首位ルクレールと3番手サインツを、フェルスタッペンとペレスがそれぞれ3秒前後のギャップで追う。しかし抜けそうな気配はない。そして終盤40周目前後に、ペレスが不具合を訴える。
ペレス:ストレートでパワーが落ちていくんだけど
バード:わかった、ピットインだ
43周目に3回目のピットイン。5番手ハミルトンもピットインしたため、4番手をキープできた。
すると今度はフェルスタッペンに、ステアリングの不具合が出始めた。
フェルスタッペン:ほとんどステアリングが曲がらない。
ランビアーゼ:ピットインする必要はありそうか?
フェルスタッペン:大丈夫! だけど何が問題なのか教えてくれ! そうすれば、何とかするから。全然スムーズじゃない。ストレートでも
チーム側は、何が問題なのか、解明できないようだ。
ランビアーゼ:ステイアウトだ。信頼性の問題じゃないと思っている
フェルスタッペン:このスピードだと、どんどんステアリングが曲げにくくなってる
ランビアーゼ:状況は落ち着いてる
ランビアーゼ:このままステイアウトだ。パフォーマンスやマシンバランスに、大きな影響はない
フェルスタッペン:そうなの? めちゃくちゃ運転しにくいんだけど。ロボットみたいだ
ランビアーゼ:これ以上は、悪くならない。状況的に、ピットインできないしね。わかるだろう?
実際、ラップタイムに大きな影響はなかったようで、ともに3回目のタイヤ交換を終えた47周目、両者のギャップは1秒2まで縮まっていた。そして49周目には、フェルスタッペンはDRS圏内の1秒以内に迫った。
しかしフェルスタッペンはその直後、今度はバッテリーがおかしいと言い出した。
フェルスタッペン:バッテリーはどうなってるんだ?
ランビアーゼ:バッテリーは問題ない。
フェルスタッペン:全然大丈夫じゃないよ! リヤも無くなってるし、どうなってるんだ!
ルクレールとの差は、再びジリジリと広がっていった。
ランビアーゼ:トラブルが出てる。バッテリー関連じゃないけどね。
フェルスタッペン:じゃあ、何なんだよ! どうしたらいいんだ?
ランビアーゼ:できることは、あまりない。
フェルスタッペンは、その直後にスローダウン。順位を大きく落としながらピットへ向かい、そのままリタイアを喫した。
そしてペレスも同じトラブルに見舞われる。
(55周目)
ペレス:エンジンがない。
バード:あと2周だ。行けるぞ!
しかしターン1でスピンを喫し、そのままレースを終えた。
ペレス:くそエンジンが止まった
バード:了解した
ペレス:何てことだ、信じられないよ
ルクレールは首位を独走、サインツと1-2体制を築いた。チェッカー直前には、こんなジョークをいう余裕もあった。
ルクレール:何かエンジンがおかしいぞ
マルコス・パドロス:(笑いながら)了解した
ルクレール:もちろん冗談だよ(笑)
パドロス:わかってるって
ルクレールに悪気はなかったに違いないが、全滅したレッドブルにとっては悪い冗談でしかない。
そして戦闘力ではるかに劣るメルセデスも、ハミルトン3位表彰台、ジョージ・ラッセル4位という望外の結果を得たのだった。
ピーター・ボニントン:P3だ
ハミルトン:ヤッホー! 最高だ! いい仕事だ。信頼性が重要だということだね。
ボニントン:これから道は遠いけど、いいスタートが切れた。
まさに信頼性が明暗を分けた開幕戦だった。