2023 AUTOBACS SUPER GT ROUND 5
開催地:鈴鹿サーキット(三重県)/5.807km
8月26日(予選)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:1万2500人
8月27日(決勝)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:2万500人

永井宏明選手のホームコース鈴鹿で快進撃に期待も、終盤のマシントラブルで不完全燃焼……

 いよいよスーパーGTは、後半戦突入となる第5戦を迎える。舞台である鈴鹿サーキットは、2本のストレートを低速から高速まで多彩なコーナーで結び、ドライバーには幅のあるドライビングを、そしてマシンにはシビアなセッティングを求めるサーキットだ。

 今年もaprは2台体制で臨み、トヨタGR86を30号車として走らせる。投入から2シーズン目となるapr GR86 GTは、ドライバーに永井宏明選手、織戸学選手、上村優太選手、小河諒選手の4名を登録。前回同様、450kmレースとあって、今回は永井選手と織戸選手、そして上村選手の3人で戦う。使用するタイヤはヨコハマだ。

 富士スピードウェイの第4戦は予選までセッティングに苦しみ、20番手からのスタートとなったが、目まぐるしい天候変化のなか、13位で決勝をフィニッシュ。ここまでの4戦すべて、決勝では順位を上げている。強い車であるのは、もう間違いない。「次につながるレースだった」と織戸選手。あとは予選だけ! まだ果たせずにいるQ1突破が可能となれば、きっと満足の結果が残るはず。

 サクセスウエイトがトップ2は上限の100kgにも達し、ライバルの多くが足かせを強いられるなか、まだ6kgでしかないことを前向きにとらえ、何より鈴鹿は永井選手と上村選手のホームコース。大応援団の期待に応える、熱い走りに期待したい。

公式練習8月26日(土)9:15〜10:50

 第3戦から第4戦までは2カ月も空いたのに対し、第4戦から第6戦までは3週間おき。まさに過酷な3連戦といった印象だ。8月も末というのに、相変わらず暑さが厳しいだけに今回こそセットアップ、タイヤチョイスは絶対に外せない。公式練習開始時の気温は33度で、路面温度は39度。ただし、これは想定どおりだった。

 今回もapr GR86 GTは、織戸選手から走行を開始。まずは予選セットから試し始める。セッション開始と同時にコースイン、一度ピットストップを挟んでセットを改めた後、まずは2分1秒122を織戸選手は記す。その後は決勝に向けて大幅なセット変更を行い、1時間近く経過したところで永井選手の番に。2分3秒106をベストにコンスタントに周回を重ねていた。

 ラスト10分のGT300クラス専有走行では上村選手も走行し、2分1秒405をマーク。公式練習の最終的な順位は18番手ながら、セットに専念し、アタックモードはないこともあり、まだまだ伸びしろはありそうだ。この後に行われたFCY(フルコースイエロー)テストは上村選手、永井選手、織戸選手の順で走行し、準備を万端としていた。

公式予選Q1 8月26日(土)15:53〜16:03

 今回はB組でQ1に臨むapr GR86 GTは、最初のアタックを開幕戦以来となる織戸選手が担当した。気温は33度、路面温度は52度と公式練習に増して高まっていた中、ウォーミングアップは1周に留め、計測2周目からさっそくアタックにかかる。

 まずは2分0秒320をマークして、その時点での3番手につけるも、ライバルも続々とタイムを上げてくる。もう1周アタックした織戸選手ではあったが、2分0秒672と逆にタイムダウン。その間に9番手に沈み、ギリギリの順位で敗退。Q2に控えていた上村選手につなぐことはできなかった。

永井宏明選手

「いい流れで鈴鹿に入ったんですけど、公式練習と予選で高温のサーキットに合わせきることができず、うまくまとめられませんでした。今回も追い上げて、ポイント圏内でフィニッシュできるように頑張りたいと思います」

織戸学選手

「硬めのタイヤで行ったんだけど、ちょっと行き切れなかった。特に大きく悪いこともなかったんだけど、なんとかQ2に繋げたかったんですけど、もう一歩届かなかったです。もうちょっと行き切りたかったのが悔やまれ残念です。決勝に向けては、セットは決まってるので、とにかく行くしかないので、頑張ります」

上村優太選手

「それほど多く走ったわけではありませんが、前回のレースも、このクルマで走っていますから、不安はありません。レースは全力で頑張ります」

金曽裕人監督

「作戦的にかなり硬めのタイヤを選んで、ロングランで勝負できるようにと、灼熱の鈴鹿想定のタイヤですので一発は出にくいですが決勝には自信あり。入賞は見えてます。だから、Q1は通りたかったですが、あと5度路面温度が高ければ今日の予選は大きく変わったかと思います。ロングランには自信があるので、明日の作戦を見ていてください。乞うご期待です!」

決勝レース(77周) 8月27日(日)14:45〜

 前回は気まぐれな天気に翻弄され続けたが、今回は昨日の夜半に強い雨に見舞われたが、どうやらそれまでのようで、この後の雨の心配は無用のよう。まさに暑さとの戦いとなった。なお、今回も給油を伴う2回のピットストップが義務づけられるも、前回同様スタートから5周目まではピットに戻ることできない。鈴鹿の5周といえば、富士の7〜8周にも相当するから、早々と1回目を済ませて、残り1回をロングスティントでつなぐチームも現れそうだ。

 スタート進行の開始と同時に行われた20分のウォームアップは、上村選手から走行開始。肩慣らしを行って、すぐピットイン。残り時間はすべて永井選手の走行に充てられた。2分3秒761で17番手ながら、一発狙いではないから、決勝に向けては期待がより高まった。

 今回も、その永井選手からのスタートに。三重県警による白バイ、パトカーによるパレードランから始まり、1周のフォーメイションラップの後、いよいよグリーンシグナルが点灯。18番手からスタートを切ったapr GR86 GTはふたつポジションを落としはしたが、少しも前から遅れを取らず。まずは様子見から戦いを開始する。

 5周目に入ると、やはり早くも1回目のピットストップを行うチームが現れる。これが永井選手にとって突破口にもなった。前を行く車は抜けずとも、同じペースで走り続けることで、トップとの差の広がりを最小限に留められたからだ。

 10番手まで上がった16周目に、永井選手は織戸選手にバトンをパス。これで2回目のピットストップに対して、幅を広げることができた。タイヤも交換したことで、いったんは順位を大きく落とすも、織戸選手なら十分リカバリーは可能だと思われた。最初のピットをほぼ均等割としたチームが入るたび、その前にも出ていたから順調そのもの。しかし、実際にはそうではなかった。

 織戸選手に変わってからデフが不調を来し、抜かれはしないが、前に出ることができなくなっていたのだ。37周目にapr GR86 GTは上村選手にスイッチ。全車2回目のピットを済ますと16番手に。57周目にはひとつ順位を落とす。症状はさらに悪化していたのだ。本調子ではないマシンを、上村選手は必死になだめすかして走行。なんとか70周を走破し、無事チェッカーを受けることはでき、今回もひとつだけとはいえ、順位を上げて17位でフィニッシュ。

 それでも執念は見せた。シリーズ第6戦は9月16〜17日に、スポーツランドSUGOで開催される。次回は300kmレースとして競われ、ここまでがサクセスウエイトを積み続ける。apr GR86 GTはまだ9kg。アップダウンに富んだテクニカルコースでは、軽さが何よりもの武器となる。そろそろポイント荒稼ぎの予感しかない。

永井宏明選手

「いいペースで行けるかなと思ったんですが、途中でデフにトラブルが出ちゃって、いいペースを刻められなくなっちゃったんです。僕の時までは良かったんですが、織戸さんのときに出始めちゃったので、もったいなかったです。車は良くなっていて、決勝ペースも良かったので残念です。地元レースだったから、悔しいものがありますね。そのあたりもう一回確認して、次はもっといい結果が出るように頑張りたいと思います」

織戸学選手

「僕の終盤からデフが緩んできちゃったのかな、そんな状況で前に進まなくて。僕の時からそういう症状があって、上村選手のときにはさらにひどくなっちゃった。スタートから永井選手が頑張ってくれてかなり速いタイムだったから、もうちょっと僕のときにも順位を上げていけるかと思ったんだけど、全然前に進まずダメだった。残念。課題は、やっぱり練習からもうちょっと行かないと、予選は全然ダメだね、悲しい……。次こそ!」

上村優太選手

「トラブルが出て、ペース上がらなかったです。ちょっと辛かったです。第7戦のオートポリスでも乗りますので、そのときに本当のパフォーマンスを見せます」

金曽裕人監督

「永井選手が着実に順位を上げてきてくれましたが、織戸選手の終盤からデフ周りで何かしらのトラブルが発生。そこからすごくコントロールしにくくなってしまったようです。『さぁ、ここからプッシュ!』という大切なところだったのに……佐橋エンジニアも決勝に合せた速いセットを決めてくれたのに……永井選手は3秒台でずっと走れていて、もう完全に他のトップ車両と変わらない走りができていました。だから、昨日の予選を敗退したのと、このトラブルが、やはり大きく響いてしまい残念でならない」

「トラブルに関しては、ファクトリーにて徹底的に原因を探り再発防止と対策を致します。これからは土曜日のQ1を意地でも通る! やはり、そうしないと戦略の幅も狭まりますし、無理な展開に自分たちで持ち込むようになってしまうので、そこは今回も大きな反省です。でも収穫は、永井選手と鈴鹿サーキットの相性が良いのもありますが、まだまだ速くなっていることを強く感じられたこと。織戸選手や上村選手より速いタイムを出していたのには正直、驚きでした。次のSUGOも、この速さは武器になりそうで非常に楽しみです」

2023スーパーGT第5戦鈴鹿 apr GR86 GT(永井宏明/織戸学/上村優太)
2023スーパーGT第5戦鈴鹿 apr GR86 GT(永井宏明/織戸学/上村優太)

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