Q6:自家用車の買い替えにあたり、軽自動車と輸入EV/ディーゼル車の維持費比較、どれを選ぶべきかの相談。
ペンネーム:Z-tune R34さん

吉武:自家用車の買い替えで、軽自動車にするか、輸入EVやディーゼル車にするか、維持費の比較を気にする気持ちはよくわかります。でも僕の答えとしては「好きな車を買ってください」です(笑)。燃費や維持費も大事だけど、毎日乗るものだからこそ、直感で「これだ」と思える車の方が絶対に楽しいじゃないですか。

 僕自身、若い頃はスカイラインの中古を買って、いじり倒して走り回っていました。R31のGTS-Tから始まって、次はR34のセダンでドリフトしたり、とにかくクルマが好きで仕方なかったです。そのあとはプリウスに乗っていたり、最近は落ち着いていますが、やっぱり好きなクルマに乗りたい気持ちはずっと変わりません。

 ですので、もし迷っているなら、少し背伸びしてでも本当に乗りたいクルマを選びましょう。仕事を頑張ってお金を貯めて、好きなクルマに乗るほうが、毎日の生活がずっと豊かになるし後悔もしません。維持費の計算より、自分の気持ちを優先していいと思います。

Q7:レース期間中のデータ分析・ドライバーコメント・タイヤメーカーの意見・エンジニアの考察を短時間で集約し判断する際の、チーム内の指示体制・決定プロセス・情報伝達・精査方法について。※一般企業で似た業務をしているため、参考にしたいとのこと
ペンネーム:えせエンジニアさん

吉武:レース期間中は、フリー走行・予選・決勝と、クルマはつねに動き続けています。その中で一瞬判断が遅れるだけで致命的なミスにつながるため、トムスでは『指示決定権はトラックエンジニアがひとりで持つ』という体制を徹底しています。データエンジニア、メカニック、監督、タイヤメーカーなど、あらゆる情報はすべてトラックエンジニアに集約。そこからトラックエンジニアひとりが判断し、責任を負う。これがレース現場では何より重要です。

 もし意思決定を複数人で行おうとすると、必ず意見が割れますし、議論している時間がそもそもありません。ですので、情報の流れを一方向にすることが鉄則です。集める情報も重要なものだけに絞り、精査もトラックエンジニアが行う。僕は立場としてはチーフエンジニアですが、判断はトラックエンジニアに任せて、チームを見守ることがほとんどです。とくに走行中は本当に秒単位の世界なので、余計な声はノイズになってしまいやすいです。

 一般企業でも同じで、いろんな人が口を出して、誰が決めるのか分からない状態になるのが一番危険です。レースの現場から言えるのは、最終決定者を一人に固定し、そこに情報を集約すること。その人が責任を持ち、周囲はサポートに徹する。この体制が整うだけで、判断のスピードも質も大きく変わると思います。

Q8:日本でモータースポーツ人気を高めるために必要な施策をエンジニア視点で知りたい。
ペンネーム:100R全開さん

吉武:日本のモータースポーツ人気を上げるには、レースの状況がもっと直感的に伝わる仕掛けが必要だと思います。タイヤの種類や残量、燃料、どの車が今速いのか、といった情報がアプリや映像で分かりやすく見えるだけで、観客の理解度は一気に上がると思います。最速ラップの車が画面上で光る演出があるだけでも、ワクワクしますよね。

 次に、解説のスタイルをアップデートしてみることもアリだと思いますね、サッカーW杯の本田圭佑さんのような、現役に近い人の率直でテンポの良い解説があると、若い世代に刺さりやすいスタイルにもつながると思いますし、良いヒントになるのではないかと思います。硬い戦略解説だけではなく、本音ベースの語り口があると、レースの敷居がぐっと下がる気がします。

 そして、子どもが日常でレースに触れる機会を増やすことも大事ですよね。テレビ、CM、ドラマ、映画でレーシングカーが自然に登場するだけで、距離が近くなる。僕らが子どもの頃はそれが当たり前でした。

おまけ:トムスのチーフエンジニアのお給料はどのくらいでしょうか? TRD(現TGR-D)から転籍してアップしましたか?

吉武:僕は年収2億で東條さんは5億です。(※東條力氏:1992年から2021年までトムスでチーフエンジニアを担当。吉武氏の師匠的存在)

 というのは冗談で、実際のところは、転職前と比べると給料額は下がっています。それでも、僕はレースチームでエンジニアをやりたいと思ったのでトムスへの転籍を決めました。

 とはいえ、トムスもちゃんと給料もボーナスも出ますし、旧来の厳しいレース屋みたいにブラックな状況はありません。成績次第ではボーナスも変わってきますので、そこはモチベーションもあがりますよ。

おまけ:レーシングチームの結婚者率はどのくらいですか? 異性との出会いは多いですか少ないですか?

吉武:うちのチームで言うと、結婚してる人はけっこう多いですね。メカニックはとくに早い印象ですね。タイヤ交換も早いけど、結婚も早い。若くして家庭を持ってる人が普通にいますし、子どもがいるスタッフも珍しくないです。レーシングチームは何でもスピードが命、って感じです。

 出会いに関しては、御殿場市に住んでいると人と出会う機会が少ないので、そこはのんびりしたものですけど、外に出れば出会いはあるでしょう。仕事が特殊なだけで、生活自体はそんなに閉じてるわけじゃないので、そこは心配いらないと思います。

 僕の場合は、東條さんに「結婚したらいいエンジニアになれないぞ」と言われたので、その教えを律儀に守っているだけなんです。だから独身なのも、まあ教えを守ってるということで。

●Profile:吉武聡(よしたけ さとし)

福岡県出身、1979年3月23日生まれ。自動車メーカー勤務を経てTRD(現TGR-D)へ入社し、2013年にトムスへ加入。F3のエンジニアを務めながら、2014年からはスーパーGT GT500クラスで36号車のデータエンジニアを、2020年からはトラックエンジニアを担当。2021年、2023年、2024年、2025年の王者に輝いた。2026年も36号車のチーフエンジニアを務め、スーパーフォーミュラ・ライツでも35、36、37、38号車の4台のチーフエンジニアを担当する。

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