最終スティントは約3時間のロングドライブとなったが、当初チームとしては最後にもう1回ブエミを乗せてフィニッシュするつもりだったようだ。

「でも、僕が乗る前からセバスチャンが『俺、もう最後乗りたくない』みたいな空気が満々だったので(笑)、『それくらいは、やりますよ』という感じで僕が行ったんですけど、意外と長かったですね」と一貴は笑いながら振り返る。

「(トラブルで)何回もピットに入るわけですけど、ピットに入るごとにダッシュボードに時間が出るんですよ。何回かピットに入った時点でまだ1時間しか経ってなくて、『長いなぁ』と思いました(苦笑)」

 4年ぶりに勝利を逃す形となったが、トラブルが出る前から、エアロに負ったダメージのせいもあってか7号車とは差がついていたこともあり、「レースの流れは冷静に受け止めていた」と一貴は言う。

 そこに燃料系トラブルが発生し、イレギュラーな作業も増えたため「最後は走り切ることに集中していましたし、レースが終わった瞬間も『勝った・勝ってない』というところに意識はなかった」そうだ。

 また、悲願とも言える優勝を飾った7号車陣営については、彼らのこれまでの苦労をよく理解している一貴だけに、喜びの感情が大きいようだ。

「もちろん、僕らもレースを戦っている以上は優勝を目指してやっているんですが、チームとしてはこれまで7号車の方が不運を被ることが多かったですし、7号車のみんながやっと報われたというのは嬉しいです」

「ただ、レース終わったあとに僕がドーピング(検査)に行かなきゃいけなかったりで、ちゃんと祝えなかったのは残念だったなぁとは思いますけど(苦笑)」

フィニッシュ後、ストレート上のパルクフェルメにマシンを止めて表彰台に向かう中嶋一貴「(自分が勝ったわけではないので)居心地が悪かった」
フィニッシュ後、ストレート上のパルクフェルメにマシンを止めて表彰台に向かう中嶋一貴「(自分が勝ったわけではないので)居心地が悪かった」

 自身10回目のル・マンを走り終え数日が経過したが、「そんなに毎回勝てるものではないというのはどこかで分かっていますし、『勝てた・勝てない』よりも、24時間ミスなく、やるべきことをできたという充実感の方がが大きい」と一貴。

 来年以降は、ル・マン/WECの最高峰クラスにLMH、LMDh規定で多くのメーカーが参入してくることになるが、一貴は今季の残り2レース、そして来季以降にも意識を向け始めている。

「今回、クルマの方でトラブルがあったのは大きな課題です。また、今年のグリッケンハウスが基本、何事もなくレースを終えたのには、いい意味で驚かされました」

「今後、台数が増えるのはチームとしてもドライバーとしてもウェルカムですが、コンペティションのレベルも1段、2段と上がって行くでしょうし、今回みたいなレースをしていると勝てないことにつながっていきかねないと思うので、もっともっと引き締められるところを引き締め、ライバルが増えたときに戦う準備ができているようにしたいですね」

8号車GR010ハイブリッド
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