コース上にマシンが整列していく。私だけでなくそこにいたすべての人が、ポール・トレーシー(チーム・プレイヤーズ)が19台のマシンを従えてスタートラインにつく瞬間をワクワクしながら観ていた。しかし、何も起こらなかった。イエローフラッグが振られると、マシンはゆっくりとスタート/フィニッシュラインを過ぎていった。

 コース上では隊列が形成できておらず、レースオフィシャルがスタートのやり直しを決めたのだ。待ちわびていた瞬間が少々期待外れではあったが、もう一度コースを一周してきたマシンたちはあらためてグリッドにつき、レースがスタートされた。

 ブランズハッチのショートトラックを大型の速いマシンがフルスピードで周回していくのは、じつにスリリングな見ものだった。最初の数周は本当に楽しめた。10周が過ぎる頃、仕事仲間が私にこう言った。

「すごくクールだけど、誰かオーバーテイクする人はいないのか?」

 彼の疑問は正しかった。コース上では車列ができており、本物のバトルはまったく起きていなかったのだ。それでも観ていて気持ちがよかったが、徐々にこれが非常に退屈なレースになることが明らかになってきた。

 80周目までの間に何度かピットストップが行われた以外、特に関心を引くものがなかったのだ。その後、マレーシア出身ドライバーであるアレックス・ユーン(デイル・コイン・レーシング)が、ドルイド・ベント(ヘアピン)でクラッシュし、このレースで最初のコーションフラッグが出された。

 レースはすぐにリスタートされたが、コースを走行するマシンたちには、オーバーテイクをしようという試みがまったく見られず、またしても非常に退屈なレースになってきた。

 だが、レースが100周を超える頃、ポールポジションからスタートしたトレーシーのマシンは煙を上げてリヤエンドが完全に炎に包まれたまま、ホスピタリティボックスを通り過ぎた。トレーシーは残り10周を残したところでギヤボックストラブルによりリタイアを喫してしまった。

 優勝は、ニューマン・ハース・レーシングのセバスチャン・ボーデ、2位には彼のチームメイトのブルーノ・ジュンケイラが入り、ワン・ツー・フィニッシュを決めた。チームにとってはその年最初の優勝だった。

 後にジュンケイラはチャンピオンシップでタイトルを賭けて戦うが、この年の王者に輝いたのはトレーシーだった。トレーシーはブランズハッチでのレースで興味深いアプローチを取っていた。トラブルが起きるまで彼が大きなアドバンテージを持てていたのはそれが功を奏していたからだ。

ニューマン・ハース・レーシングのセバスチャン・ボーデとブルーノ・ジュンケイラがワン・ツー・フィニッシュ
ニューマン・ハース・レーシングのセバスチャン・ボーデとブルーノ・ジュンケイラがワン・ツー・フィニッシュ

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