ライフに関して基本的にはヒューマンエラーや部品の不具合がない限り、現在のターボチャージャー年間使用基数は1基で大丈夫とのこと。現規定が導入された当初は燃焼室の筒内流動を高めようとポート形状を複雑にし、空気は入りにくいが流動は大きいというような設計にしたとのこと。
しかし、ポート形状を複雑にすると抵抗が大きくなりそれは高いブースト圧を必要としタービンへの負担が大きくなり、結果的にタービンブローの原因となったといいます。
反対にNAのようなポート形状にすると直噴エンジンでは燃焼効率が低下するがブースト圧を抑えることができ、結果それはターボチャージャーへの負担を減らすことができる。共通部品として使用できるターボチャージャーとインタークーラーが決まっている以上、それに合わせてエンジン諸元を決め燃焼効率と耐久性のバランスのいいエンジンを造ることが大事だそうです。
また、昨シーズンを振り返るとエンジン交換後のチェックの際内部部品が破損している箇所もあり、2019年は信頼性に重点を置いて開発していると話していました。余談ですが、エキマニ形状も重要で現在も新しい仕様を試しているといいます。集合部などは3Dプリンターで造っちゃうらしいですよ。
話がだいぶ難しくなってきましたが、最後にパイピングの密閉についてお聞きしました。基本的にはスーパーフォーミュラと同じエアクリーナーを使用しホースバンドで密閉しているとのこと。
過去にホース内部への異物の侵入はなく、タービンブレードへのダメージは皆無だそうです。この辺はFR車両よりエンジンルームに多少の余裕があるために大きめのエアクリーナーが使用できることと、吸入口が車両フロント側に設置されていない点なども有利に働いていると思われます。
写真はスーパーフォーミュラSF19ですが、画面中央下の丸い物体がエアクリーナー、その奥にタービンがあります。
ちなみにホンダ勢はパイピングを固定する際、ウィギンスと呼ばれるバンドを使用していると思われます。上の写真でもエアクリーナーの奥にちょっとだけ見えています。
《GT500 ターボチャージャー編》お楽しみ頂けましたでしょうか。
共通部品とはいえ、普段あまり語られることはありませんでしたが掘り下げて行くとやはり深いものがありました。同じ部品とはいえ、各メーカー、ターボチャージャーの使用に関する考え方はさまざまなようです。ドライバビリティ優先なのか、耐久性優先なのか、はたまた馬力なのか。年間使用エンジン数2基が故のも苦労もあると思われます。
今回取材できなかったレクサス勢を含め、今後もターボチャージャーについては取材をしていきたいと思います。みなさまもGT500を見た際にはターボチャージャーに思いを馳せてみてください。そして、砂埃の中を走るGT500を見たらターボチャージャーを心配してあげてください。そのうえで、本ブログを読み返して頂ければ幸いです。きっとレースがもっと楽しいものになると思います。
みなさま、本ブログに最後までお付き合い頂き誠に有難うございました。また本ブログ執筆にあたり取材を受けて下さった各メーカー御担当者様、タービン撮影に御協力頂きましたニスモ様、ホンダ様に加え、株式会社M-TEC様にもこの場を借りまして御礼申し上げます。
それでは最後はセパンの美しい夕日と共にお別れしたいと思います。
もう脳内では金曜ロードショーのオープニング、トランペットの音色が流れています。そしてタイトルバックにはあの白い文字で……

