレース終了数分前でエンジンが燃えてしまい、それによりエンジン交換をして、そのペナルティでナヴァーラ戦の決勝グリッドが5ポジション降格になってしまった。せっかくフロントロウでスタートできるはずだったのに……。ピットストップは完璧だったね。他にもブレーキやギアボックスなど、問題はいくつもあったけど、それをどう乗り越えるかも今回の大きな課題だった。

──しかし、それらをまったく感じさせない気迫の決勝スタートでしたね。7番グリッドからのスタートにも関わらず、3番手争いの中、いいポジションでニッキーに引き継げたのでは?
D:まずFIA GT1の激しいスタートは、1コーナーがいちばん危険。そこで巻き込まれるかどうかでも勝負がついてしまう。今回の7番手スタートは、巻き込まれる可能性が一番高いポジションだったから細心の注意を払いつつも、どうしても前に出たかった。ニッサンGT-Rはやっぱり速いね。23号車はスタートで接触してポジションを落としていたけれど、僕はピットインするまでピーター・ダンブレックのドライブする22号車のGT-Rに、前をがっちりブロックされていた。かなり追いつめたけれど、ピーターはしぶとかったよ。でも、僕らのクルーの完璧なピット作業のお陰で、前を走っていた2台のGT-Rよりも先にピットアウトできたのが大きな功績だと思う。これでまた後半戦のトップ争いは同じチームのランボ同士になったからね。

──「ナヴァーラはランボのためのサーキット」と他のチーム関係者らが口を揃えていましたが、それはどうして?
D:特に理由はないよ。ナヴァーラは直線が多いコースのレイアウトだから、“直線番長”のムルシェラゴがパフォーマンスを発揮し切れたと思う。特に今回だけ何かを大きく変えたことはないよ。基本的なセットアップも去年のデータに基づいたものだしね。同日開催されていたGT3のレース1でも、ランボルギーニ(ガイヤルド)はぶっちぎりに速かったからね。

──次のポールリカールはヨーロッパ最終戦ですが、展開をどう予想しますか?
D:スペインは相当な暑さだったけど、ポールリカールはそれ以上に暑いはず。気温が高すぎるとタイヤの消耗がかなり激しいから、それが一番の課題だね。レース中にドライバーひとりがドライブするたった25分ちょっとでグリップがまったく効かなくなるほど消耗するからね。次のフランスでは、僕らのチームの2台はフルでバラストを積まされるから、かなり厳しくなると思うけど、もちろん表彰台は狙うよ。

──同じチーム同士でトップ争いをするにあたって、チームオーダーは出されたりしますか?
D:ないない(笑)。僕らのチームのドライバー4人は普段からとても仲が良いんだ。だけどチームメイトとはいえ、レースではそれは関係なく、真剣にガチで勝負をする。これだけは言えることだね。僕は妥協が大嫌いだから。ただ、ピットインのタイミングの指示の差で、どちらかが前に出たりはするね。FIA GT1の1時間のスプリントレースでこのタイミングを間違えると取り返しのつかない差が出てしまうから、どのマシンが先にピットインするかどうか、全体を把握して的確に指示を出して貰うことが重要だね。

──スタート前のグリッドではかなりニヤニヤしてましたが(笑)、やっぱりスペインのグリッドガールは可愛かった?
D:他のサーキットよりずいぶんレベルが高かったね! サーキットによって、女の子のレベルが随分違うんだ。スペインは今までで今季の最高レベル!

──日本のファンに向けてひとことメッセージを!
D:たくさんのお祝いのメッセージをありがとう! 今季はFIA GT1やニュルのレースで主に活動しているけれど、スーパーGTは今も僕にはとっても魅力的なレースで、シートさえあればすぐにでもかけつけたいね。

 そして、人懐っこいその笑顔の後には、「日本では津波や地震、そして原発の爆発で多くの方々が避難所で厳しい生活を送られていると聞いています。一日も早く皆さんが、ご家族と一緒に安心した日常生活を送れるように心から願ってやみません。年末に愛用しているレーシングギアをオークションに出品して、微力ながら犠牲者の皆さんのお役に立てないかと考えています」と、日本が大好きなドミニクだけに、心温まるメッセージを日本のファンの皆さんへ届けて欲しいとの申し出があった。

 FIA GT1は、次のポールリカール戦でヨーロッパでの最終戦を迎え、シーズン後半戦へと入る。チームランキングではトップに立つオールインクルシブ。そしてまだまだドミニクにもドライバーランキングでトップに上がれるチャンスが残されている。日本からも力強い声援を送って欲しいところだ。

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