この時点で残りのOTSは、可夢偉が1回に対して石浦は3回。「1回休んで、普通のペースでプレッシャーをかけて(石浦の)OTSを減らそうと思ったのですが、1秒差より近づこうとするとエアロが足りず、タイヤを壊してしまうので近付けなかった」と、F1で数々のオーバーテイクショーを披露してきた可夢偉でさえ容易に仕掛けることは困難な状況だった。
追撃を受ける石浦にとってこのコースは、ミドルフォーミュラ時代から多くの周回をこなしているほか、ドライビングコーチとして客観的にも走りを見ている、”知り尽くした”サーキット。可夢偉が後方で冷静に機を窺う一方、追われる石浦も「他のカテゴリーでも最終コーナーや2コーナーで後ろにつくと苦しいので、バックストレートエンドに絞って、そこだけ守れればいいなという感覚でした」と、冷静にディフェンスを展開した。
最後まで首位を守り切ってチェッカーを受けた石浦だったが、「落ち着いていた反面、かなりいっぱいっぱいだった。ドリンクも飲んでいないし、ラップ数を数えながらミスをしないように最後まで走ったら勝てた、という感じでした」と語るほど可夢偉に追い詰められてもいた。そんな中でも、その腕と経験を最後まで振り絞り、朝のトラブルという苦難をもはねのけて、デビューから8年目、参戦シーズンとしては6年目にして見事初勝利を収めたのだった。
