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スーパーGT ニュース

投稿日: 2020.12.12 12:00
更新日: 2020.12.11 19:40

「レーキアングル」を採用したセットアップの難しさを抱えていた新型GRスープラ/GT500分析(トヨタ編)

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スーパーGT | 「レーキアングル」を採用したセットアップの難しさを抱えていた新型GRスープラ/GT500分析(トヨタ編)

 鈴鹿、もてぎを含め、限られた3つのサーキットで全8戦を争った異例の2020年。劇的な形で幕を閉じた最終戦富士を終え、改めて湯浅氏がシーズンを振り返る。

「皆さんが言われるとおり富士の直線はエンジンパワーも含めて有利だったんだろうな、と。ただ、コーナリング中にしっかりダウンフォースを出すような姿勢を保つ……という意味では、鈴鹿のハイレーキは良いのですが、ピタッとコーナリング姿勢を決めていく時間が短いもてぎなど、低速で回り込むコーナーが連続するコースだとブレーキング時にリヤが高い分だけわずかに車高が上がり安定性が下がる。想定していたとはいえ、その点は少し厳しい部分はありました」

 ドラッグ低減を狙う富士では相対的にレーキ角を減らし、ハイダウンフォースサーキットの鈴鹿ではレーキ角度を付けるのが基本的な運用。しかしストップ・アンド・ゴーのもてぎではその良い面が出にくかったのも事実だ。

 またエンジン開発の側からも、ドライバビリティが勝敗を左右するこのツインリンクもてぎ攻略が、シリーズの結末を左右した面がありそうだ。今季からエンジン開発責任者として職務に戻ったTRDの佐々木孝博氏は、シリーズのカレンダー構成が及ぼした影響に言及する。

「僕らエンジンサイドとしてはコースインからストレスのないこと、そこをこのスープラで取り入れるということを目標に開発を続けてきて、そこは最終戦富士を見ていてもしっかりできていたかなぁ、とは思います」

「逆に(本来、開幕戦だったはずの)岡山でエンジンのドラビリ特性を含めて課題を見つけておけば、もてぎに対する手は打てたと思う。今回は(前半戦が)富士・富士・鈴鹿・もてぎになってしまったので、やっぱりもてぎで(課題を)知ることになってしまった。そこを初めに知ることができていれば良かったのにな……とは思います」

 シーズン最初のもてぎとなった第4戦は、悪天候が絡んだうえに成績に応じたウエイトハンデの搭載で、すでに燃料リストリクター制限領域に突入した車両もいたことなどから、本来のドライバビリティ評価が“マスクされた”ような状況となり、その影響は2基目を搭載していた第7戦にまで響いた。(ホンダ勢がトップ5を独占)

 変則カレンダーやテスト日数の不足など環境条件はライバルも同じだが、トヨタ陣営としては新型GRスープラの個性把握や、新規則に対応した新たなセットアップ運用の面でも難しさを抱えたシーズンとなった。

「今季はとにかくテストがなかったですし、新車の準備をしっかりしなくてはと思いつつ、なかなか3年使ったクルマ(LC500)のいろいろな部分の感度と比べると……。エンジニアさんも身に染み付いてますから。僕らが開発車でいろいろやった数値を伝えても、やっぱりエンジニアさんとドライバーさんが肌で感じてもらわないと、なかなか難しい」

「そういったところで、シーズン中は新車なりの難しさはあった。『ちょっとコレをやってみたいんだけど』とか『こっちのほうが速いと思うんだけど』というエンジニアさんのデータも採らせてもらったりして、僕らも経験値を積ませてもらいました」と湯浅氏。

 2021年に向けては引き続き「1周走ってどれだけタイムゲインがある空力が有利か」のコンセプトを踏襲しながら、レーキアングルの付け方と車両セッティングのバランスを取り直すなど、GRスープラのポテンシャルを引き出すための地道な作業の積み重ねが求められる。

「今季は富士が多かったのでそこ(レスドラッグと最高速)が本当に目立ちましたけど(笑)、たとえば今後の考え方として、いま持っているダウンフォースとドラッグのレシオを(DFを増やす方向に)変えることも考えられる」

「来年の富士はふたつ予定されていますが、これがもし3つになる……ということがあれば、逆に『もっとドラッグを減らす』という方向の考え方もあるでしょうね」とは湯浅氏。

 新型ベースモデルの投入、レーキアングル採用、異例のカレンダーとエンジン開発など、初モノ尽くしの苦労を経て、GT500の王座奪還を目指した戦いはすでに最終戦翌日から始まっている。

KeePer TOM'S GR Supra(平川亮/山下健太)
KeePer TOM’S GR Supra(平川亮/山下健太)


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