5月9日、スパ-フランコルシャンで決勝が行われるル・マン・シリーズ第2戦。ル・マン24時間の前哨戦としてアウディ、プジョーの両ワークスが本格的に参戦するが、その中でワークスのアウディR15 TDIをドライブする日本でもおなじみ、アンドレ・ロッテラーに開幕前の意気込みを聞いた。
ロッテラーはスーパーGT第3戦富士を終えて渡欧。ベルギー出身のロッテラーにとっては、まさに地元とも呼べるスパでアウディワークスのデビューを飾ることになる。日本からの熱い声援を受け、ヨーロッパでの“復帰戦”に臨むロッテラーに、レース前の意気込みを聞いた。
●プジョーに対する速さを確認したい
「僕らのクルマは、全くの新車ではなくて、とても大きなアップデートをしたクルマなんだよね。アウディは今年、よりドラッグを減らしたいという目的でこのクルマを仕上げた。レスドラッグのクルマっていうのは、もちろん運転するのは難しいんだよ。だから、クルマを進化させるためにも、新しいクルマのことをより良く知るためにも、僕らは何度もテストをした。単純なことさ。その中で、いい時もあれば、あまり良くない時もある。アウディは何度もテストをして、すでにポール・リカールでは1回レースをして勝っている。そういう意味で、クルマは徐々に良くなってきているし、スパではプジョーに対して、実際僕らのクルマがどんなパフォーマンスを持っているのかっていうことを確かめないとね。僕は、今でも僕らのクルマと比べて、プジョーがすごく強いクルマだなって感じているから。ハッキリとは分からないけど、その点はスパで確認したい」
「モンツァではプジョーのワークスチームとテストで一緒だったけど、そこではお互いに全く違うことをしていたみたいだから、ポテンシャルを比較できないんだよね。それに僕自身も、あれがアウディの100%のポテンシャルだったかどうかは判断できないんだ。自分たちが走っている時の状態を詳しく教えてもらっていないから。だから、レースウイークになったらもっとポテンシャルが高くなっているんじゃないかなって期待しているんだけど」
「前回のポール・リカールでの耐久テストに関しては、すごく良かったと思う。僕は火山の影響で最初の日は参加できなかったけど、2日目には長時間ドライブして、マイレージを稼ぐことができた。そこでは、みんな目標とするタイムで走ることができたし、30時間全く問題なく走り切ることができたし、全員がハッピーだったと思う。去年アウディは、そういうテストを3回も繰り返さなきゃならなかったんだよね。途中でクラッシュがあったりして。だから、今年のテストは良かったと思う。時間を有効に使えたと思うしね。どんどん自信がついてきているっていう感じだよ。開発の最初の頃は、すごくトリッキーなところがあるクルマだったんだけど、そこからどんどん良くなって行っているんだ」
●スパは僕にとって“魔法の場所”
「スパで僕が最後にレースをしたのは2002年。24時間レースに、ポルシェで出たんだ。だから、走るのは8年ぶりになるんだけど、僕はホントにこのレースを楽しみにしているんだよね。僕にとって、スパは“魔法の場所”だから。僕の父がレーシングチームを持っていた時には、しょっちゅうスパでレースをしていて、そういう時には、いつも母と僕を連れてきた。だから、僕はようやく歩けるようになった頃から、毎年10回以上はスパに来ていたんだ。僕はサーキットの回りで遊んだり、父のチームが持っていた3輪バイクですみからすみまで走り回ったり、子供の頃の思い出がたくさんある場所なんだよね。だから、スパのコースを走りたいってずっと思っていたんだけど、なかなか本当に速いクルマで走るチャンスに恵まれなかったんだ。24時間レースには出たし、ポルシェGT3 RSRは面白いクルマなんだけど、空力マシンみたいなものではない。だから、今回は本当にホームレースだなっていう感じだし、すごくドライブしたいっていう気持ちなんだ」
「もちろん今回のレースでは、いいパフォーマンスを見せて、勝つことも目的のひとつになる。でも、僕とブノワとマルセルが組むチームは新しいし、クルマも新しい。だから、ル・マンの準備のために、このレースに出られるのは、とても嬉しいよ。それに、このレースはシミュレーションみたいな感じで、あまりプレッシャーもない。本物のレースに向けての練習みたいな感じなんだ。テストを何度もしても、レースの本番とは違うからね。だから、このレースをできるのはハッピーだし、目標はできるだけ多くのことを学ぶこと。レース中のドライバー交代とか、何か問題が起きた時のこととか、エンジニアとの仕事に関してとか、クルマのことをより知ることとか」
「アウディはすごく大きなチームで、3台も走らせていて、人がいっぱいいるから、一体誰が僕のクルマの担当なんだか、未だによく分からないんだよ(笑)。80%ぐらいは分かっているんだけど。それに、レースウィークになったら、テストの時とは全く状況が違って、やらなくちゃいけないことも色々あるだろう? PRの仕事とか、プレス対応とか。そういうことがすべて僕にとって新しいし、学ばなければならないんだけど、いい経験になると思うよ」
