Q6:吉武さんがSFではなくSFライツ(旧F3)で長く活動している理由、優秀だった若手ドライバーは?
ペンネーム:RJさん

吉武:自分は2017年からF3を担当しているのですが、実は数年後にはSFへステップアップする予定でした。ただ、その頃に若いエンジニアがどんどん入ってきて、将来性を考えるとSFは彼らに任せた方がいいだろうという話になりました。それ以来僕はSFライツの方で、若手の育成に軸足を置く形になっています。

 SFライツは、クルマのセットアップを詰めていくよりも、走行時間を確保するほうが大きく伸びることもあるカテゴリーです。若いドライバーが、ある瞬間にガラッと化けることがあって、その変化を間近で見られるのがすごく面白いんです。

 これまで担当してきた選手では、坪井選手と宮田莉朋選手がとくに優秀でした。坪井選手が19戦17勝した年は、レースウィークの空気が最初から違いましたね。走り出しの1周目から、「今日も勝つんだろうな」と思わせるような存在感があって、チーム全体が『勝つことが当たり前』という雰囲気になっていました。

 あとは、サッシャ・フェネストラズ選手も強く印象に残っています。初めて日本に来て富士でのテストを走ったとき、Aコーナー(コカ・コーラコーナー)をいきなり全開で入っていったんです。普通は初走行なら慎重に入るようなチャレンジングなコーナーですが、フェネストラズ選手は迷いがなく、最初の数周で「この人は速い」とはっきり分かりました。あの瞬間の衝撃は今でも覚えています。

Q7:レース中の『クルマの扱いが上手い』と感じるドライバーは?
ペンネーム:あーささん

吉武:まず坪井選手。F3時代から見ていますが、いまでは若手のお手本と言えるほどうまくなりました。アンダーステアでもオーバーステアでも、ブレーキとアクセルでクルマを自在にコントロールして、安定したタイムで走れます。さらに『絶対にぶつからない』というレースでの巧さが際立っています。上位カテゴリーで生き残るには必須の能力です。

 ライバルでは、福住仁嶺選手(ENEOS X PRIME GR Supra)も非常に丁寧な運転で、クルマの扱いがうまいことがよく分かります。小林利徠斗選手(KeePer CERUMO GR Supra)もSFライツ時代から見ていますが、丁寧な走らせ方ができるタイプです。小林選手は若手とはいえ、シミュレーターでの走行時間を含めればかなり走り込んでいるようですし、現代的な強みを持っていますよね。

Q8:同じトムスなのに、au TOM’S GR SupraとDeloitte TOM’S GR Supraの成績差が生まれる要因は? 37号車への改善アドバイスは?
ペンネーム:ぴろろぽんさん

吉武:同じガレージが走らせる2台であっても、メンバーが違えば必ず差が生まれます。ドライバーもエンジニアもメカニックも別の人間であれば、同じセットアップで走り出したとしても、最終的には別のクルマになるでしょう。

 価値観、経験、判断基準が違えば、同じガレージで同じクルマを扱っていても、最終的な仕上がりは必ず異なります。例えるならば、友達と一緒に競馬場や競艇場に行ったとき、まったく同じ券を買うことは少ないですよね。どこかで必ず選択が分かれていくわけです。

 今年のDeloitte TOM’S GR Supraの苦戦については、運悪く避けられないトラブルが続いてしまっているだけかと思います。次戦・富士はサクセスウエイトが軽いので、Deloitte TOM’S GR Supraが勝つ可能性は充分あると思います。ぜひ応援していてくださいね。

Q9:Toyota Racing GmbHやTOYOTA GAZOO Racing WRTなどのトヨタの海外拠点と、GT500の技術的シナジーはありますか?
ペンネーム:陽黎明さん

吉武:このあたりの詳しいところは、正直トムスの人間としては分からない部分が多いです。GT500の現場にいると、海外拠点との技術的なやり取りが直接見えるわけではなくて、感覚としては、たまに中嶋一貴副会長が古巣に顔を出してくれるくらいでしょうか。そういう意味では、現場レベルで『何かシナジーがある』と感じることはあまりありません。

 ただ、トヨタ全体ではWECやWRCなど世界選手権で競うマシンの開発が進んでいることは事実ですから、そうした知見がどこかでつながっている可能性はあるのかもしれません。TGR-D(旧TCD)に聞けば何か分かるかもしれません。

Q10:1998年『カストロール・トムス・スープラ』レストア後の売却について
ペンネーム:hamada kasakiさん

吉武:この件、実は僕自身もよく知らされていないんです。車両管理は別部署の担当ですので、レストア後にどこへ渡ったのかまでは把握しきれていません。僕も詳細を知りたいくらいです(笑)。

おまけ:GR GTの印象は? もしGT500に投入されるとしたら、イメージを教えてください。

吉武:実はまだ、GR GTの車両を実際に見たことがないのですが、写真や動画で見た印象をもとに話すと、GR GTのボディは非常に低く平たく見えるので、GT500のスケーリングに当てはめると形状処理が難しいのでは?と感じています。

 というのも、ホンダさんのNSXコンセプト-GTも似た印象があり、市販モデルの車高が低いクルマを、ルーフの高さを基準にしてGT500用にスケーリングすると、リヤまわりが膨らむ傾向があると感じています。さらにフェンダーなどの張り出しも考慮すると、結果的に前方投影面積が大きくなってしまいやすいのではないか、と感じます。実際のところはまだ分かりませんし、エアロ形状を僕らレースチームが決めるわけではありませんが、形状処理はカギになりそうですね。

●Profile:吉武聡(よしたけ さとし)

福岡県出身、1979年3月23日生まれ。自動車メーカー勤務を経てTRD(現TGR-D)へ入社し、2013年にトムスへ加入。F3のエンジニアを務めながら、2014年からはスーパーGT GT500クラスで36号車のデータエンジニアを、2020年からはトラックエンジニアを担当。2021年、2023年、2024年、2025年の王者に輝いた。2026年も36号車のチーフエンジニアを務め、スーパーフォーミュラ・ライツでも35、36、37、38号車の4台のチーフエンジニアを担当する。

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2026スーパーGT第2戦富士
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au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)
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