──スタートで前に出たリカルドが、上位陣のなかで先にピットに入りました。これはアンダーカットをされたくないのであのタイミングだったのか、それとも周りは関係なく自分たちのタイヤ戦略のプラン通りだったのですか。
今井:もちろん最初に入れるタイミングで入ったわけですが、後ろからバルテリ・ボッタス(メルセデス)が挽回してきていたので、ボッタスの後ろには当然なりたくない。あのタイミングでピットインすると、ボッタスとその前を走っていたサインツの間に戻る、ちょうどいい隙間があったので入ったんです。
──逆にレッドブル・ホンダは2番手のフェルスタッペンを同じタイミングで入れる用意をしていたのに、1周延ばしました。
今井:もちろん鉄則からいけば、同時に入ったら順位はそのままなので、あれは間違ってはいないと思います。詳しくはレッドブル・ホンダに聞いてください。
──ピットストップを終えるとランド・ノリス(マクラーレン)もハミルトンの前をキープしていました。
今井:ルイスも(ピットストップ作業が)遅かったので。
──1-2体制になった直後にフェルスタッペンとハミルトンが絡んで両者リタイアしました。フェルスタッペンは同じハードタイヤでしたが、ハミルトンはミディアムタイヤでした。もし、ハミルトンがレースを続けていたら、どうなっていたでしょうか。
今井:ボッタスが後半ペースがよかったことからもわかるように、(ハミルトンも)速かったと思います。でもここはなかなか抜けるコースではありませんから。
──確かに距離は違いましたが、土曜日のスプリント予選でもハミルトンはマクラーレン勢を一度も抜けませんでしたね。
今井:そうです。
──フェルスタッペンとハミルトンがリタイアした後、ノリスから「この作戦で本当にいいのか?」、「この戦略がチームにとってベストなの?」という、チームオーダーを出してほしいような無線がありました。確かに、あのタイミングでは純粋なペースではノリスが速かったように思っていたのですが、あの判断は?
今井:僕らのプライオリティはクリアで、チームのリザルトを最大化するのが目的です。したがって、それに沿ったものですね。
──そこで順位を入れ替えてもポイントは同じ。それだったら、人為的にポジションの入れ替えはしないほうがいいと?
今井:やる意味がないということです。
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今井弘(マクラーレンF1チーム ダイレクターレースエンジニアリング)
2008年までブリヂストンでエンジニアを務め、2009年にマクラーレンへ移籍。その後、マクラーレンでチーフレースエンジニアに抜擢され、2020年から現職に就き、レースチームのトップであるアンドレア・ステラ(レーシングダイレクター)を支えているチームの大黒柱。
