一方、カーボンファイバー製バスタブに囲まれたインテリアでも、レーシングカーに典型的なスタイリング要素を活かしつつ、ドライバーとパッセンジャーがくつろげるドライビング環境が構築され、ほっそりと引き締まったダッシュボードは、内張りのなかに浮いているような配置に。

 ダッシュエリアとシートを明確に分離して、キャビンの横幅を広く見せる2層のデザインテーマにより、質感も含めラップアラウンド型の一体感を強調する効果がもたらされた。この固定式シートにより、ドライビングポジションの調整はペダルボックスを動かして行い、シートがリヤのトリムと完全につながりを持つことで視覚的に軽快な印象のコクピットに。前方には『SF90ストラダーレ』から再導入となった往年の“シフトゲート”も採用されている。

 注目のパワートレインには、究極のフロントエンジン・ベルリネッタである『812コンペティツィオーネ』のV型12気筒をベースに、吸排気レイアウトを見直してリヤミッドに搭載。これにより6.5リッターの排気量で65度のシリンダーバンク角を持つエンジンは、ベースのF140HBから新たに“F140HC”の呼称が与えられ、そのアウトプットもフェラーリ製の内燃機関史上最もパワフルな840PS(618kW/840cv)/9250rpmと、7250rpmで697Nmもの最大トルクを発生し、最高速340km/h、0-100km/h加速2.85秒という驚異的な数値を記録している。

 このエンジン重量と慣性の削減にも惜しみない努力が注がれ、スチールより40%軽量なチタン製コンロッドを採用し、ピストンにも異なる素材を活用。スライディング・フィンガーフォロワーやカムシャフト、そしてピストンピンなどにはF1由来のDLC(ダイナモンド・ライク・カーボン)コーティングも施され、可変ジオメトリー吸気ダクトなどと併せて実に9500rpmという最高回転数を許容する。

 そのほかにもブレーキキャリパーの制御を活用して制動力を発生させ、車両のヨーアングルを制御するFDE(フェラーリ・ダイナミック・エンハンサー)がミッドシップのV12モデルで初採用され、フェラーリ史上最高レベルの“パッシブな空力効率”を誇るエアロダイナミクス面では、リヤのアンダーボディに2本のフロア・チムニーを搭載したことで大幅にダウンフォースが増大。

 テールライトやエキゾーストパイプ位置の工夫で生み出された全幅にわたるリヤウイングや、かつての“ダブルディフューザー”を思わせる処理で、気流制御の大幅な効率向上も果たしている。

サイドミラーもドアではなくフェンダー頂点へと移され、これも1960年代のスポーツプロトタイプを思わせる配置とした
サイドミラーもドアではなくフェンダー頂点へと移され、これも1960年代のスポーツプロトタイプを思わせる配置とした
ドライビングポジションは他のフェラーリのラインアップモデルより低く、後ろに倒れた「シングルシーター的」ポジションを採用し、全高を1142mmに抑えた
ドライビングポジションは他のフェラーリのラインアップモデルより低く、後ろに倒れた「シングルシーター的」ポジションを採用し、全高を1142mmに抑えた
リヤのアンダーボディに2本のフロア・チムニーを搭載し、かつての“ダブルディフューザー”を思わせる処理で、気流制御の効率向上も果たしている
リヤのアンダーボディに2本のフロア・チムニーを搭載し、かつての“ダブルディフューザー”を思わせる処理で、気流制御の効率向上も果たしている

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