ちなみにセーフティカーランのとき、ノリスはマシンの不調を訴え始める。

ノリス:間違いなく、何かがおかしい。ステアリングが重くなったり、軽くなったりするんだ。特に右に切ったときにおかしい

 大混乱の1周目に、18番手スタートから9番手までポジションを上げたのがケビン・マグヌッセン(ハース)だ。

ハース:すごいヤツだ。OK、いい仕事をしたぞ、ケビン。本当にすごいぞ

 この後、マグヌッセンは1回目のピットストップまで入賞圏内を走行したものの、最終的に12位に終わった。1周目からセーフティカーが出たレースは、6周目に再開。しばらくして、フェルスタッペンがこんな叫びが。

2020年F1第10戦ロシアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
2020年F1第10戦ロシアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

フェルスタッペン:リヤのグリップが全然ない。とんでもないことになっている

 このとき、フェルスタッペンが履いていたタイヤはミディアムで、ほかの多くのドライバーが履いていたソフトよりも長い周回を安定して走ることができるはずだったが、フェルスタッペンは予定よりも早めにピットストップし、ハードにタイヤを交換することで打開策を図ることとなる。

 しかし、そのころメルセデス陣営も慌ただしかった。というのも、先頭を走るハミルトンはソフトタイヤでスタートし、2番手のバルテリ・ボッタスはミディアムだったからだ。さらに3番手のフェルスタッペンがリヤのグリップ力不足を訴えてきた10周目前後は、ボッタスとの差はまだ1秒程度だった。そこでボッタスとハミルトンに指令が飛ぶ。

メルセデス(ボッタスへ):ルイスとのギヤップを縮め始めてくれるかな

メルセデス(ハミルトンへ):ペースをもう少し上げてほしい。タック(戦略)3なので、タイヤはもう使い切ってしまっていい

 この直後に、ピットストップが近いことを察知したハミルトン「僕を早めにピットインさせないで」と無線するが、この段階でメルセデス陣営はチームとしてこのレースで優勝することを最優先に考えていたようだ。

 そして、それはハミルトンではなく、ボッタスだった。ペナルティを受けて大きく脱落することがわかっているハミルトンは、ソフトタイヤでペースが落ちることがわかっていた。ハミルトンがペースダウンすれば、ボッタスもペースが落ち、フェルスタッペンにアンダーカットされる恐れがある。ならば、ハミルトンはタイヤが終わって、ペースダウンした時点で迷わずピットインさせるというのがメルセデスの戦略だったに違いない。

 この日のレースは、2コーナーを不通過したことでペナルティを科せられたドライバーが続出した。そのひとりがダニエル・リカルド(ルノー)。その件に対するリカルドとルノーのやりとりは、ハミルトンとメルセデスとは対照的だった。

ルノー:ターン2の件で、5秒のタイムペナルティを科せられた

リカルド:オーケー、じゃ、これからもっと速く走ってやろうじゃないか

ルノー:ありがとう。恩に着るよ

リカルド:だって、自分のせいだからね。自分で始末しなきゃ

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