7月3〜5日にシルバーストン・サーキットで行われた2026年FIA F2第7戦は、シルバーストンに工場を置くハイテックにとってホームレースだった。しかし、「多くの点でフラストレーションの溜まる週末だった」という。
まず、走りはじめのフリー走行ではコルトン・ハータ(ハイテック/キャデラックF1テストドライバー)がコースサイドにマシンを止め、満足な走行ができなかった。フリー走行を14番手で終えた宮田莉朋(ハイテック/TGR-DC)は予選で9番手に入り、上位10台のグリッドが予選結果のリバースグリッドとなるスプリントレースのフロントロウを獲得。また、ハータはほぼぶっつけ本番の予選で15番手につけた。
しかし、土曜日のスプリントレースで宮田は終始ペース不足に悩まされ11位。ハータは接触もあり15位に終わる。日曜日のフィーチャーレースは宮田が14位、ハータが16位となり、ハイテックはここ5レースを無得点で終える結果となった。
ハイテックのFIA F2レースエンジニアリング責任者を務めるヤン・スーマンは、「多くの点でフラストレーションの溜まる週末だった。十分な速さを見せて戦えたにもかかわらず、それを目標としていた結果に結びつけることができなかったからだ」と振り返る。
「莉朋は2レースを通じて、与えられた条件を最大限に活かした。一方、コルトンは厳しい週末のスタートにも関わらず、最後まで戦い続けた。前向きに捉えられる点もあるが、次のラウンドに向けて改善すべき点がいくつかあることは明らかだ」
現時点でチームランキング8位につけるハイテック。9位のVARに6点差まで迫られている状況だ。今はただ1レースでも早く“強いハイテック”を取り戻すことを願うばかりだ。


■観戦場所に気をつけて。FIA F2とFIA F3でチームゲストにまつわるペナルティ下る
F1イギリスGPの週末、サポートレースに参戦する各チームもさまざまなゲストをレースの現場に招いている。通常のチケットでは入れないチームに近い位置から観戦するのは貴重な経験となるに違いない。ただ、ゲストの観戦場所にはゲスト本人だけではなく、チームも最大の注意が必要だ。
サポートレースのフリー走行と予選が行われた7月3日(金)、チームゲストの観戦位置に関連する違反で、FIA F2のMPモータースポーツ、FIA F3のARTグランプリにそれぞれ罰金のペナルティが下った。
FIA F2のフリー走行中、MPモータースポーツが使用するピットウォール・スタンドにチームゲストが着席していた。FIA F2では競技規則第22条12項において、セッション中のピットウォールへの立ち入りについて定義しており、各参戦車両につき3名のみとされている(該当者はピットウォール用の識別腕章の着用が義務)。さらに、その3名は車両の実務に携わるオペレーションスタッフに限る(チーム代表およびチームオーナーは本規則の適用外)。
審査委員会によると、このチームゲストはF1エクスペリエンスチームのスタッフからピットウォールに招待されており、そのことをMPモータースポーツのマネージャーは認識していなかった。チームゲストはF1エクスペリエンスから提供されたサーキットの中継解説が聞こえるヘッドセットを着用してピットウォール・スタンドに着席していたという。
この件はかなり特殊な事象だが、審査委員会は許可のない人物がピットウォール・スタンドに着席していた事実は競技規則第22.12条違反にあたるとして、MPモータースポーツに1,000ユーロの罰金を科した。ただ、「チーム側にスポーツ上の優位性を得る意図がなかったことを認め、本件の特殊な事情を考慮した結果、罰金を一部猶予する」とし、1,000ユーロのうち500ユーロは、シーズン中に同様の違反がないことを条件に支払いが猶予されるという裁定を下した。
そしてFIA F3の予選中には、ARTグランプリのチームゲスト2名がピットレーン作業エリアにいたことがオフィシャルに確認された。ARTグランプリの代表者は指摘を事実とし、判断の誤りを謝罪。チームに対し2,000ユーロの罰金が科された。審査委員会は「チームゲストのいた場所は潜在的に危険な状況を作り出し、チームゲストを危険にさらした可能性がある」という結論をまとめた。
チームは自らが招いたチームゲストの安全を守ることを忘れてはいけない。同時に、コースの間近で競技を観戦するチームゲスト自身も、自分の観戦場所が正しい位置なのか、危険な場所ではないかを今一度確認してから観戦するべきだろう。ピットレーンの作業エリアは安全が担保されている場所ではない上に、チームが支払う罰金は2,000ユーロ(36万9,117円/当日のレート)に及ぶのだから。
■F1アカデミー第3戦:ワイルドカードの16歳がシリーズの歴史を塗り替える
2026年F1アカデミー第3戦シルバーストンは衝撃的な幕開けとなった。今大会のワイルドカードとして、スイス出身の16歳キアラ・ベッティヒ(ハイテック/ウエラプロフェッショナル)がデビューを飾った。
ベッティヒはレーシングカートのスイス選手権において、OKジュニア部門で3年連続のチャンピオンに輝くなどの活躍もあり、レッドブルの若手発掘プログラムの『レッドブル・ドライバー・サーチ・プログラム』へ参加後の2025年8月、レッドブルの若手育成プログラム『レッドブル・ジュニア・チーム』のメンバーに選ばれた。2025年10月開幕のF4サウジアラビアで四輪レースデビューを飾り、2026年はイギリスF4を主戦場とし、レッドブルカラーの車両でシーズンを戦っている。


そんなベッティヒがフリー走行で2分02秒640という最速タイムをマーク。イギリスF4のシルバーストン戦で3位表彰台の経験があるとはいえ、F1アカデミー初の公式セッションで選手権首位のアリシャ・パルモウスキー(カンポス・レーシング/レッドブル)を0.2秒上回った。これはF1アカデミーでワイルドカードドライバーがセッションをトップで終えた初の出来事だった。
そして予選でもベッティヒの地位は揺るがず、ベッティヒがポールポジションを獲得。ワイルドカードドライバーによる史上初のポールポジションが実現した。予選2番手に0.177秒差のパルモウスキー。予選3番手にリサ・ビラード(ARTグランプリ/ゲータレード)が続いた。
土曜日に行われたリバースグリッドレース(決勝レース1)は予選上位8台がリバースグリッドとなり、予選8番手のエマ・フェルバーマイヤー(ロダン・モータースポーツ/アウディ)がポールポールポジションからスタート。2番手ニーナ・ゲイデマン(MPモータースポーツ/アルピーヌ)、3番手エラ・ロイド(ロダン・モータースポーツ/マクラーレン)と、上位争いはグリッド順で推移。そのままフェルバーマイヤーがトップチェッカーを受け、今季2勝目を飾った。
一方、ワイルドカードのベッティヒはスタートでポジションを2つ下げるも、6周目のターン6でアルバ・フルップ・ラーセン(MPモータースポーツ/フェラーリ)をパス。さらに9周目のターン15でメーガン・ブルース(カンポス・レーシング/タグ・ホイヤー)を攻略すると、8番手のポジションに復帰し、2ポイントを獲得した。


5日(日)に行われた13周のフィーチャーレース。2番グリッドから抜群の蹴り出しを見せたパルモウスキーがスタートで首位を奪い、2番手ベッティヒ、3番手ロイドというオーダーに。
そんななか、2周目のホームストレート(ハミルトン・ストレート)でラファエラ・フェレイラ(カンポス・レーシング/レーシングブルズ)とエラ・スティーブンス(ロダン・モータースポーツ/マクラーレン・オキサゴン)が接触。2台はリタイアとなりSC導入となった。
レースは5周目に再開するとターン9(コプス)で前日のリバースレース勝者であり、選手権2位のフェルバーマイヤーが3番手に浮上。さらに4番手にゲイデマンが浮上し、土曜日に首位を争った2台がここでも直接対決を繰り広げた。
7周目には、首位パルモウスキーと2番手ベッティヒの2台が後続に4秒以上のギャップを開き、2台だけの接近戦を展開。この2台は事実上『レッドブル・アカデミー・プログラム(F1アカデミー専門プログラム)』のパルモウスキーと『レッドブル・ジュニア・チーム(レッドブル育成として知られるプログラム)』のベッティヒの戦いでもあった。
19歳のパルモウスキーは四輪経験5年目であり、F1アカデミーはフル参戦2年目。現時点でポイントランキング首位でもある。金曜日のフリー走行、予選で注目の的になった16歳のワイルドカードを、今季F1アカデミーでタイトル候補のパルモウスキーは封じ続ける。
ベッティヒはパルモウスキーの後方1秒以内をキープするも、オーバーテイクには至らない。ふたりのペースはほぼ互角となるなか、0.8秒差でファイナルラップの13周目を迎えた。
ベッティヒは0.6秒まで迫るも、オーバーテイクには遠かった。2番グリッドからスタートで前に出たパルモウスキーがトップチェッカーを受けて今季3勝目を飾った。
この週末の話題の中心にいたベッティヒは2位という確かな結果を持ち帰った。ワイルドカード参戦で優勝というミラクルには届かなかったが、今後のレースキャリアが楽しみな存在に違いない。3位にはトップから9秒遅れながらフェルバーマイヤーが続き、この週末2度目の表彰式登壇を果たした。
2026年F1アカデミー、次戦となる第4戦は8月21〜23日にオランダのザントフォールトで開催される。




