エンジンベンチでのテストは段階的に実施されてきた。BMWはまず、ベースとなるV8を単独で動かした後、いくつかの調整を加えた暫定エンジンを作り、それはLMDh規定の要求するパフォーマンス・ウインドウに対して、コンフィギュレーションの実行可能性を確認するために使われた。
その後、数時間にわたる耐久テストを行い、エンジンの信頼性を検証した。
このエンジンには、DTM時代の約500psよりも大幅に高い出力が求められる。ルースはエンジン、ギヤボックス、電気モーターで構成された完全に統合されたBMW M LMDhのパワートレーン全体が、すでにベンチでテストされたことを認めている。
このことは、1999年のル・マン24時間レースで優勝したV12 LMR以来となる同社のスポーツ・プロトタイプが、最初のシェイクダウンを行う日がそう遠くないことを示唆しているようにも思える。2023年1月に開幕するIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のGTPクラスでは、チームRLLがファクトリーチームとして2台のBMW M LMDhを走らせることが決定している。
「ベンチ上での耐久走行を開始した」とルースは説明している。
「マシンを(実際に)走らせる前に、エンジンの性能と信頼性を調査する必要がある。我々はベンチ上では、すでに完全なドライブトレーン一式の状態で多くの開発を重ねてきた。そして、これからクルマへと搭載する」
「耐久テストをする際には、完全なシステムとしてやらなければならない。そしてそれが、完成形の車両にどうフィットするか確かめるのだ」
ルースは、BMW M LMDhのシェイクダウンは、完全なハイブリッドシステムが搭載された状態で行われるものと予期している。これとは対照的に、現在のところLMDhマニュファクチャラーで唯一サーキットテストを行っているポルシェは、共通ハイブリッドシステムを段階的に搭載してテストをしてきたことを明らかにしている。
「我々はこのようにやりたいのだ」とルース。
「タイムスケジュールは極めてタイトだ。したがって、暫定仕様を走らせる時間はない」
「だからベンチでの開発に力を入れ、レースカーでテストを開始するときには、できる限り万全の体制で臨めるようにしているのだ」
「エンジンは、全体のなかで重要なピースのひとつだ。クルマのすべてのネジやボルトは必要だが、ドライブトレーンシステムは重要なものだ。すべてが組み合わさっていなければならない」
