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ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2023.06.19 11:15
更新日: 2023.07.06 10:53

「人生最大の失敗かも」と笑うジェンソン・バトン。本気で“ル・マン最速GT”を狙ったNASCARカマロの大冒険

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ル・マン/WEC | 「人生最大の失敗かも」と笑うジェンソン・バトン。本気で“ル・マン最速GT”を狙ったNASCARカマロの大冒険

 で、肝心のレースはどうだったかというと、さすがに予選ほどのタイム差はつかず、ベストラップはわずかにGTEコルベットの方が速かった。でも、GTカーの中で首位に立つくらいのスピードも安定性もあって、20時間以上もGTクラスのトップを争い続けたのだからスバラシイ。ヘンドリックの皆さんたちは賞典外ながら「GTカー最速の座を狙うぜ」と気合いが入りまくり。まあ、レギュレーションもBoPもあまり関係ないクルマなんで、直接GTEと比べるのはナンセンスですけどね。

 バトンは「カマロZL1はパワフルだからとにかくストレートスピードが速い。それがこのクルマ最大の武器だ」と言ってましたが、確かにレースウイークを通しての最高速を見ると、予選では314km/hも出ていて、これはGTカー最速。下位のLMP2よりも速かったりしました。

 決勝でもやはりGTカー最速で、ストレートではLMP2がなかなか抜けなかったり、抜いても引き離すのに時間がかかったりとか、けっこういい勝負をしてました。あんなに座高……じゃなくて全高が高くて重量も重く(公称1342kgです)、空力的にもプリミティブなのに、一体どうなってるの? って、見ていて頭がバグりました。何ていうか、アメフトの選手がマラソンランナーの中に紛れ込んでいるような、強烈な違和感を覚えたのです。

「意外かもしれないけど、ポルシェコーナーなんかも結構速かったんだ。もちろんダウンフォースは全然ないからLMP2にはまったくかなわないし、ロールもかなりでかいけど、バランスはいいんだ」とバトン。

 バトンといえば元スーパーGT王者。GT500と比べたらどうなのよ?「ハハハ。僕たちのNASCARと比べたらNSX-GTはハイパーカーみたいなものさ。比べる対象ではないよ。でも、楽しさはまったく負けていないし、サウンドは間違いなくNASCARが最高だ!」そう、同じV8でもサウンドはアストンやコルベットとはまったく違って、高回転時にはまるで楽器みたいなイイ音がしていました。

シボレー・カマロZL1が履くのは専用開発されたグッドイヤータイヤ
シボレー・カマロZL1が履くのは専用開発されたグッドイヤータイヤ

■ガレージ56が描いた“爽やか青春ストーリー”

 チームが唯一恐れていたのは雨。NASCARのロードコースだって雨のレースはあるけれど、今年のル・マンみたいにバケツの水をひっくり返したような豪雨はまずない。しかし、グッドイヤーがル・マン専用に開発したレインタイヤとインターミディエイトタイヤはうまく機能し、ドライバーたちも難局を切り抜けた。「夜間に雨の中を走るのはおっかなかったけれど、何とかうまく切り抜けることができたよ」とジョンソン。NASCARレジェンド、なかなか得難い経験をなされましたね。

 NASCARカマロは心配されていた耐久性も想像以上に高く、エンジンも快調にブン回り続けた。NASCARカップシリーズの最長レースは約960kmで、そこから先は未知なる領域だったけれど、OHVのシボレーR07ユニットは余裕たっぷりにNASCARサウンドを響かせ続けたのです。

 ただし、駆動系のほうは頑張りきれず、日曜日の昼過ぎにバトンがドライブしている最中にトラブル発生。トランスアクスルに問題が起きたようで、そこから1時間程度ガレージの中で過ごすことになってしまいました。その結果、総合順位は一気に下がり、ジョンソンが総合39位でチェッカーフラッグを受けた。GTカー最速で走りきるという夢は果たせなかったけれど、ドライバーたちもヘンドリックのスタッフも心からル・マン・チャレンジを楽しんだようです。

「素晴らしい経験だった」とバトン。「このクルマがル・マンを走るのは今回が最初で最後なんだ。そう考えると寂しい気持ちになるけれど、次に向かって行こう」って、何だか高校最後の学園祭を終えた若者みたいな甘酸っぱいコメントですね。

 でも、何だかわからないけど面白いことにみんなで真剣に取り組んで、多くの困難を乗り越え、一時はGTトップを争い、しっかり最後まで走り続けることができたわけだから、ミッションコンプリートですよね。総合優勝争いは不可解なBoPの関係でちょっとばかりアレな感じでしたが、ガレージ56は実に爽やかな青春ストーリーが描かれたのでした!

スタート前セレモニーに臨むヘンドリック・モータースポーツのクルーたち
スタート前セレモニーに臨むヘンドリック・モータースポーツのクルーたち



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