F1での長いキャリアを経て、今は現場から離れた生活を送っているが、豊富な情報源を持つニック・リチャーズ氏のコラム。裏情報を知る彼が、F1の政治問題をテーマに、独自のシニカルな視点で時事に切り込む。

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 妻から「なぜ今F1で罵り言葉が問題になっているの?」と尋ねられて、椅子から転げ落ちそうになった。この60年間、彼女がモータースポーツにほんのわずかでも興味を示したことは、片手で数えられるほどの回数しかない。だから妻からF1についての質問が出たことに心底驚いたのだ。シェリーが入ったグラスをたまたまテーブルに置いたところだったことを、神に感謝した。引退して南スペインのアンダルシアに住んでいる旧友から早めのクリスマスプレゼントとしてもらった、バルデスピノ・トネレス・モスカテルを大事に飲んでいたところだったのだ。

 何が起きているのかを簡潔に説明しようとし始めたところ、妻はいつもどおり、あっという間にF1への関心を失い、「夕食の準備がどうなっているか、見に行かなくては」と言って、部屋を出ていった。彼女は立ち去る前に「悪態をつくなんてとても下品ね。語彙力がないことをさらけ出しているようなものじゃない」と言い残した。

 返事を期待されていたわけでないのは知っていたので、それに対して答えず、この話題はそこで終わった。だが、彼女がこの問題に関心を持ったということが強く心に引っ掛かって、F1がないインターバルで暇だったこともあり、FIAのトラブルの詳細について詳しく調べてみることにした。

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