FIA世界耐久選手権(WEC)第7戦上海6時間レース。ウエットコンディション下のレースは、雨脚が強まったり弱まったりする難しいコンディションの中、スタートから3時間が経過した。
現地時間の11時にスタートが切られた、WEC上海6時間レース。前戦富士同様、サーキットは降雨に見舞われ、セーフティカー先導でのスタートとなった。気温は13度、路面温度15度と、肌寒いコンディションだ。ポールポジションからスタートする17号車ポルシェ919ハイブリッドには、ブレンダン・ハートレーが、2番手18号車ポルシェ919ハイブリッドにはマルク・リーブが乗り込んでいる。
雨が若干強くなりかけたかに見えた5周目からレースがスタート。メインストレートで鋭く加速した18号車が、1コーナーで17号車のインに飛び込み、早速首位を奪う。後方では8号車アウディR18 e-トロン・クアトロの加速が鈍ったところを7号車が攻めて3番手に。8号車は続いて1号車トヨタTS040ハイブリッドにも交わされてしまう。
続くターン7で、先頭を走っていた18号車ポルシェ919ハイブリッドが大きくアウト側に膨らむ。その隙を突いて、17号車がインに。その2台のポルシェの間に、アンドレ・ロッテラーがドライブする7号車アウディR18 e-トロン・クアトロが鼻先を突っ込み、3ワイド状態に。そして、18号車と7号車が接触。18号車ははじかれる格好でスピンし、コースサイドにストップしてしまう。マーシャルの手を借りてなんとかコースに復帰するものの、非常に大きな遅れを取ってしまった。
後方では、26号車G-ドライブ・レーシングに接近した47号車KCMGが単独でスピン。グラベルに捕まってしまう。こちらは18号車ポルシェとは異なり、グラベルからの脱出には作業車の援助が必要で、早くも1周以上の遅れとなってしまい、G-ドライブ・レーシングとのタイトル争いに、暗雲が垂れ込める事態となった。これらの事故を受けて、コースには再びセーフティカーが出動。この間に、72号車SMPレーシングが早くもピットインし、ドライバー交代を行っている。
レース再開後は、17号車ポルシェ919ハイブリッドが逃げて行く展開。しかし、7号車と8号車のアウディR18 e-トロン・クアトロも、同様のペースでなんとか食らいついていく。トヨタは、1号車は健闘するものの2号車のペースが上がらず、徐々に引き離されていってしまう。
LM-GTEプロクラスは91号車ポルシェ・チーム・マンタイのペースが素晴らしく、チームメイトの92号車を交わしたばかりか、クラストップを走っていた51号車AFコルセをも交わして先頭に立つ。逆に92号車のペースは上がらず、徐々に順位を落としていく。アマクラスでは77号車デンプシー-プロトン・レーシングがクラストップに立った。
スタート直後のコースオフで大きく出遅れていた18号車ポルシェ919ハイブリッドは、コースに復帰した後はハイペースで前を追い、20周目には2号車トヨタTS040ハイブリッドの直後へ。翌周にはあっさりとオーバーテイクし、5番手へと順位を回復する。
21周目にペースの上がらない92号車ポルシェ・チーム・マンタイがピットインしたのを皮切りに、レースが開始1時間を経過する前後から、各車が最初のピットインのタイミングを迎える。
トップグループの中で最初にピットに入ったのは30周目の8号車アウディR18 e-トロン・クアトロ。翌周には7号車アウディと2号車トヨタ、32周目には1号車トヨタ、そしてトップを行く17号車ポルシェは最も遅い33周目にピットインを行う。追い上げ途中の18号車ポルシェも、17号車と同時ピットインだ。このピットインで、アウディとポルシェの各車はタイヤ交換も行ったが、トヨタの2台はタイヤを換えずに給油のみでコースに復帰させている。
LM-GTEアマクラスのトップを走っていた77号車デンプシー-プロトン・レーシングもピットインを行い、パトリック・デンプシーがコクピットへ。しかし、コースに復帰した後はペースが上がらず、スピンを喫するなどしてポジションを下げていく。
39周目を走り終えたトヨタTS040ハイブリッドが緊急ピットイン。左リヤタイヤがスローパンクチャーを起こしていたということだ。この作業の間に、マシンには中嶋一貴が乗り込んでいる。
1号車のピットイン直前から、各車のラップタイムがそれまでより5秒程度遅くなる。どうやら雨脚が強くなっていたようで、各所でスピンやコースオフが続出。42号車ストラッカ・レーシングはターン13を止まり切れずに直進し、グラベルに捕まってしまう。これでフルコースイエローに。この間に2号車トヨタTS040ハイブリッドもピットインしてタイヤを交換し、アレクサンダー・ブルツが乗り込んでいる。
先頭の17号車ポルシェ919ハイブリッドが45周目に入ったところからレースが再開。しかし雨脚は強く、ベストラップから20秒近く遅いペースとなっている。そして77号車デンプシー-プロトン・レーシングが最終コーナーで、88号車アブダビ-プロトン・レーシングが13コーナーでコースオフ。さらに44周目には13号車レベリオン・レーシングがターン13でオーバーランし、グラベルに捕まってしまう。これで再びフルコースイエローに。この間に、アウディの2台がピットインし、7号車にはブノワ・トレルイエが、8号車にはルーカス・ディ・グラッシが乗り込んだ。
フルコースイエロー中にも関わらず、50号車ラルブル・コンペティションがスピン。後続を確認せずにマシンを再始動させたところに、2号車トヨタTS040が突っ込む。あわや接触という事態だったが、2号車はマシンをコース外に逃がして接触を避け、難を逃れた。
50周目からレースは再開されるが、濡れた路面に足をとられ、88号車アブダビ-プロトン・レーシングがコースオフしてグラベルにストップ。さらには最終コーナーで中嶋一貴がドライブする1号車トヨタTS040ハイブリッドがコースオフしてストップ。このため、この日3回目のフルコースイエローコーションが宣言される。今度はポルシェ勢もピットインし、17号車にはティモ・ベルンハルト、18号車にはニール・ジャニが乗り込む。これにより、先頭には8号車アウディR18 e-トロン・クアトロが躍り出る。
53周目からレースが再開。ここでLMP2クラスのトップが入れ替わる。ここまでは28号車G-ドライブ・レーシングがクラス首位を走行していたが、スポット参戦の29号車ペガサス・レーシングがオーバーテイクして奪首。ペガサス・レーシングは、LMP2クラス参戦車の中で唯一ミシュランタイヤを履いており、それが路面コンディションにピタリとマッチしているようだ。トップを奪った後は、徐々に28号車G-ドライブ・レーシングとの差を広げていく。
上位は、8号車アウディ、17号車ポルシェ、7号車アウディ、18号車ポルシェの4台が、10秒差以内の混戦模様。そしてそのうち下位2台の方がペースが良く、隊列が徐々に狭まってくる。そして58周目、7号車アウディが17号車ポルシェを交わしてアウディが1-2体制に。アウディ7号車は8号車よりもペースが良く、しかもポイント上位ということもあり、60周目の1コーナーで8号車に進路を譲られ、ここで首位に立ってリードを広げていく。
ポルシェも18号車の方がペースは良く、62周目に17号車を交わすと、そのままの勢いで8号車アウディも交わして2番手に。67周目には18号車ポルシェが8号車アウディを交わして、ポルシェが2-3位を占める形となる。
天候は徐々に回復傾向。こうなると、次第にポルシェの方がペースで上回り始める。73周目には18号車ポルシェ919ハイブリッドが7号車アウディR18 e-トロン・クアトロの背後へ。そして、そのままオーバーテイクを成功させる。レース序盤のスピンで、一時最後尾付近まで下がった18号車ポルシェが、なんと先頭に立ったのだ。
路面が乾き始めたと見るや、28号車G-ドライブ・レーシングがピットイン。いち早くカットスリックタイヤ(スリックタイヤに溝を掘ったモノ)に交換。LMP2クラスは軒並みピットに入る。この影響もあり、91号車ポルシェ・チーム・マンタイは、LM-GTEプロクラスのトップのみならず、LMP2クラスも差し置いて、13号車レベリオン・レーシングに次ぐ総合10番手につける活躍を見せている。LM-GTEアマクラスは、98号車アストンマーチン・レーシングが首位を走行中だ。