■アジアにおいて日本の力を示せるか
そんなBGTAだが、日本チーム、ドライバーにとっては、ふだん日本のレースを戦っているだけでは得られない“刺激”を得た様子だ。佐々木は「ふだん同じ鈴鹿でレースをしているけど、雰囲気やレースの流れとか、全然違う。慣れ親しんだ鈴鹿ですけど、楽しかったです」という。
また、「レギュレーションや仕組みが日本とは違う部分もありましたが、面白かったですね。接触に対する考え方も違うので、勉強になりました。アジアはレベルが高いと思いますよ。プロも多いですし、日本チームもたくさん出れば楽しいでしょうね。でも、勝つのはなかなか難しいです」というのは、ジェントルマンドライバーとして活躍するD’station Racingの星野敏だ。
近年豊富な財力と、それにともなう走行時間の長さ、またヨーロッパチームとの積極的な交流でアジアのレーシングチーム、ドライバーは急速に力をつけており、日本チームにとってもBGTAはチャレンジのし甲斐があるレースとなっている。願わくば“モータースポーツ先進国”である日本勢がアジア勢を圧倒するレースを見たいものではあるが。
そして日本において、BGTAがより知名度や人気を得るために求めたいものもある。それは日本車の出場だ。今季、鈴鹿戦も含めBGTAには日本車が1台たりとも出場していない。現在BGTAに出場するGT3の車種はアウディ、メルセデス、ランボルギーニ、ポルシェ、フェラーリのみなのだ。これでは日本のファンにとっては寂しい。もし来季開催される鈴鹿10時間が同様の状態になってしまった場合は、盛り上がりに欠けるおそれもある。
BGTAに出場できる日本車のGT3カーとしてはニッサンGT-RニスモGT3、レクサスRC F GT3、アキュラNSX GT3といったところがあるが、GT-Rは今季が現行モデル最終年、RC Fは17年モデルが出たばかり、NSXは北米のみの投入と事情はあるにしろ、アジアのレーシングチーム、ジェントルマンドライバーたちに日本車がアピールしきれていない状況は歯がゆい。
GT3カーは、レースに出場することでメーカーのスポーツイメージを向上させるモデルでもあるが、市販車と同様に魅力的なコストと性能、サポート体制を整えプライベートチームに『買ってもらう』ことも大切だ。アウディやランボルギーニは、チームに積極的に関与することで、アジア圏でのスポーツイメージ向上も図っている。BGTAは今後、東アジアや東南アジアで活発になる可能性も高く、そこで日本車がチームの選択肢に入ってくることを願うばかりだ。
