「そして予選Q3の最後のアタックの時に、セクター3で野尻(智紀)の後ろに着くことができた。クルマのセットよりも、どういう状況でタイムを出した方がいいのか、そういうやり取りをエンジニアとずっとしていました。単純に前がいなければいいという間合いではなくて、後ろに着きながら、セクター3でスリップを使える間合いを取るのと、セクター1、2は着きすぎてダウンフォースが抜けないようにある程度、距離を置きながら、でもちょっとずつ間隔を詰めて、そしてセクター3でスリップに入るというのがベストだった。そこは本当に狙っていました」
レースは相手によって被害を受けることもあるが、相手を活かすこともできる。山本はワンメイクのシビアな戦いだからこそ、相手を自分にどう活かすかにフォーカスしていた。それが前のクルマとの間合いであり、アタック中の前のクルマとのギャップの詰め方である。そして、今回は極めつけに信頼できるドライバーが前にいたという、好運が山本に味方した。
「Q3ではトムス、ダンデライアンの後ろに着こうと思っていて、そこはエンジニアがいいタイミングで出してくれた。そして、野尻を見つけて、野尻は変な動きはしないという信頼もあるので、いい相手を見つけて後ろに着きました。それも運ですね。いくらこういうことがやりたくても、うまく行くとは限りません」
ただもちろん、その運を導くために山本は何度もシミュレーションして準備を整え、そして創造力を駆使したことは言うまでもない。
