今季、ヒュンダイ勢が首位を走りながらも自滅で優勝の権利を失ったラリーは少なくない。そして、そのうちの多くはサスペンションの破損によるものであり、それがドライビングミスによるものなのか、マシンの弱さが原因なのかは、明らかにされていない。
ヒュンダイは、チーム代表がミッシェル・ナンダンからアンドレア・アダモに変わってから、一気に秘密主義に転じた。元々エンジニアでもあるアダモは、マシンのメカニズムや問題について語ることを極端に嫌う。だから、真相はなかなか明らかにならないが、ドライバーのコメントを聞く限り「これくらいで壊れるようでは」という不満の気持ちが見え隠れする。
サスペンションのトラブルは、直近のグラベル(未舗装路)ラリー3連戦で頻発した。やや荒れた路面のグラベルは本来、ヒュンダイi20クーペWRCが得意とするサーフェスであり、直近の3戦、すなわちポルトガル、サルディニア(イタリア)、サファリ(ケニア)もそのようなラリーだった。
ヒュンダイは必勝を期し、ワークスの3台目には有利な後方の出走順でスタート可能な、スポット参戦ドライバーを投じもしていた。実際、その戦略自体は比較的うまく機能し、トヨタ勢、とくに先頭スタートを多く務めたオジエを苦しめた。
しかし、前述のようにサスペンションの破損で少なくとも3戦を落とし、サファリではタナク車のフロントウインドウがヒーターの動作不良で曇ったため、大きなリードを失った。ステージ終了後、タナクは「素晴らしい品質だ」と吐き捨てたが、彼のフラストレーションはかなり限界に来ているようだ。
とはいえ、今後挽回のチャンスはまだある。次戦エストニアはタナクの地元で、昨年優勝を飾った1戦だ。また、その後のWRC初開催イベント、イープル(ベルギー)はヌービルの地元で出場経験もある。
この2戦はヒュンダイにとって大きなチャンスであるが、逆にいえば絶対に落とせない2戦である。もし、この2戦でも優勝を逃したとしたら、今季のタイトル争いは諦めざるを得ないだろう。
■採点……【65点】




