■人間は成功と失敗で成長していく

 後半スティントを担当した松井は「タイヤが厳しいというよりも、単純にペースが遅かった。25号車にずっと課題としてある『一発は出るけど決勝が弱い』部分はちゃんと持ち帰らないといけません」と坪井について触れることはしない。

 しかし土屋監督は、この日のレースについて「今日は坪井のレースだった。いいところも悪いところもね」と振り返った。

「坪井には『もしオレが乗っていたら、今日は優勝していたよ。それも余裕でね』と言った」

「レースでいちばんにチェッカーを受けるために何をするべきかを考えながら走るのがベテランの、プロの技。だけど、お前はレーサーだった。抜いてきたし、リードも築いてきた。でも優勝はできなかったよね、と」

 坪井は序盤、トップ争いを展開していたものの、後半松井が小林を防げるだけのタイヤのライフを温存できなかった。土屋監督が2016年最終戦でやってみせたとおり、ポジションを落としてでもタイヤを温存し、後半に繋ぐことが無交換作戦の“キモ”だったのだ。

 ただ勝利のために、坪井に無線で「争うな」と伝えることはしなかったのだろうか? 今回は特に上位争いは混戦で、2〜3ポジションを落としてもトップとの差は大きくは広がらなかったはずだ。それを問うと、土屋監督はこう答えた。

「もちろん無線であれこれ指示することはできたけど、言わなかった。スポンサーさんやファンの思いを考えたら、勝つためには言った方が良かった。でも、ウチの目的は若いドライバーを育てることなので、『こうしろ』とは言わない。事前に作戦も伝えているけど、“レーサー”は抑えられない」

 土屋監督は、坪井の将来、そしてシーズンでチャンピオンを獲得するために、坪井にあえて悔しい思いをさせたのだ。ある意味“荒療治”とも言える。

「ちゃんとコントロールしないと、こういう悔しい思いを経験するんだ……というのが、坪井にとっての今日いちばんの収穫。やっぱり人間は成功と失敗で成長していくから、僕たちがしゃしゃり出ちゃいけないんだよね。それは鈴木恵一師匠の教えなんだけど」

「今日は、楽しかった。ドライバーふたりに信頼を託すことができたから。みんなも残念がったけど、目を腫らして観ているんだよね。そんなレースが開幕戦からできたのが、良かったなって」

レース後半、UPGARAGE 86 MCが迫り防戦一方となったHOPPY 86 MC

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