そのハンデキャップ克服の最初の大きなステップが、第6戦モナコGPでのアップデートだった。フロア両脇に付けられた4つの小さなデフレクターが、フロア下部への乱流を防ぐ役割を効果的に果たした。1970年代に一世を風靡したグランドエフェクトカーの、サイドスカートと同じ原理と思ってもらえばいいだろう。
しかしそれだけでは、メルセデスとフェラーリの追撃には十分ではなかった。前輪の乱流のできるだけ解消するための次の工夫が、新形状のフロントホイールだった。アウトウォッシュ効果を狙った中空のハブは昨年から禁止されたが、レッドブルの空力エンジニアたちは規約ぎりぎりまで攻めて、各スポークを極限まで細く、さらに中心部に向かって大きな空間が開けたのだ。
そして次の第9戦オーストリアGPで、レッドブル・ホンダはついに初優勝を遂げる。ここでも新たな空力アップデートとして、フロントウイングにいくつかの形状変更を行った。外見からは大きな変更とは思えなかったが、『フロントとリヤのバランスが格段に改善された』と、マックス・フェルスタッペンは手放しで評価した。具体的にはリヤが安定したことで、コーナー進入からクリップに向けて高い速度を維持できるようになったのである。