TOYOTA GAZOO Racing 2023スーパーGT第8戦もてぎ レースレポート
スーパーGT2023年 第8戦 もてぎ
MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL
坪井/宮田組GRスープラがシリーズチャンピオン獲得!
GT300クラスでも吉田/川合組GRスープラがチャンピオン
スーパーGTの今季最終戦となる第8戦がモビリティリゾートもてぎで行われ、終盤に雨が降る波乱の展開のなか、粘り強く走り抜いた坪井翔/宮田莉朋組 au TOM’S GR Supra 36号車が今季3勝目を挙げ、見事シリーズチャンピオンを獲得しました。
TGR勢同士のタイトル争いとなったGT300クラスでは、吉田広樹/川合孝汰組 埼玉トヨペットGB GR Supra GT 52号車が7位フィニッシュでチャンピオンを獲得。2023年シーズンのスーパーGTは両クラスをGRスープラが制しました。
スーパーGT第8戦『MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL』が11月4日(土)、5日(日)の両日、栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催されました。
全8戦で競われている2023年シーズンのスーパーGTもいよいよ最終戦を迎えました。注目のチャンピオン争いは、第2戦で優勝、第3戦で2位表彰台獲得の後も着実にポイント獲得を続け、前戦第7戦で2勝目を挙げた36号車が首位で最終戦を迎えることとなりました。
しかし、2位とは7ポイント差、3位とは16ポイント差となっており、3メーカーの3台によるタイトル争いが最終戦で繰り広げられることとなります。
GT300クラスでは、ランキング首位の52号車と、同2位の堤優威/平良響組 muta Racing GR86 GT 2号車の2台のみがタイトル獲得の可能性を残して最終戦で争います。
また、今大会はサクセスウェイトが全車ゼロとなり、ひとつでも上位でシーズンを終えたい全チームが総力戦で臨むため、激戦が予想されます。
そして、今季限りでのGTドライバー引退を発表したZENT CERUMO GR Supra 38号車の立川祐路にとっては、今大会はGTでのラストレースとなります。前身のJGTC時代をあわせて3度のチャンピオン獲得、通算19勝、ポールポジション24回を記録するなど長きにわたって日本を代表するトップドライバーとして活躍してきた立川の功績を称えるセレモニーが4日(土)に行われました。
また、イベント広場に設置されたTGRブースには、TGRドライバーミュージアムとして立川のメモリアルグッズの他、歴代のレースカー、au CERUMO Supra、ZENT CERUMO Supra、ZENT CERUMO SC430、ZENT CERUMO LC GT500等を展示。トークショーにも多くのファンの皆様が集まり、立川の最後の雄姿に注目が集まりました。
予選
4日(土)、もてぎを含む北関東は広く濃霧に覆われ、朝方予定されていたFIA-F4の予選はディレイとなるほどでしたが、午前中の公式練習走行は予定通り実施。その後は霧も晴れ、やや雲が残るものの予選開始の14時20分には気温も11月としては高めの23度まで上昇。路面温度29度のドライコンディションでノックアウト方式の予選が開始されました。
Q1ではまず38号車の石浦宏明が1分36秒857のタイムをマークすると、先週スーパーフォーミュラでチャンピオンを獲得したばかりの宮田が駆る36号車は1分36秒440でその時点での2番手に浮上。さらに各車がタイムを上げていくなか、最後にアタックした山下の14号車が1分36秒156で2番手に滑り込みました。36号車は最終的に5番手となり、TGR勢は2台がQ2へ進出。
石浦の38号車はタイムを更新したものの12番手。先週のスーパーフォーミュラでクラッシュを喫するもメディカルチェックを経て今大会出場を果たした笹原右京のDeloitte TOM’S GR Supra 37号車は13番手。国本雄資のWedsSport ADVAN GR Supra 19号車が14番手、関口雄飛のDENSO KOBELCO SARD GR Supra 39号車は15番手となりました。
Q2では、10分間のセッションの残り7分を切って、最後に坪井の36号車と大嶋和也の14号車がコースイン。ラストラップでのアタックで坪井は1分36秒214をマークし、2列目3番手グリッドを獲得。大嶋の14号車は8番手となりました。
GT300クラスは2グループに分けてQ1を実施。それぞれ上位8台がQ2へ進出します。A組では最後まで激しく順位が入れ替わる展開のなか、ポールポジションを獲得すればタイトルが決まる52号車の吉田が3番手、根本悠生のapr LC500h GT 31号車が4番手、河野駿佑のSyntium LMcorsa GR Supra GT 60号車が5番手、イゴール・オオムラ・フラガのANEST IWATA Racing RC F GT3 50号車が7番手、平中克幸のシェイドレーシング GR86 GT 20号車が8番手に入り、TGR/LEXUS勢は5台全車がQ2進出を決めました。
B組では、ポールポジションを獲得しないと逆転タイトルの権利を失う2号車の平良響が1分46秒130でトップタイム。K-tunes RC F GT3 96号車の高木真一が3番手に付け、Q2進出。織戸学のapr GR86 GT 30号車は11番手でQ1敗退となりました。
Q2では、ポールポジションのプレッシャーがかかる2号車の堤が1分45秒633の好タイムをマーク。他の車両もアタックを続けましたがこのタイムを上回る車両は出ず、見事2号車がポールポジションを獲得。貴重な1ポイントを得て、明日の決勝での逆転タイトルに望みを繋ぎました。
小高一斗の31号車が6番手。川合の52号車が7番手。新田守男の96号車が9番手、吉本大樹の60号車が12番手、古谷悠河の50号車が15番手、清水英志郎の20号車が16番手から決勝レースのスタートを切ることとなりました。
決勝
5日(日)、空にはやや雲がかかり、路面はドライながらレース中に降雨の予想もある微妙な天候。気温は23度、路面温度28度とこの時期としては暖かな気候で、グランドスタンドを埋め尽くしたモータスポーツファンの皆様が見守る中、13時に栃木県警の白バイとパトカー先導によるパレードラップ、フォーメーションラップを経て、63周で競われる決勝レースのスタートが切られました。
3番手スタートの36号車は坪井がスタートを担当。タイトルを争うNiterra MOTUL Z 3号車がポールポジションから首位を逃げる展開となり、タイトル獲得のために2番手へのポジションアップを狙う36号車の坪井は序盤から前を行くAstemo NSX-GT 17号車を激しくプッシュしました。
その後方では7番手からスタートを切った大嶋の14号車が、前を行く車両との6番手争いで接触を喫しコースオフ。コースへは戻ったものの、この接触でタイヤのスローパンクチャーに見舞われ、予定外のピットイン。大きく順~を落とすこととなってしまいました。
最後尾15番手からスタートした39号車の関口は序盤から素晴らしいオーバーテイクショーを披露。21周目には7番手までポジションを上げました。
23周目、17号車と2番手争いを続けていた坪井の36号車は、サイド・バイ・サイドのバトルの末にようやくパス。このポジションを守れば自力でチャンピオンが獲得できる2番手に浮上しました。
中盤、天候やコンディションを睨みながらのタイミングで各チームがピットインを行っていくなか、23周目を終えたところで石浦の38号車がピットへ向かい、立川がスーパーGTラストランへとコースに向かいました。
36号車はトップの3号車がピットインした翌周26周終了でピットへ向かい、宮田へとドライバーチェンジ。3号車に続く位置でコースへ復帰しました。
全車がピットを終えた時点で36号車は首位3号車に続く2番手。そのままの順位でフィニッシュすればチャンピオンですが、後方から3番手の車両が追い上げてきており、最後まで予断を許さない展開が続きました。
44周目にクラッシュ車両が発生し、フルコースイエローが出されたものの、すぐに車両は排除され、大きな変動は無いままレースは再開。
しかし、レースはそのままでは終わりませんでした。残りが10周を切ったところで、コースの一部でかなり強い雨が降り始め、全車大きくペースダウン。最後の逆転を狙ってピットインしてレインタイヤへと交換する車両も出て、最後の最後にまたわからない展開が待っていました。
そして残り5周、首位を走行していたZ 3号車がまさかのコースオフ。グラベルに捕まり、大きく順位を落とすこととなってしまいました。
これで36号車は首位に浮上。しかし、濡れて非常に滑りやすい路面をスリックタイヤで走り続け、コース上に留まるのも困難な状況で、最後まで気を抜けない周回が続きました。
しかし、後半を担当した宮田は懸命に車両をコントロールし、トップでチェッカー。今季3勝目を飾ると共に、TGRにとっては2021年以来2年ぶりとなるチャンピオンを獲得しました。坪井は2021年以来自身2度目、宮田にとってはスーパーGTでの初戴冠とともに、前週スーパーフォーミュラでチャンピオン獲得と合わせ、史上最年少での国内トップフォーミュラと最高峰GTでのダブルチャンピオンを達成しました。
接触による予定外のピットで大きく順位を落とすも、山下が終盤の難コンディションの中で素晴らしい追い上げを見せた14号車が6位。39号車が最後尾からの追い上げで7位、19号車が8位、37号車が9位。立川のラストランとなった38号車は11位でレースを終えました。
GT300クラスでは、前日の予選で逆転タイトルへの望みを繋いだ2号車は、平良がスタートを担当し、序盤はトップをキープ。
一方、1点でも獲得すればタイトル獲得が決まる52号車は、7番手スタートから着実にポイント圏内を走行。
優勝しかない2号車は、レースを通して激しい首位争いを展開しましたが、3番手を走行していた終盤戦、雨で路面が濡れ始めたことで、ピットインしレインタイヤへと交換するギャンブルに出ましたが、この作戦は無念にも功を奏さず。
52号車は終盤の難コンディションでも着実に吉田がポイント圏内をキープし、7位でチェッカー。2023年シーズンのGT300クラスチャンピオンを獲得しました。チーム、そしてドライバーの吉田、川合ともに初めての戴冠となりました。
レースは終盤の難コンディションの中で小高が好走を見せ順位を上げた31号車がTGR/LEXUS勢最上位の4位フィニッシュ。同じく終盤一気にポジションを上げた96号車が6位、52号車が7位。2号車は9位に終わり、惜しくも逆転チャンピオンはならなかったものの、シリーズランキング2位となりました。
au TOM’S GR Supra 36号車 ドライバー 坪井翔
「僕にとって2回目のチャンピオンですが、とても大きな2回目だと思います。この歳で2回目が取れるなんて思ってもいなかったので、本当に嬉しいです。他のチームの結果次第だった2年前と違って、今日は2位になればというのはありましたが、追われる立場のプレッシャーもあるなかで、しっかり勝ってチャンピオンを決められたのはすごく良かったです」
「今日は3番手でスタートして、なかなか前を抜けないシーンもあったんですが、なんとか17号車を気合いで仕留めることができました。宮田選手のスティントは、特に最後はかなりタフなコンディションで、難しい展開だったと思うんですが、ゴールまで無事にクルマを運んでくれました。もちろん勝利を目指していましたが、まさか本当に優勝してチャンピオンを取れるとは思っていませんでした」
「シーズン3勝すれば文句なしのチャンピオンだと思いますし、本当に最高のシーズンでした。最後の雨のコンディションは、本当にドキドキしましたが、宮田選手なら絶対やってくれると僕は信じていましたし、チーム全員で信じて宮田選手がチェッカーを受ける瞬間を待っていました。2位どころかトップで帰ってきてくれたので、もうこれ以上言うことはありません」
au TOM’S GR Supra 36号車 ドライバー 宮田莉朋
「自力でチャンピオン取れるのは2位以内という状況で今回もてぎに臨みましたが、もてぎに対しては結構苦手意識が強くて、去年もQ1が突破できなかったので、まずはQ1突破、そしてトップ3に入れたら理想的かなというぐらい不安要素が多かったです」
「とはいえ先週末僕はスーパーフォーミュラで同じチームトムスでタイトルを取って、チームとしても士気が高かったですし、全体的に良い流れで、同じメンバーでやってるからこそ、みんなGTでもチャンピオンを取ろうという気持ちが高かったので、そういう部分では全体的にシーズン通していい流れがあったのかなと思います」
「レースに関しては1台抜けばチャンピオンということはわかっていて、坪井選手がまさにそれを成し遂げてくれました。ただ、僕のスティントになってからはドライコンディションでは3号車が速かったですし、後ろの23号車も速くて、順位をそのままで終えればチャンピオンというのはわかっていましたが、抑えられるかという不安はありました」
「最後はああいった展開になりましたが、我々は36号車らしい、ミスなく力強いレースをした結果だと思いますし、僕自身もチームと共に1年間戦ってきたなかで色々と成長でき、その集大成を結果として残せたと思います。本当にチームの皆さん、そしてファンの皆さんには感謝しかありません」
埼玉トヨペットGB GR Supra GT 52号車 ドライバー 吉田広樹
「素直にまずは嬉しいです。自分はこのチームに移ってきて5年目なんですが、これまではランキング2位だったり、去年も最終戦までチャンピオン争いには残りながら、詰めが甘いというか詰めきれない部分が正直ありました。今年は同じようなミスをすることなく、自分たちのベストを尽くすことを心がけてきましたが、どのレースもやはり紙一重というところがあって、その紙一重の良い方を今年はレースごとに拾えたかなという結果がシリーズチャンピオンに繋がったと思います」
「今日もコンディション的に厳しかったですし、前戦も最後まで後を抑え続けなくてはならないなど苦しいレースが多かったです。今回は本当にノートラブルで、パーツか何かが当たってカナードか何かが取れかけたりはあったんですけど、それ以外何のトラブルもなかったですし、そういう意味でドライバー、チームみんなが同じようなプレッシャーのなかでミスなく、フォローしあってやってきた結果がこのチャンピオンだと思うので、僕自身もすごく嬉しいです」
「ディーラーチームとして、周りがプロフェッショナルなメカニックたちに紛れてやってきたなかで、メカニックたちにとっても自信になると思うので、そういった意味でもこのシリーズチャンピオンというのはとても嬉しく思っています」
埼玉トヨペットGB GR Supra GT 52号車 ドライバー川合孝汰
「本当に嬉しいの一言です。僕はFIA-F4をやっていたときに声をかけて頂いて今年で4年目ですが、コロナもあって従来通りのスケジュールで進まなかったり、初めてのことも多く、右も左も分からないなかで、監督始め、吉田さん、チームのメカニックの方から埼玉トヨペットの会社の皆様に色んなことを教わり、助けていただいてきました」
「そんななかでしっかり結果として返していきたいと思っていながらも、あと一歩届かずというのがここ3年続いていたので、今回チャンピオンというかたちで残せたことは非常に嬉しいです。今日はスタートを担当していたので、最後吉田さんチェッカーを受けた後に、メカニック、皆さんの笑顔とかチームの皆さんがホッとした顔とかを見られたのが非常に嬉しかったです」
「ディーラーチームで長年、このスープラになる前のマークX含めてずっと支えてくださったチームの皆さんと、会社で応援していただいてる皆さん、本当に皆さんのおかげでタイトルをとれたと思いますし、今日足を運んでいただいたファンの皆さん、僕らドライバーのスポンサーをしていただいてる方を含め、皆さんのおかげで今シーズンこうして最後まで走りきることができたので、本当に感謝しています」
TOYOTA GAZOO Racingを代表してモリゾウ(豊田章男)より
「坪井翔選手、宮田莉朋選手、ドライバーズタイトル獲得おめでとう!そして36号車の皆さま、チームタイトル獲得おめでとうございます」
「2週連続で宮田選手に“おめでとう”を言えました。トヨタで育った若者が“日本で1番速いドライバー”にもなり、”日本で1番強いドライバー”にもなってくれたこと嬉しく思います。しかし、今回の“おめでとう”は先輩ドライバーと一緒に獲得したものだと思います。一緒に乗ってくれた先輩、チーム監督として指揮してくれた先輩、そして、チームのファウンダーとしてサポートしてくれた大先輩。私からも“先輩ドライバー”の皆さまに感謝を伝えたいと思います」
「もう一人、感謝を伝えたいドライバーがいます。立川祐路選手です。27年間のGT500参戦。その内、25年間をトヨタのために戦ってくれました。長年ありがとうございました。お疲れさまでした。
富士での引退会見で「クルマの調子が悪い時こそドライバーの腕で勝つ。それが出来なくなったことを感じて引退を決意した。」と語ってくれていました」
「また、引退発表のタイミングも『富士で発表すれば、その後のレースで全国のファンにお礼ができる』ということで決めてくれたと聞きました。ドライバーとしての責任感やファンへの姿勢など、後輩たちに大切なものを残してくれたと思います。これからも“先輩ドライバー”として、多くの後輩たちに背中を見せ続けてもらえればと思います」
追伸 TOYOTA GAZOO Racingのみんなへ
「『モリゾウは大の負け嫌い』そのことは、みんなもよく知っていると思います。だから、ふたつの世界選手権、日本のトップカテゴリー、合計“4つのチャンピオンチーム”になれたこと、すごく嬉しいです!みんなありがとう!最後に、ラリージャパンも勝って、今年を締めくくろう!」