そのメキシコでは、今回初めてハイブリッド車両のラリー1カーが走行した。高地で出力が低下する内燃機関のパワーを最高100kW(約135ps)のハイブリッドブーストが補うことになるため、ハイブリッドシステムの存在は他のラリーと比べて非常に重要になったと勝田は述べた。
「メキシコでのハイブリッドの活用に関しては、他のヨーロッパのイベントと比較して非常に重要になったと思っています。というのも、やはりエンジンだけ単体のパフォーマンスだとパワーがとんでもなく落ちて、フィーリングで言うとひとつ下のカテゴリー(WRC2クラスで採用されるラリー2カー)のエンジンのような感じになってしまいます」
「そこにハイブリッドのブーストが掛かることによって、なんとか本来の……厳密には本来のパワーまでは戻らないですけど、アシストがかなり助けになっていたと思います」
このことから今戦ではハイブリッドブーストの運用方法、事前に決められている3つのマッピングをどのように使うかなど、チームの戦略によっても各選手のパフォーマンスに幅があったと勝田は見ている。また、彼はこの分野を適切に見極めることができれば、より良い戦いができると考える一方、最後はドライバーに委ねられるところが大きいとも考えている。
「タイムを出していくうえでハイブリッドの活用や使い方、またチームのストラテジー、これらでかなりパフォーマンスが変わったと思います。ですので、このあたりはドライバーたちだけではなくチームにとっても難しい部分と言うか、今後さらによりよく活用していける部分のひとつであるんじゃないかなと思ってます」と語った勝田。
「ただ、その難しい部分としては、やはりハイブリッドのパワーアシストシステムをうまく活用できていても、グリップが低いメキシコのようなコンディションの中で、そのパワーをフルに活かしていくにはドライビングもかなり繊細に走らないといけないと思うので、そのあたりはどちらかと言うとドライバーが対応する面が非常に多いかなとも思ってます」
■「来年もメキシコがあれば、間違いなく充分に活かせる経験」
金曜日のデイリタイア後、土曜日に再出走を果たした勝田は、次戦以降のグラベルラリーに向け、データ収集の意味合いも含めて多くのことを試しながら走行し最適なドライビングを探っていった。しかし、自身のドライビングを大きく改善することに関しては納得のいくレベルには達しなかった。
とはいえ、初参戦のラリー・メキシコは「本当にいい経験」になったと言い、「改善すべき点は残ったのですが、最後まで走りきったことによって、このラリーの難しさやステージ特有のグリップの変化だったりとか、そういった部分をすべて見ることができました」と、収穫の多いラリーだったことを認めた勝田。
「結果もそうですけど、内容もあまり自分の中で完全燃焼できたわけではないので自分自身に納得のいかない部分が多いのですが、この結果をしっかり受け止めて今後のグラベルラリーはもちろん、他のラリーにも活かしていきたいと思います」