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ラリー/WRC ニュース

投稿日: 2022.03.02 06:55
更新日: 2022.03.01 23:08

難しいラリー1のハイブリッド運用。スウェーデンでは「使い切れない」と勝田貴元/WRC第2戦

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ラリー/WRC | 難しいラリー1のハイブリッド運用。スウェーデンでは「使い切れない」と勝田貴元/WRC第2戦

 今回のラリーで、勝田は初日午後のループでスノーバンク(雪の壁)にヒットしその場でスタックしてしまうシーンがあり、これによって30秒ほどタイムを失ってしまう。その日の夜のサービスで大きくセッティングを変更。これが奏功しデイ2ではペースアップに成功する。

 また、デイ2以降はクルマのフィーリングに自信を持てるようになり、最終日のパワーステージでは4番手タイムを記録して、総合4位完走の選手権ポイントに加えてボーナスの2ポイントをトヨタのサテライトチームに持ち帰っている。

 デイ1とデイ2の間に行われたGRヤリス・ラリー1の改善について、彼は次のように説明した。

「細かく言える部分や言えない部分があるのですけど、基本的にはメカニカルな駆動系の部分と足回り、ダンパー関連を結構変更してクルマのバランスを大きく変えました」

「その中でもやはりメインは駆動系ですね。デフ関連の変更を大きく施し、そこの影響が非常に強く出た印象です」

「(新規定のラリー1カーでは)センターデフがない分、そのあたりの影響が顕著に表れると感じているので、そうしたところを今後もテストも含めて気をつけてやっていかなければならないかなと思います」

■ハイブリッドブーストが“速さに直結しない”場合がある

 ラリー・スウェーデンでは共通ハイブリッドシステムのトラブルによるリタイアが2件発生。優勝したロバンペラも、最終日はブーストが効かない状態での走行を強いられた。それでも21歳のフライング・フィンは日曜日のオープニングステージでベストタイムを記録。最終パワーステージでも2番手タイムをマークしてみせた。

 このことについて勝田に尋ねると、彼は今回のラリーのハイスピードなステージ特性が、タイムにおけるハイブリッドブーストの比重を下げたとの見解を示した。

「この件については他のドライバーやロバンペラ選手とも話しているのですけど、やはり難しいのは(ハイブリッド)ブーストがあっても、“使いきれない”というのが実際のところなんです」

「というのも(タイヤが)空転しすぎてしまう分トラクションがしっかりかからず、ブーストがあったとしても『速さにつながっていないのではないか』というセクションが非常に多くあったんですね」

「とくに最終日と、2日目のたとえば2本目に関しては非常に高速コーナーが多いステージだったので、(制動直後の加速時にブーストを得るために必要となる)3秒以上のブレーキをかける時間がないことがほとんどでした」

「実際、たとえば僕が最終日の早朝1本目のかなりハイスピードなステージを走っても、ほぼバッテリーを使っていない状況でした。(他のSSを含めて)ブースト自体を使えていないステージが多かったのです」

「ハイスピードな分、少しだけのブレーキだったり、アクセルを踏みながら左足でちょんちょんと当てるだけのブレーキだけのコーナーが非常に多く、そこで(ブーストを作動させるための有効な)回生が効かず、結果ブーストも効かずという感じで……要するにブーストでタイムを稼げたセクションが、モンテカルロのようなターマックのツイスティなラリーに比べると非常に少なかったと感じています」

「なので、そういったところは逆に言うと、どこでタイムを稼いでいくべきか、どこでブーストをうまく使っていくべきかというところが今後の課題になっていくように思ので、良いテストというか比較になったんじゃないかと思います」

 今回トヨタは、レギュレーションで認められている3つのブースト出力マップのうち、もっとも出力が小さいマップを使用していたという。勝田によれば、それでも「ギアが3速、4速に行くまで空転しかしないような感覚」であったといい、ブーストをうまく使えなかったことを今戦の大きな課題のひとつに挙げた。

 同様のケースは、同じく高速ラリーのフィンランドでも発生する可能性が考えられるが、一方で勝田の言葉にもあったようにツイスティなターマックラリーの場合は、反対にハイブリッドブーストがタイム向上に大きく寄与することが予測できる。そうしたことから2022年シーズンからの“WRC新時代”はハイブリッドの運用面も勝負を分ける重要なカギのひとつとなりそうだ。

WRC第2戦ラリー・スウェーデンで総合4位となった勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第2戦スウェーデン
WRC第2戦ラリー・スウェーデンで総合4位となった勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第2戦スウェーデン
ラリー最終日を首位で迎えたカッレ・ロバンペラは朝からハイブリッドブーストを失っていたが、オープニングのSS16でベストタイム。最終SS19でもセカンドベストをマークした。
ラリー最終日を首位で迎えたカッレ・ロバンペラは朝からハイブリッドブーストを失っていたが、オープニングのSS16でベストタイム。最終SS19でもセカンドベストをマークした。


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