ホンダがマクラーレンと組んでF1に復帰することを発表したのは、この年の5月。つまり、その5カ月後にトストはホンダの研究所に行ったことになる。その目的をホンダのある関係者は次のように説明する。
「F1を復帰するにあたって、FIAから『他チームから要請があった場合、複数にチームへ供給できる体制を整えておくように』という指示があった。そこでわれわれは他チームにホンダPUを搭載する可能性がないかどうか打診したところ、トロロッソが興味を示してくれたんです」
だがこの件は、その後ロン・デニスによって破談となった。つまり、トロロッソは4年前からホンダに興味を持っていたことになる。
トロロッソがホンダに興味を示したのは、それだけではない。2015年の日本GPではトストが今度はトロロッソのホスピタリティハウスでホンダ関係者と話し合っていたこともあった。この年、トロロッソはルノーPUの信頼性の低さに頭を悩ませ、ルノーとの契約を解消。翌年は型落ちのフェラーリPUを搭載することになった。
さらに昨年、2016年のロシアGPでもトストはホンダと密会していた。今回のトロロッソ・ホンダの誕生を一部では『トロロッソがハズレくじを引かされた』というような形でとらえられているようだが、実はホンダとの提携はトロロッソにとって4年越しの成就だったのだ。
トストはこう言って笑みをこぼす。
「ホンダは今シーズン、急速にPUを向上させてきています。最近はわれわれと常に接近した戦いを演じています。したがって、彼らが今後3年間、われわれに対して、強力なPUを供給してくることは間違いないと確信しています」