更新日: 2023.06.13 00:53
横浜ゴム 2023スーパーGT第3戦鈴鹿 レースレポート
【スーパーGT第3戦/鈴鹿サーキット】
アクシデントで赤旗終了となった鈴鹿ラウンド、セカンドグリッドからスタートした
『WedsSport ADVAN GR Supra』が7年ぶりの勝利を飾った!!
6月3日から4日にかけて、スーパーGTの第3戦が三重県の鈴鹿サーキットで開催。レースウィークの週半ばには台風2号が日本列島に接近し、各チームが搬入、設営を進める2日(金)は豪雨と強風に見舞われたが、一夜明けた予選日の3日(土)は前日の荒天が嘘のような青空が広がった。日差しもまぶしく、午前中から気温・路面温度ともに急上昇するなか、フリー走行が行われた。
GT500クラスのコースレコードは昨年『WedsSport ADVAN GR Supra』の国本雄資選手がマークした1分44秒112。フリー走行はそのタイムには及ばなかったが、ここまでの2戦、速さを見せつつも悔しい結果が続いている『リアライズコーポレーション ADVAN Z』の佐々木大樹選手がトップタイムをマークした。
併催レースでセーフティカー(SC)が出たことが影響し、スーパーGTの公式予選は予定より20分遅れの15時25分にスタートした。まずはGT300クラスのQ1A組のセッションだが、この組には開幕戦で優勝した『UPGARAGE NSX GT3』をはじめ、『グッドスマイル初音ミク AMG』、『PACIFIC ぶいすぽっ NAC AMG』など6台のヨコハマユーザーが出走。
気温は25度、路面温度は38度を記録し、非常に強い風が吹くなか、小林崇志選手がステアリングを握った『UPGARAGE NSX GT3』が7番手タイムでQ1を突破した。
続くB組には、現在ランキング2位につける『リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R』、同6位の『HACHI-ICHI GR Supra GT』など、10台のヨコハマユーザーが登場。
トップタイムを記録したのは『ANEST IWATA Racing RC F GT3』のイゴール・オオムラ・フラガ選手で、1000分の56秒差で『リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R』のジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手が続き、『HOPPY Schatz GR Supra GT』、『Bamboo Airways ランボルギーニ GT3』、『JLOC ランボルギーニ GT3』、『HACHI-ICHI GR Supra GT』の計6台がQ2に駒を進めた。
そして予選では最終的に、『HOPPY Schatz GR Supra GT』が5番手でヨコハマタイヤ勢の最上位となった。
GT500クラスの予選Q1は、『WedsSport ADVAN GR Supra』は阪口晴南選手が担当。昨年コースレコードを更新してポールポジションを獲得しているチームには大きな期待がかかったが、阪口選手はその期待に見事にこたえる走りでレコードタイムに0.2秒差まで迫るトップタイムをマークした。
佐々木大樹選手がステアリングを握った『リアライズコーポレーション ADVAN Z』も100分の7秒差で2位タイムをたたき出し、ヨコハマタイヤユーザーはQ1でトップ2を独占。
Q2ではレコードホルダー国本雄資選手の走りに大きな注目が集まったが、「ヘアピンとシケインでミスをしてしまって…」と悔しい3番手タイム。それを上回ったのが「リアライズコーポレーション ADVAN Z』の平手晃平選手だった。
後半セクターで速さを発揮した『リアライズコーポレーション ADVAN Z』は堂々のトップタイムをマーク。チームとしてGT500クラスで3度目、そして平手選手自身にとっては2016年の最終戦もてぎ大会以来、2度目のポールポジション獲得となった。
しかし、予選後の車検結果を受けてタイムはすべて抹消されることに。これにより、『WedsSport ADVAN GR Supra』が予選2位に繰り上がりとなり、決勝レースをセカンドグリッドからスタートすることとなった。『リアライズコーポレーション ADVAN Z』は速さを見せていただけに悔しい結果となったが、最後尾からの追い上げを誓った。
決勝日の4日(日)も午前中から強い日差しが降り注ぎ、450kmの決勝レースはドライコンディションでスタートした。
最後尾グリッドから平手選手がスタートドライバーを務める『リアライズコーポレーション ADVAN Z』は、オープニングラップで1台をかわしスタート早々にポジションアップ。
一方、国本選手がスタートドライバーの『WedsSport ADVAN GR Supra』は2番手からポジションは変わらないものの、トップの車両を射程圏内に入れながら周回を進めていった。
GT300クラスの車両がトラブルでコース上にストップしてしまったことから、レースは序盤の8周目にフルコースイエロー(FCY)が掲示され、すぐにSCランとなる。
各車のギャップが一気に縮まり、13周目にリスタート。再び数台の集団での争いとなる中、『リアライズコーポレーション ADVAN Z』は16周目、18周目、19周目とライバルたちをとらえてじわじわとポジションアップしていった。
『WedsSport ADVAN GR Supra』は、2番手ポジションをキープしたまま国本選手が周回を重ね、26周を終えるところでピットイン。残り50周近いロングスティントを阪口選手に託す作戦だ。
暫定7番手でコースに復帰し、前にいる6台はこの後でピットインするため、1度目のピット作業を終えた組の中ではトップで2スティント目に入る。ターゲットは先頭を走る車両で、相手がピットに入っている間に逆転するためにはアウトラップからハイペースで走らなければならない。
阪口選手の駆る『WedsSport ADVAN GR Supra』は、そのアウトラップで目覚ましい速さを発揮。相手はそのアウトラップを確認したのか、29周を終えるところでピットに向かい、『WedsSport ADVAN GR Supra』と同様にガソリン補給とタイヤ交換、ドライバー交代を行う。
しかし、ピットロードをようやく抜けてコースに復帰した時には、すでに『WedsSport ADVAN GR Supra』は1コーナーを通過した後。チームのピット作業とアウトラップの速さで逆転し、『WedsSport ADVAN GR Supra』は事実上のトップに躍り出ることに成功した。
2度目のピットインは46周終了時。ここでも見た目上の順位は下げたものの、実質のトップを守り抜いた『WedsSport ADVAN GR Supra』は、ライバルたちが次々とピットへ向かう中で徐々にポジションを取り戻していく。
55周目に入るところで2番手に戻り、いよいよ最後の1台のピットインを待つだけとなった59周目。GT500車両とGT300車両が絡む大きなクラッシュが130Rの先で発生した。
レースはすぐにSCが導入されると、まもなく赤旗が掲示され中断。車両回収が進められるも、タイヤバリアやガードレールなどの損傷も激しく、レースの続行は難しいとの判断が下り、先頭車両が60 周目を周回中にレースは終了することとなった。
『WedsSport ADVAN GR Supra』は暫定2番手で赤旗終了となり、その後の暫定表彰式で『WedsSport ADVAN GR Supra』は2番手とされていた。
しかし、先頭を走っていた車両は義務付けられている2回のピットインと給油を行っておらず、この分の時間が結果に加算されて順位を後退。正式結果では『WedsSport ADVAN GR Supra』が優勝となり、2016年のタイ戦以来7年ぶりとなる勝利を掴むことに成功した。
『リアライズコーポレーション ADVAN Z』にとっては最後尾からの追い上げ中の不運な赤旗終了ではあったが、見事ポイント圏内の8位まで挽回し、予選共々ポテンシャルの高さを証明した。
GT300クラスは54周終了時点で順位確定。予選9位からスタートした『リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R』は徐々に追い上げていたところだった。
上位陣とは10秒以上のギャップは残っていたものの、「ペースはとても良く、上位陣と比べてもラップタイムが1秒以上速かったので、あのままレースが続いていれば表彰台はもちろん、もしかしたら優勝まで届いたかもしれません」と、前半スティントを担当した名取鉄平選手は悔しがるが、前戦富士大会で優勝し66kgというサクセスウェイトを積みながらの上位入賞。シリーズランキングでも貴重なポイントを積み重ね、ランキング1位に浮上した。
■国本雄資選手(WedsSport ADVAN GR Supra)
【今回の成績:GT500クラス優勝】
「予選からタイヤのパフォーマンスが高く、阪口選手がQ1で素晴らしい走りを見せてくれたので、僕自身も大きく自信をもってQ2に挑みました。それだけに自分のミスでタイムを落としてしまったのは悔しかったです」
「レースでは1周目から力強いレースができましたし、その後のペースも安定していました。特にアウトラップがとても良くて、相手を逆転することができて本当に良かったし、みんなの頑張りがこうやって実を結んだことは本当にうれしいです。(暫定結果時点でのコメント)」
■阪口晴南 選手(WedsSport ADVAN GR Supra)
【今回の成績:GT500クラス優勝】
「富士では同じようにフロントローからスタートして、非常に悔しい思いをしましたが、今回はスタートから良かったと思うし、僕のスティントも悪くないペースで走れました。途中、戦略の違いで見た目の順位を下げることはありましたが、レースをコントロールできていたと思います」
「ヨコハマタイヤの進化に対して、僕たちも合わせていくことができました。他車に対して、まだ課題になるところはあると思うので、さらに進化していけたらと思います。(暫定結果時点でのコメント)」
■佐々木大樹選手(リアライズコーポレーション ADVAN Z)
【今回の成績:GT500クラス8位】
「セカンドスティントからタイヤを変えましたが、思っていたような動きではなくペースを上げることができませんでした。やはり予選の順位はとても重要で、15位スタートというのは決して楽ではありません。そういう意味では、今週は自分たちに流れがなかったのだと思います。ただ速さはありましたし、しっかりとデータも獲れたので、これを次戦に生かしたいです」
■平手晃平選手(リアライズコーポレーション ADVAN Z)
【今回の成績:GT500クラス8位】
「15位と後方からのスタートになりましたが、そこから8位までポジションを上げてゴールできたことで、タイヤはもちろんのことチームとしてのポテンシャルが高い位置にあることを再確認しました」
「だからこそ、ものすごく悔しいですし残念な結果ですが、ヨコハマタイヤとして弱点とみられていた部分が良くなってきていることも分かったことが大きな収穫ですし、次戦以降、熱い時期のレースに対してもすごくポジティブに挑んで行けると思っています」
■名取鉄平選手(リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R)
【今回の成績:GT300クラス4位】
「僕たちとタイヤメーカーが違う上位陣が、思ったよりもペースが上がっていなくて前方が詰まっていたので、戦略を変えてスプラッシュ給油をしてみたのですが、あまりメリットはありませんでした」
「その後は通常通りというか、タイヤ交換をしてからは周りよりも1~2秒速いペースで走れるところもあったので、あのままレースが続いていれば表彰台、あるいは富士からの2連勝も不可能ではなかったと思います。残念な気持ちもありますが、タイヤのパフォーマンスがとても良かったので、次につながるレースにもなったと思います」
■白石貴之[横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST 開発部 技術開発 1グループ・リーダー]
「19号車の優勝に際し、レーシングプロジェクトバンドウ、並びに株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメントの方々には厚く御礼申し上げます」
「今回の決勝の勝因としては、昨年から取り組んでいたタイヤのウォームアップ性の向上という部分も大きな要素ではありますが、何より19号車の決勝レースに向けたセットアップの向上という部分が非常に大きいと考えています」
「24号車はもともとヨコハマのタイヤをいかすセッティングに取り組んでいただいていて、それは今年の早い時点から見えていたかな、というところがありましたが、19号車はなかなかそこの解決策が見えず、うちとしてもタイヤ開発の中で予選と決勝の両立を見据えたタイヤを提供できていませんでした」
「ただ、今回そこが見えたことで、この先も引き続き期待が持てると思っており、7月に予定しているテストもその点を更に詰めていくことをメインテーマとしてメニューを組んでいく予定です。次戦以降ではチェッカーフラッグをトップで受けられるようにしていきたいですね」
「GT300クラスに関しては、予選では他社さんに上位を独占されてしまいました。我々が想定していた予選のタイムよりも速かったので、決勝もあの感じで行かれると難しいなと思いましたが、我々はもともと決勝レース450kmという距離のなかで全体的にレースペースを出すような形を考えていましたので、結果的にはある程度想定の範囲内だったといえると思っています。そのなかで、56号車はやはりチームの総合力という部分でポジションを上げてきていただきました」
「他にも楽しみにしていたチームはいくつかあり、今回はGT300では残念ながら結果というところまでは届きませんでしたが、そこは次戦以降、夏の富士大会や鈴鹿大会で実を結んでいただけるのではと思っています」
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