V8自然吸気エンジン時代の終盤にはエキゾースト・ブローイング技術の開発に失敗し、現行の複雑怪奇なV6ターボパワーユニットに転換したときには、またしても開発の方向性を見誤った。

 2013年の終わりにロータスから引き抜かれたアリソンは、スタッフを変えるだけでなく、その働き方をも変えるなど、フェラーリ内の技術開発の方向性に変化をもたらした。この改革の一環として、2015年の終わりにはジョック・クレアがメルセデスから移籍してきた。

 今年のマシンであるS16-Hは、ここ数年で最も独創性を欠いたマシンだと言える。前時代的で内向的なコンセプトを拒否しつつ、エアロ、サスペンション、そしてパワートレインのパッケージングにグリッドに並んだ他のマシンの要素を多く取り入れている。

 理論上では、このマシンのデザインが非常にコンペティティブであることは折り紙つきだった。実際、プレ・シーズンテストと開幕戦メルボルンでのパフォーマンスから、今年のフェラーリは勝利を争えるのでは、と期待されていた。

 今年のマシンが前年型と大きく異なっていることは誰もが理解していたため、熟成にはより多くの時間がかかるだろうと予想されていた。しかし、2年間の研究開発により、開発曲線は既に緩やかになっており、フェラーリはライバルよりも多くのポテンシャルを秘めていたと言えた。

 SF16-HはSF15-T譲りのタイヤへの優しさを継承していながら、より多くのダウンフォースとパワーを獲得することができた。そして前年型よりも燃費とエネルギーの回生効率がよいパワートレインを得る一方で、キミ・ライコネンが好むようなフロントの鋭い回頭制を実現している。

 しかし、ターボに関する初期トラブルが相次いでいることは、フェラーリが信頼性確保のためにパワーユニットの出力を下げていることを意味する。低い出力で走らざるを得ないことで、メルセデスとの距離は縮まらないままになってしまった。
(第2回へ続く)

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