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スーパーGT ニュース

投稿日: 2020.11.15 14:59
更新日: 2020.11.15 15:01

HOPPY team TSUCHIYA 2020スーパーGT第7戦もてぎ レースレポート

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スーパーGT | HOPPY team TSUCHIYA 2020スーパーGT第7戦もてぎ レースレポート

HOPPY team TSUCHIYA
レース結果報告書
2020 SUPER GT Rd.7
ツインリンクもてぎ

■日時 2020年11月7〜8日
■車両名 HOPPY Porsche
■場所 ツインリンクもてぎ
■ゼッケン 25
■監督 土屋武士
■ドライバー 松井孝允/佐藤公哉
■チーム HOPPY team TSUCHIYA
■リザルト 予選4位/決勝6位

「鈴鹿からちょっとアジャストしただけですね。そこまでにみつけてきたアイテムで対処しているだけで新しいことは何もしていません。GT3でできることが限られているなかで言うと、ちょっと出尽くした感があって、あとはそのなかでの組み合わせとアジャストで合わせ込んでいく作業です」

「午前中も持ち込みでセットアップは悪くなかったので、ほとんどいじっていなくて、タイヤ評価が中心でした。決勝に向けてロングランでの確認をして……」

 以上、木野竜之介データエンジニアの公式練習走行後のコメントでした。申し遅れました。ボクはホピ輔(本名HOPPY Porsche)です。今回もボクがHOPPY チームつちやの戦いをレポートします。スーパーGT第7戦もてぎは、11月7~8日に行われました。

 冒頭の木野さんのコメント、なんかフツーのチームのフツーのエンジニアのコメントみたいですね。フツーで何がいけないのか? 突っ込まれそうですけど、これまでは公式練習だけじゃなくて、予選に向けてもウォームアップでもいろいろセットアップを試したり、それでも足らなくてスポーツ走行までしていろいろやってきたのに、もうそうして探る余地がボクにないらしいんです。

 監督兼エンジニアの土屋武士さんからしても、木野さんからしても、もう新しい発見はなくて“打ち止め”の感があるみたいなのです。「もうあまり面白くないですね。フッフッ」と木野さん。フツーのエンジニアはクルマが把握でできると喜ぶものですけど、この人たちは逆みたいです。それに、そう言われると、なんかボクが見限られた感じもしていやだな……。

 それでも速くて長いコーナーがないツインリンクもてぎは開催サーキットのなかでボクが最も得意とするところ。松井孝允くんと佐藤公哉くんといっしょに予選はがんばりました。Q1は孝允くんが担当して1分47秒141のタイムでBグループ4番手となりQ2進出を決め、Q2は公哉くんが担当して1分46秒801のタイムで4位でした。

「爆発的な速さはあんまりポルシェというクルマに求めていないですし、タイヤも予選のためだけに選んでいないので4番手は悪くないです」(木野データエンジニア)。とても冷静なコメントありがとうございます。

「決勝はポールのスバルが逃げてしまうでしょうが、そこから後ろが渋滞になってしまうのか、ウチがうまく抜けて前にいけるか……。あるいは直線が速くないから抜かれていく展開もあるでしょう」

2020年スーパーGT第7戦もてぎ HOPPY Porsche(松井孝允/佐藤公哉)
2020年スーパーGT第7戦もてぎ HOPPY Porsche(松井孝允/佐藤公哉)

 全く違う視点で予選結果をみていたのが武士さんです。

「ドライバーふたりも落ち着いて取り組めているし、やってきたことが実を結んできている。でも(第6戦)鈴鹿から何も変えていないのに、鈴鹿が20番手で今回4番手。あまりにもBoP(性能調整)に支配されているところは何とか変えていかないとダメかなと感じている。去年までマザーシャシーをやって、今年FIA-GT3をやったからこそみえてきたことがあるかな」。それ、このレースのことじゃないよね。規則の話でしょ!? 難しい話は置いて先に進みましょう。

 スタートは今回も公哉くんが担当しました。「展開次第では片側2輪交換の戦略もあるよ」とレース前に武士監督からは言われていました。スタート時の気温22度、路面温度は27度。この時期としてはとても暖かいレース観戦日和です。

 でも、ボクには、ボクというよりボクたちが選んでいたタイヤにはちょっと暖か過ぎた。タイヤがグニュグニュと動いてグリップ感がありません。特にフロントがきつい。ボクの燃料タンクは前にあって120リッターだから、だいたい90kgくらいのガソリンを積んで走り出します。けっこうこれが効くんです。

 オープニングラップで360号車に抜かれて、2周目に56号車に抜かれて、7周目に4号車、8周目55号車、9周目18号車と次々抜かれて8番手に。「もうムリです!」公哉くんが無線で訴えましたが、その後くらいから、燃料が軽くなってきたのと、少し陽がかげって涼しくなってきたことでタイヤの状態が安定。抜かれた18号車との距離を詰めていくこともできました。

 タイヤが想定より厳しいので片側2輪交換の選択肢はこの時点でなく、バックアップの硬めのタイヤを後半スティントに使うか、前半と同じタイヤでいくかの選択です。前回の鈴鹿同様にセーフティカー(SC)が入るリスクを考えると、規定周回数のミニマムで入りたいところですが、この場合には燃料タンクにガソリンが残っている状態でチェッカーまでに必要なガソリンを足すことになります。

 満タンで重いときが苦しいから、前半の同じタイヤを使うのであれば、この作戦は得策ではありません。ポジションよりもコース上でのペースを優先して、前半と同じタイヤを選択。その上で、できるだけ前半スティントと後半スティントを均等することを武士監督は狙います。そう判断した矢先に、レースの1/3が過ぎた規定周回数あたりでSCが導入されました。

 こうなるとこれに合わせて動くしかありません。第3戦鈴鹿でいち早く採り入れた作戦を今回も実行しました。SC中のルーティンピットは禁止ですが、ピットオープン後はドライバー交代以外の作業ができます。公哉くんがピットインしてタイヤを4輪交換。SC中にしっかりタイヤを温めて、リスタートの翌周の27周目にピットインして給油と孝允くんへのドライバーをチェンジしました。

 SC前にピットインしてポジションを上げたクルマは前に2台しかおらず6番手に浮上。さらにペナルティを受けた車両がおり5番手へ。この頃にはかなり陽も傾き気温が下がってコンディションとしては合っているはずですが、燃料が軽くなればなったで、タイヤにタイヤカスが付着するピックアップの症状がひどくなってきました。

 リヤはトラクションをかけてスライドさせればタイヤカスを飛ばすことができるのですが、フロントはステアリングをこじってもとることができません。前半の公哉くんとはまた違う問題で孝允くんも苦しみました。そんな状況で背後から迫ってきたのは11号車。圧倒的なストレートスピードを活かして42周目に抜かれてしまいました。

2020年スーパーGT第7戦もてぎ HOPPY Porsche(松井孝允/佐藤公哉)
2020年スーパーGT第7戦もてぎ HOPPY Porsche(松井孝允/佐藤公哉)

 6番手に落ちた孝允くんに武士監督は無線で呼びかけました。「後ろの360じゃなくて、その後ろの55と戦っているから」。ストレートが違い過ぎる相手に対して防御するためにタイヤを使っても無意味だから、その後ろのクルマと戦えるようにタイヤの温存しようと指示したのです。ムダなバトルを避ければペースを乱すこともありません。360号車を前に出して孝允くんは冷静にラップタイムを刻みました。

 55号車に背後を脅かされることもなく7位でゴール。上位にタイム加算のペナルティもあり6位入賞できました。今季最高位でうれしいという感じではないですけど、ちゃんとやるべきことをやってちゃんと結果を出せた達成感があります。

「そうだね。同じもてぎの第4戦の後は、これからどうしよう……と課題だらけだったからね。それに比べたらものすごい進歩。鈴鹿に続いてやるべきことがちゃんと普通にできた。ドライバーふたりの成長もすごいと思う。公哉も淡々と仕事をこなしてくれたし、孝允も苦しい状況でも落ち着いて対処してくれた。今の成長したチームで第4戦もてぎを戦えたら間違いなく表彰台にいけていると思う」(武士監督)。

 前半タイヤがすごく厳しかったけど、レンジ外していたよね。

「それは結果論。タイヤ選択の時点で前にいくために勝負したのは事実だよ。クルマが重くて暑い状態だと苦しいのは仕方ない。でもガソリンが軽くなって陽がかげるとペースが安定してきたから、硬いタイヤに換える予定を変更したんだ。早く入れたなら硬いタイヤを選択しただろうけど、前半と同じタイヤを使うならば、クルマが重い時間を長くしたくない。悩んだけどもSCが出ない方に賭けた」(武士監督)

 でもSCが出ても順位がそんなに下がらなかったね。

「そこは少しラッキーもあったかな。あとはSC中のタイヤ交換だよね。外乱に対して最小限のロスで送り出せて、他のチームがロスしてくれたおかげであのポジションになった」(武士監督)。

 ボク的にはそういう作戦じゃなくて、コース上でどんどん抜いていくレースがしたいな。

「ホピ輔自身のバランスはとれたし、やるべきことはちゃんとできている。地盤を固めて強くなってきているんだから、慌てず騒がず取り組み続ければ結果はついてくるよ」(武士監督)。

 いよいよ次は最終戦となる11月28~29日第8戦富士です。引き続き応援よろしくお願いします。

2020年スーパーGT第7戦もてぎ HOPPY Porsche(松井孝允/佐藤公哉)
2020年スーパーGT第7戦もてぎ HOPPY Porsche(松井孝允/佐藤公哉)

松井孝允のコメント

「自分のスティントの序盤はよかったのですが、グリップが少し落ちてきてからピックアップに苦しめられました。そうしたなかでもピットから自分が争っているクルマを教えてくれていたので、落ち着いてレースができました。作戦としても成功だったと思います。レース序盤の苦しいところを公哉選手ががんばってくれましたし、今回の結果はチームと公哉選手のおかげです」

「前回のもてぎと比べると、すごくクルマが進化して乗りやすくなりました。さらにタイヤを含めてもっとよくするために、チームといっしょに努力していきます。クルマの特性からすると富士は得意ではありませんが、仕上がってきているので、今シーズンの集大成となるようなレースを最終戦で展開したいです」

佐藤公哉のコメント

「気温が上がったことで、タイヤの内圧が上がりグリップが落ちて、エンジントルクも気温の影響か少し落ちたのが感じられて、がんばって抑えていたのですが、立て続けにやられてしまったのが悔しかったです。もう少し抑えられたのではないかと思う反面、接触のリスクも避けなければいけないので難しい判断でした。しかし、陽がかげってからは、フィーリングが回復して追い上げることができました」

「チームがいい作戦を採ってくれて、前に出られましたし、その後も孝允さんがしっかり抑えてくれたので、今回も鈴鹿に引き続き、チームと孝允さんに感謝しています。今回、思い描いたような週末にはなりませんでしたが、しっかり走り切ることができました。次の最終戦はさらに充実した週末にしたいと思います」

土屋武士監督コメント

「前回の鈴鹿戦と同様、チームとして全員でやるべきことを落ち着いてやり切れたと思います。それがあってこその今季最高位だったと思いますし、思いのほか気温路温が高かったことや、SCなどの外乱により、うちにとっては厳しい環境だったなかでの6位は誇りに思います」

「ただ本音を言うと、やり切れた達成感と同時に、目の前に立ちはだかる壁に悔しさと虚無感を感じたのも事実です。応援して下さるみなさまが6位という結果では満足して頂けないことは承知していますし、我々は常に成長を続け、チャレンジしていきながら優勝、チャンピオンを目指すことから逃げずに戦い続けています。その戦うステージに壁があるなら乗り越えるまで。これまでも大きな壁は何度も立ちはだかってきましたが、今回の壁も乗り越えていき、更に自分たちを成長させていきたいと思います」

「次戦は最終戦となりますが、自分たちの力を出し切って、またやり切ったと思えるレースをして締めくくりたいと思います。応援よろしくお願い致します!」

2020年スーパーGT第7戦もてぎ HOPPY team TSUCHIYAのメンバー
2020年スーパーGT第7戦もてぎ HOPPY team TSUCHIYAのメンバー


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