レースは武器を使わない戦争だと言われる。したがって、行き当たりばったりでは勝てない。戦況を大局的に見る力が必要となるのだが、ホーナーはまさにその能力に長けた人物だった。彼が最初に打った一手は、マクラーレンから天才デザイナーと言われるエイドリアン・ニューウェイを引き抜くことだった。そして、F1参戦から6年目でドライバーズ選手権とコンストラクターズ選手権の二冠を達成した。

 しかし、その早すぎる成功によって、ほかの多くのチーム代表から嫌われることになる。特にニューウェイを引き抜かれたマクラーレンの元チーム代表のロン・デニスとは犬猿の仲だった。また、前F1の会長兼CEOだったバーニー・エクレストンから可愛がれていたことも、ほかのチーム代表からが疎まれる原因となった。

 しかし、ホーナーの頭の中にはこのF1村で仲良く暮らすことよりも、勝つことしかなく、そのために必要とあらば、長年パートナーとして一緒に戦ってきたルノーを切って、ホンダと手を握ることもためらうことはなかった。

 レッドブルがホンダと組んだ2019年には、こんなことがあった。ホーナーはレース後、常に会見を開くわけではない。レース結果があまり芳しくないときやレース後のスケジュールによっては囲みを行わないときもある。しかし、こちらにも都合というものがある。むしろ、レース結果があまり芳しくないときのほうが、逆に原稿を書く上でもっと情報がほしい。2019年はモナコGP、カナダGP、フランスGPがそうだった。

 そこでパドックで待ち伏せし、ダメ元でホーナーを突撃。そんな筆者にホーナーはいつもやさしく、個別対応してくれた。それは彼が筆者にやさしくしているのではなく、ホンダとの関係を大切にし、ひいては日本のファンを大切にしているからだと筆者は思っている。まさにプロフェッショナル。

 そんなホーナーの鳥瞰図には、レッドブル・ホンダの未来はどのように描かれているのだろうか。

F1レース関係者紹介(1)
写真中央に立つホーナー。ホンダF1の山本雅史MDや八郷隆弘社長、ヘルムート・マルコらとの1ショット

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