当チームもピットストップさせたいのだが、なんとか追い上げるには小河がいくしかない。ただ、レギュレーションで一人のドライバーが走れる最大時間は2時間。このタイミングで交代してしまうと、もう1回、高橋がステアリングを握らないといけない。交換できない状況だった。
トップグループが2回目のピットストップをしたため、モニター上のトップに当チームのハチロクが躍り出る。ピットストップに要するロスタイムやラップタイムなどから計算すると、1分近くのリードを持って2回目のピットストップを行なっても5番手あたりでしかコースに戻れない。
予選で大クラッシュしたS2000は、朝までにマシンを修復、最後尾からのスタートながら、すでに9番手にまでポジションを戻している。このままでは前にいかれてしまい、ランキングも3位に落ちてしまう。必死に逃げる高橋に無線の指示が飛ぶ。
厳しい状況が続くなか、65ラップ過ぎ、この日、2回目のセーフティカーがコースに入る。当チームはこのチャンスを見逃すことなく、高橋をピットにいれ小河にスイッチする。
4番手でコースに戻る。トップは86号車。遥か彼方だ。2番手にロードスター、3番手にシビック。この2台射程圏内。2番手にまで上がれる可能性がグッと膨らんできた。ただ、5番手にはランキング2位を争っているS2000が5秒後方から追い上げてきている。レース中盤には1分53秒台と速いラップも叩き出しているだけに油断はできない。
72ラップ目、セーフティカーが抜けると、シビックが2番手に上がり、ロードスターが3番手に後退。当チームのハチロクとの差は2秒弱。小河は1分54秒台で追う。ロードスターも同じようなタイムで必死になって逃げる。
81ラップ目、その差はコンマ18秒。まさにサイドbyサイドになるが抜くには至らない。SUGOラウンドで終盤、接触しているロードスターで、ドライバーも同じ。勢いだけではいけない。慎重にチャンスを狙う小河。チェッカーまで5分を切るがコンマ5~7秒のバトルは続く。
最終ラップの最終コーナーをロードスターが立ち上がってくる。この内側に並ぶようにして立ち上がってきた小河。エンドレスのピットの前をほぼ並ぶようにしてフィニッシュラインに向かう。
勢いは当チームのハチロクにあるように見えたが、タイムモニターはロードスターが3番手、当チームが4番手で映し出された。「ア~」と言うため息がピットガレージに流れた。次の瞬間、タイムモニターの3番手に当チームのハチロクが上がった。
マシンに取り付けるセンサーの位置でロードスターが先にチェッカーを受けたかたちになったが、すぐに行われたビデオ判定により当チームのハチロクの方が0.036秒先にフィニッシュラインを超えていた。
この瞬間、ため息は大歓声に変わった。優勝ではなく、3位なのだが目が潤んでいるスタッフもいる。2016年シーズン最終戦のオートポリスで峰尾が感動の走りを見せた。まるで再現するかのように今シーズンは小河が見せた。
もちろん、メカニックやエンジニアの頑張りがなければ、ここまでは追い上げられないし、高橋と花里という新しいドライバーの力があったからだ。
シリーズランキングは2位。狙っていた連覇は達成できなかったが、連続表彰台は15に更新。2017シーズン、小河を軸に高橋、花里というスーパー耐久未経験のフレッシュなドライバーで挑んだ13号車。2018シーズンはチャンピオン奪回を狙って、今シーズンに負けない熱い戦いで多くのファンに感動を与えられるように……
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2017年シーズン、エンドレスのハチロクを応援して頂いたファンの方々、たいへん有り難うございました。そして、スポンサーの方々、進化途中のエンドレスを今シーズンも最後まで暖かく見守ってもらえたことに感謝致します。
