当日、お盆休みの渋滞に巻き込まれながら富士スピードウェイに着き、Hitotsuyama GmbHのピットに向かう。この日はライセンス不要の『Fuji-1 GP』というイベントが行われており、そのなかで走らせてもらうというわけだ。
3ピットを占めるHitotsuyama GmbHのうち、2ピットはA1 Fun Cupが占めているが、RS3 LMSは1ピットをまるまる使う。前を通りかかる人たちがマシンを凝視していく。そりゃそうだ。このイベントは、ほとんど参加者は市販車で、RS3 LMSは、2台だけの『RACING』クラスからの参戦。はっきり言って、コース上でいちばん速いマシンのうちの1台なのだ。ちなみに、今回RS3 LMSに乗るのは筆者と、スーパーGTで活躍する富田竜一郎、そしてあとお二方。RS3 LMSの“初心者”は筆者だけだ。
まずは富田先生(今回はぜんぶ『先生』づけです)から、RS3 LMSについて注意事項を聞く。「アクセルとブレーキをオーバーラップさせたりするとダメ。パワーがタイヤに対して勝ってるので、止める、曲げる、踏むのは別々にやってください。あと、ブレーキペダルは重いです」と富田先生。
スイッチ類のレクチャーも受けたが、そこまでボタンは多くない。説明を聞きつつもなんだかフワフワしているうちに、午前のフリー走行が始まった。最初は路面が濡れていたこともあり、少し待って富田先生がコースイン。1分50秒台〜53秒台くらいのラップを刻んでくる。
「ヒラノさんは、最後のビギナー向けの時間帯で走りましょうか。その方が気楽でしょ?」とマシンを下りた後、気遣ってくれた富田先生。そしてその時はやってきた。慣れない手つきでスーツを着込み、お借りしたHANS(ふだんカートくらいしかやらないので持ってない)を着ける。ちなみに初HANSだ。
ピットレーンに戻ってきたRS3 LMSのドアが開き、ロールケージをまたぎ足を滑り込ませるが、ヘルメットを開口部にぶつけた。コンタクトレンズが不安だったのでメガネで乗ったが、曇らないように富田先生がファンを向けてくれる。シートベルトを締められ、ドアが閉まった。ホントに走るのか……。頭は真っ白になっていた。