そのような状況で、クルマがようやく力を発揮できるようになってきたこともあり、タナクは速さを取り戻したのだ。フィンランドではロバンペラと戦うためにかなり大きなリスクを冒し、ベルギーでもエバンスとの僅差の戦いが最後まで続いた。
トヨタ時代、そのような接戦になった時のタナクは本当に強く、現在のロバンペラに負けずとも劣らない速さと強さを示していた。ようやく、彼本来の力を発揮できる状態にまでに戻ってきたのだ。もっとも、ベルギーでエバンスに10秒のペナルティが課せられなかったら、優勝できていたかどうかは微妙なところだが。
ただし、2連勝してもタナクはチームに対して厳しい態度を緩めない。技術部門のジュリアン・モンセがチームの副ディレクターを兼務していることを批判し「クルマはまだ完全には良くなっていない」と、開発陣にハッパをかける。タナクは自分自身に相当厳しいが、同じことをチームにも求める。難しいのは、それによって奮起するスタッフもいれば、反感を持つスタッフもいるということだ。
モンセは「ようやく信頼性を確保できるまでになってきたから、これからはパフォーマンス向上に力を入れていく」と述べるが、開発のメインが来季のクルマにシフトしていることも隠さない。今年使えるジョーカーは残り少なく、またチャンピオンシップでも逆転できる可能性が少ないためだ。
タナクには来年以降も基本契約が残っているが、チームが強いコミットメントを示さないと、彼は古巣のMスポーツ・フォードに戻る選択肢を選ぶかもしれない。これからの数戦が、タナクとヒョンデにとって非常に重要な戦いとなる。
