──レースウイークからチームに帯同されていましたが、いざテストで乗るとなったとき、緊張感はありましたか?
平川:いつもよりはあったと思いますけど、乗ってしまえば、別に「緊張して何かができなくなる」とかはなかったですし、普通に落ち着いてやれました。

──念願のハイパーカーを「楽しめる」という状況ではなかったのでしょうか。
平川:いろいろと(操作など)やることがあったりとか、ブレーキのこととかも想定外で、1〜2周目でフラットスポットができたりとかもあって、最初は全然自分の中でうまく走れてなかったんですが、逆にそれで集中できた部分はあるかもしれません。自分の中では初日で慣れる予定だったんですけど、とにかく思っていたよりも大変だったので、慣れるように頑張って、集中して走ったという感じです。

──周囲のドライバーや、スタッフとのコミュニケーションはいかがでしたか。
平川:レースウイークは、スタッフもドライバーもレースに集中しているので、こちらからはあまり話しかけないようにしていました……まぁ、もともと自分からしゃべるタイプではないですけど(笑)。レースが終わってからは、エンジニアを探してしゃべったり。エンジニアの方々もかなり(4〜5年前のLMP1テスト時とは)変わっていて、誰が何を担当しているかというのが分からなかったので、その辺を探っていくところからでした。ドライバーは前と(ほとんど)変わっていませんし、日本人のふたり(※可夢偉・中嶋一貴)にはいろいろと聞いて頼りになりましたし、そこは問題ありませんでした。

──テスト後、チームからは平川選手の働きぶりについて、評価やコメントはあったのでしょうか?
平川:正直、それがないので、僕が不安です(笑)。

──そうなんですね。平川選手としては「オーディションされている感」はありましたか?
平川:もちろんあったと思います。たとえば、(運転中に)「ディスプレイの明るさを変えてくれ」とか、「サインボードを見て、読んでくれ」とか、(テスト・プログラム自体には)必要がなさそうなことを試されたな、という感じはありました。ただ、自分としてはオーディションどうこうというよりは、チームにとってはル・マンに向けた大切な時間なので、そこで少しでも力になれるように働いた、という感覚です。

トヨタGR010ハイブリッドのステアリング
トヨタGR010ハイブリッドのステアリング

──テストを終えてみての手応えなど、改めて総括していただくとすると、いかがでしょう。
平川:正直、ブレーキなど、クルマに慣れ切ることができなかったというのが唯一、ちょっとあんまり……。耐久テストも慣れないままスタートし、夜も慣れないままで、次はいろいろやろうと思っていたら最後雨だったりと、自分としてはできなかったことも多いんですけど、別に大きなミスもなかったですし、前に何回か(LMP1を)テストさせてもらった4〜5年前と比べたら、全然うまくやれたと思います。

──ドイツに行ってから2週間以上という長いヨーロッパ滞在でしたね。
平川:ドイツは、僕が行ってから店が開きだしたので、なんとか救われた感じでした。ポルトガルに着いてからはチームと一緒なので、別にどこにも行かないし、食事は(サーキットに)チームのでっかいホスピタリティがあるし、その辺は困らなかったです。

──なるほど。
平川:ただ、PCR検査がしんどかったです。一番の不安はそれでした。正直、クルマに乗ることよりも。日本出る前にやって、TGR-Eに入るのにもやって、ポルトガル入国のためにやって、サーキットに入る前にもWECの検査があって。帰国前と日本到着後の検査も含めたら、全部で6回。もう、陽性になってしまったらすべてが終わるので、絶対に感染しないようにとずっと気をつけていて、そこが一番のストレスでしたね。

──ご無事で良かったです。
平川:本当に良かったです。

* * * * * *
 国内のトップを極めた者にとっても、ハイブリッド・システムを積むレーシングカー、ましてや規定変更に伴い生まれたばかりの、煮詰まり切っていない車両の初めてのテストドライブは、簡単ではなかったようだ。

 平川はいつものように淡々と話してくれたが、最後に口にしたPCR検査への緊張感からも想像できるように、並々ならなぬ決意を持って臨んだはずだ。それだけに『最後までマシンに慣れなかった』ことには、悔しさも残しているように感じられた。

 平川はこの先のテスト等の予定について「話を進めてはいるけど、正直、決まっていません」と語ったが、次なるチャンスが得られ、より熟成の進んだマシンで、さらなる走行機会を積んだうえで、その“将来”に向けた評価がされることを期待したい。

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