ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2021.05.10 18:23
更新日: 2022.03.17 13:33

D’station Racing 2021 WEC世界耐久選手権第1戦スパ レースレポート


ル・マン/WEC | D’station Racing 2021 WEC世界耐久選手権第1戦スパ レースレポート

D’station Racing

Race Report – 2021.05.08

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2021 FIA World Endurance Championship
Round 1 6 Hours of Spa Francorchamps (BEL)

APR.29-MAY.1 Qualify :12nd / Race:7th

始まった世界への挑戦。存在感を示し堅実に7位フィニッシュ

 D’station Racingにとって、いよいよ夢の舞台とも言えるWEC世界耐久選手権への挑戦が始まった。新型コロナウイルス禍は続く状況だが、万難を排し渡航した星野敏と藤井誠暢のふたりは、第1戦に先駆けて行われた『プロローグ』と呼ばれるテストから、第3ドライバーを務めるアンドリュー・ワトソンと合流し、第1戦の舞台であるスパ・フランコルシャンに乗り込んだ。

 ただ、ここで突然のアクシデントが起きた。プロローグを走りはじめた#777 アストンマーティン・ヴァンテージAMR GTEは、ワトソンから星野に交代するが、突然のタイヤトラブルにより高速のラディオンでクラッシュしてしまったのだ。直前にチームメイトの#33も同様のクラッシュを喫しており、同じ原因であることが予想された。

 星野に幸い怪我はなかったが、車両のダメージは深刻。しかしメンテナンスを委託するTF SPORTは驚異的な作業スピードでダメージを復旧させ、プロローグ2日目には走行が可能な状態に戻してみせた。2日目は無事に走行を終え、いよいよ第1戦のレースウイークを迎えた。

 4月29日(木)にスタートしたフリープラクティス1では、ワトソンから星野、藤井と交代し走行。このセッションは最下位タイムだったが、4月30日(金)のプラクティス2では藤井が2分15秒082というタイムでクラス6番手に。さらに星野〜ワトソンと交代したプラクティス3ではワトソンが2分15秒311をマークし、9番手につける。少しずつ戦える手ごたえを得て迎えた予選では、ブロンズドライバーの星野がアタックを担った。

 他車の相次ぐクラッシュによる2度の赤旗中断により、予選再開後は実質的に2周の予選だった。星野は練習走行時の予選シュミレーションで2分16秒417の好タイムをマークしており、上位進出へ向けた手応えがあったが、この週末から世界的にホワイトラインカット(コース外走行)のペナルティが厳しくなっており、そのあおりもあり、ベストタイムがふたつともに抹消されてしまう。まさかのノータイムとなり、D’station Racing は最後尾から緒戦に挑むことになった。

 迎えた5月1日(土)の決勝日。本来スタートドライバーはブロンズドライバーの星野が担うはずだったが、ノータイムとなったこともあり、主催者であるFIAから指名され、藤井がスタートを担った。初めてのスパを楽しみながら挑戦を続けていた藤井は、スタート直後から世界にその存在感をアピールすることになる。

 1周目に3台をかわした藤井は、その後も続々とオーバーテイクを展開。12周目にはクラス首位争いを展開していく。首位は同様に予選ノータイムだった#77 ポルシェのマット・キャンベル選手。トップドライバーのひとりだが、藤井はこれに食らいつく走りをみせ、存在感を示した。

 藤井は25周目にピットインすると、星野に交代する。初めてのWECの決勝となった星野だが、着実に約2時間のダブルスティントをこなし上位と遜色ないスピードをみせると76周まで走りきり、ワトソンに交代する。

 その後ワトソンもノートラブルのままダブルスティントをこなし、ふたたび藤井へ。レース途中からアクシデントも頻発するなか、しっかりと初めてのWECでチェッカーまで走りきってみせた。

 結果としては7位。決して満足できる結果ではないかもしれないが、この週クラッシュからスタートしていたD’station Racingにとって、しっかりと完走し結果を残すこと、そしてその足跡を残すことが第一の目標だった。

 D’station Racingは初めての世界での戦いで、しっかりとその目標を完遂してみせた。次なる戦いの舞台は、ポルトガルのポルティマオ。まだまだ初めての挑戦は続いていく。

 しかし世界屈指の難コースのひとつであるスパ・フランコルシャンで目標完遂を果たしたことはD’station Racingの大きな自信となった。

D'station Racingのアストンマーティン・ヴァンテージAMR GTE
D’station Racingのアストンマーティン・ヴァンテージAMR GTE

D'station Racingのアストンマーティン・ヴァンテージAMR GTE
D’station Racingのアストンマーティン・ヴァンテージAMR GTE

COMMENTS:

Driver:Satoshi HOSHINO
D’station Racingとしての初めてのWECへの挑戦が始まりました。まずは7位完走を果たすことができ満足しています。走り出しでアクシデントもあり、どうなることかと思いましたが、チームの素晴らしいサポートのおかげでふたたび走ることができ、自分としてもスパという難コースで少しずつスピードを上げることができたと思います。予選ではトラックリミットをとられてしまいましたが、藤井選手がスタートで順位を上げてくれ、その後自分のダブルスティントをしっかりこなすことができました。アンドリュー選手も速さをみせてくれましたし、チームのポテンシャルを感じることができました。次戦はさらに上位を目指していきたいと思います。応援ありがとうございました。

Driver:Tomonobu FUJII
初めてのWEC世界耐久選手権でのレースでしたが、良い部分と悪い部分があったにしろ、全体的に見たらすごく良いレースウイークになったのではないでしょうか。まずチームとして目標としていた完走を果たし、7位という結果を残せて良かったです。個人的にもスパ・フランコルシャンは初めてでしたが、とてもチャレンジングで楽しいサーキットでした。他のプロドライバーと競うシーンもありましたが、日本とは異なるシーンも多く、このシリーズで戦うやり甲斐も数多く感じることができました。今回は初戦だったので学ぶ部分も多かったのですが、次戦ポルティマオ以降は、少しずつ全体のレベルを上げていけるように頑張っていきたいと思っています。

Driver:Andrew WATSON
チームの一員として参加した最初のレースはすごくポジティブなものだったよ。週末を通じて進歩を遂げることができたし、僕たちのレースペースは強力で7位まで上がることができた。藤井サンが序盤2番手まで上がったのはスーパーなことだったし、その後のレースの良い土台になった。また星野サンもミスがなくとても良い仕事をしてくれたね。それにペースもトップと変わらなかったのは今後に向けてとても良い材料だ。僕たちは毎戦表彰台争いができると確信しているよ。クルマも良かったし、TF SPORT、D’station Racingとチーム全体がみせてくれた高いオペレーションに感謝している。次戦のポルティマオがもう楽しみで仕方ないよ!

Team Director:Tom FERRIER
この週末は、D’station RacingにとってWEC世界耐久選手権での初めてのレースウイークとなったが、テストからレースを通じて非常に高いポテンシャルを示してくれたと思っているし、第2戦となるポルティマオに向けて非常に楽しみな、期待を抱かせる内容になったのではないかと思っているよ。すべてが初めてのレースであったけれど、星野敏選手、藤井誠暢選手、そしてアンドリュー・ワトソン選手という3人のドライバーは素晴らしい仕事をみせてくれたと思っているし、チーム、トラックエンジニアもそれに十分に応えることができたのではないだろうか。結果としては7位だけれど、チームのデビューレースとしては成功と言えるだろう。

DSR Technical Director:Ryo HIRANO
D’station Racingとしてフル参戦するWECで、まず開幕戦で7位完走できたことが素晴らしいと思います。プロローグでのクラッシュでは相当なダメージを車両に受けてしまいましたが、メカニックたちの修復のおかげで復活することができたのは流石でした。日本ではできないであろうフレーム修理をサーキットで完璧にこなしてくれました。予選はドライバーの難コースに対応する早さと、車両のセットアップが良い方向になってオールージュを含むセクターでは最速を記録できました。決勝でも、序盤のオーバーテイクショーは見ていて気持ちいいものでした。粘り強く戦い完走できたことは良かったです。

Chief Engineer:David BREWER
テストでは星野サンがクラッシュしてしまったけれど、チームが団結して車両を修復し、2日目に走行することができたのは本当に良かったと思う。良いプロローグになったと思うんだ。レースウイークでは、予選は難しい展開になったね。トラックリミットが厳しくなってしまったことで、レースでは最後尾になってしまった。でも、藤井サンが素晴らしいオーバーテイクをみせてくれて、トップ争いまで追いつくことができた。星野サンのスティントではFCYがあったりで大変だったけれど、しっかりと乗り切ってくれた。走り出しのアクシデントを考えると良い結果だったと思うし、シーズンのうちに表彰台にはいけるはずだ。

D'station Racingのアストンマーティン・ヴァンテージAMR GTE
D’station Racingのアストンマーティン・ヴァンテージAMR GTE

ドライバー交代する星野敏と藤井誠暢
ドライバー交代する星野敏と藤井誠暢

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