FRスポーツセダンといえば、間違いなくBMWが王道。マークXはしかし、クラウンよりスポーティに振られているとはいえ、BMWのような強固で大きなサスペンションメンバーが与えられるわけではなく、高性能ながらスペースを食う大きなサイズのサスペンションが用意されるわけでもない。
それだけに、期待をせずにGRスポーツに乗れば、きっと驚く。スポット溶接を増し打ち、ブレースも入れるという、レーシングカーのような処置によって、ボディ剛性が段違いに向上している。
だから固めのサスペンションをとおして伝わる19インチタイヤの感触も神経質ではなく、吸収性が維持されていて乗り心地も悪くないのだ。
外観は『GRMN』とほとんど同じ。エアロパーツはトランクリッド上のスポイラーを見れば分かるように、うまくボディラインのなかに馴染ませている。
もちろん不満がないわけではない。“GR”のロゴ入りシートは形状は優れているものの、ヒップポイントが高過ぎる。86と同径のステアリングも悪くはないが、EPS(電動パワーステアリング)のマッチングが充分ではない。
回転フィールの良いV6エンジンやマナーに優れる印象の6速ATも、最新モデルと比較するといささか古さを感じさせる。
だが、そうした部分は小さなことだ。マークX GRスポーツは、軽快なFRスポーツセダンのイメージにふさわしい感触と動きを見せてくれるからだ。ノーマルのマークXの走りに不満を持っているオーナーには、ぜひGRスポーツを試乗することを勧めたい。
そして10年もの長いモデルライフを過ごしてきたこともあって、車両価格に割安感があるのもアピールポイントになる。
2.5リッターなら約380万円、3.5リッターでも約440万円というのは、このクラスのモデルとして、現代の基準では割安だ。たとえばライバルのニッサン・スカイラインでいえば、メルセデス・ベンツ製ながらゴロゴロして感触の悪い2リッターターボで約450万円にもなる。
ちなみに、「マークXのノーマルを買ってチューニングしたほうがいいんじゃないか」と考える人もいると思う。たしかにパーツは豊富にあり、しかも高くはない。自分好みに仕立てることもできるだろう。
しかし、土台となるボディの剛性は、GRスポーツでなければ得られないことを、最後にお伝えしておこう。
■トヨタ・マークX 350RDS GRスポーツ 主要諸元
| 車体 | |
|---|---|
| 車名型式 | DBA-GRX133-VLJBTT |
| 全長×全幅×全高 | 4795×1795×1420mm |
| ホイールベース | 2850mm |
| トレッド 前/後 | 1550/1550mm |
| 最低地上高 | 130mm |
| 車両重量 | 1550kg |
| 乗車定員 | 5名 |
| 駆動方式 | FR |
| トランスミッション | 6速AT |
| ステアリングギヤ形式 | パワーアシスト付ラック&ピニオン |
| サスペンション前/後 | ダブルウイッシュボーン/マルチリンク(GRスポーツ専用チューン) |
| ブレーキ 前/後 | ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク |
| タイヤサイズ | 235/40R19 |
| エンジン | |
| 型式 | 2GR-FSE |
| 形式 | V型6気筒DOHC |
| 排気量 | 3456cc |
| 内径×行程 | 94.0×83.0mm |
| 圧縮比 | 11.8 |
| 最高出力 | 234kW(318ps)/6400rpm |
| 最大トルク | 380Nm(38.7kgm)/4800rpm |
| 使用燃料 | 無鉛プレミアムガソリン |
| タンク容量 | 71リッター |
auto sport 2019年4月12日号 No.1503より転載
