■自動車メーカーを圧迫するCO2削減要求と自動運転技術

 一方、各自動車メーカーは市場から突きつけられたCO2削減への要求にも応えなければいけない。ヨーロッパでは2021年までにCO2排出量の平均値を95g/km以下にすることが自動車メーカーに義務づけられており、これをクリアできないと巨額の罰金が科せられる。

 ちなみに95g/kmはガソリン車の燃費に換算すると24.2km/ℓで、通常のガソリンエンジン車でこの規制をクリアするのは極めて困難。そこで期待されているのがハイブリッドやプラグインハイブリッドといった技術だが、その開発にはいうまでもなく新たな投資が必要となる。

 さらには、アメリカの一部の州では電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)などのゼロエミッションビークル(ZEV)を一定台数販売することを義務づけたZEV法が制定済み。しかも、中国もアメリカのZEV法に似た規制の導入を検討している。つまり、今後アメリカや中国で生き延びようとすればEVやFCVの製品化がマストとなるのだ。

 もうひとつの技術的課題は自動運転だ。未来の技術と思われていた自動運転は、2017年後半にアウディが発売する次期型A8から段階的に導入される(自動運転機能のリリースは2018年)。しかも、将来的にはドライバーが乗車している必要のない完全自動運転の実用化も待たれている。

 つまり、自動車産業界はいま時代の曲がり角に差し掛かっているのだ。それも、およそ100年前に自動車が発明されてから初めて経験する、もっとも根源的な転換を迫られているのである。したがって、研究開発費がいくらあっても足りないのが、いま各自動車メーカーが置かれている立場といえるだろう。

 こうした時代に、巨額の投資をしながらその見返りが判然としないモータースポーツのワークス活動に自動車メーカーが取り組むことは、極めて難しいといわざるを得ない。唯一、彼らの未来に向けた研究開発の方向性と一致しているのはフォーミュラEで、今年限りでWECから撤退するポルシェだけでなく、アウディもメルセデスも今後はフォーミュラEに注力すると明言している。

 私自身は、フォーミュラEのエンターテイメント性を高く評価し、その将来に大きな期待を抱いているが、DTMは言うに及ばず、WECで求められるのと同等の技術力、同等のマンパワー、同等の予算が現在のフォーミュラE参戦に必要かといえば、答えは明らかに否である。

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