──パルクフェルメでは優勝ドライバーだけでなく、2位・3位のドライバーへのインタビューもあります。そういう時も感情の出し方や質問の仕方は変えているのですか?
英美里:状況次第ですね。『この人はあまり感情を乗せずに聞いた方がいいだろうな』とか『この方は多分ちょっと感情乗っている方が話しやすい方だろうな』とか、そこは使い分けられる範囲では使い分けるようにはしています。
──そういうシーンでいくと、直近では昨年の最終戦での太田格之進選手でしょうか。
英美里:昨年の太田選手もそうでしたし、2023年にローソン選手がチャンピオンを逃した時もそうでした。
ああいった時、聞き手の言葉は多くない方がいいと思っています。だって、こっちが何を聞こうが悔しいに決まっていますから。誘導尋問はしたくないんです。 ファンの皆さんはドライバーさんの声が聞きたいはずだから、心のままに喋っていただきたくて、すごく短く聞くようにしています。
例えばリアムの時は『リアム、P2』とだけ聞きました。 事実だけを言葉に出して、それに対してどう答えるかはドライバーさん次第。ああいう悔しい瞬間は、多くを聞かないように気をつけています。
──ピットレポーターをしていて、一番緊張する瞬間はいつでしょう?
英美里:予選はけっこう緊張感が高いです。とくに、Q1のBグループ終わったぐらいですかね。やはりQ2進出を懸けているわけですから、チームの様子も見なくてはいけないですし、注意して見るべきものの数も多くなります。
あとは、決勝前のフォーメーションラップが終わって、いよいよシグナルが変わる瞬間ですね。スタート直後はやっぱりアクシデントも多いじゃないですか。 そうすると情報収集のために走らなくてはいけないですから。 基本的に私はダンディライアン、MUGEN、トムスあたりのピット付近にいることが多いのですが、モニターを見つつ、いつでも自分自身がスタートダッシュを切れるような態勢でいるようにしています。
■最前線に立てる幸福と『責任感』
──3年間やってきて、最初の頃を振り返って『これはできるようになった、成長しているかな』と思うことはありますか?
英美里:取材の仕方ですかね。 以前は『とりあえず片っ端から聞かなきゃ!』という感じで、聞ける人は全員捕まえて話を聞くという感じでした。今は『この人にはこれを聞かなくちゃいけない』『この人にはこれを聞いておきたい』と、取材対象や取材をするタイミングを絞れるようになりました。
あとは1日の時間配分ですね。 前は控え室に座っていることに対する罪悪感があったんですよ。常に歩き回って話を聞かなきゃって思っていたんですけど、情報の取捨選択ができるようになって、 ひと息つく時間とか、ご飯食べる時間とか、控室でち腰を落ち着かせる時間とかが持てるようになりました。
レポーターとしての1・2年目は誰に見せるわけでもなく、聞いた内容を自分用にレポートとして夜遅くまで書き起こしていたこともありました。それがないと精神的にいっぱいいっぱいになっちゃって、緊張で夜眠れなかったんです。
でも、それはやめました。100聞いた情報を100すべて出せばいいってもんじゃない、と学んだんです(笑)。今はもう少し短い、自分用の情報をまとめたメモを用意してます。
──ピットレポーターの仕事で、ここが辛いなという瞬間は?
英美里:夏の暑さ! こんなに暑いとか思っていなかったです。でも、そういう時は気合いで乗り切ります! 自分もアドレナリンのスイッチが入って、セッションが始まると暑さを忘れるんですよね。でもセッション終わると、どっと疲れがきます(苦笑)。
──では、ピットレポーターをやってきて良かったなと思った瞬間は?
英美里:いっぱいあります。 自分自身がモータースポーツが大好きで、この世界に惚れ込んで、その最前線にいられる喜びっていうのはこの先何年やれるか分からないですけど、いつまでも褪せないと思います。
最前線に立って、その瞬間を見させてもらって、優勝したドライバーさんに一番先に言葉を聞ける特権ですね。 本当に特権だと思います。スーパーフォーミュラのファンがたくさんいらっしゃって、そのみなさんが聞きたい言葉だと思うけど、それを聞き出せる役が自分なんだ、というのは最高に幸せです。
その特権をいただいているからこそ、100点じゃなくて105点、110点を目指しています。ピットにはたくさん人がいますけど、そこで起きている状況を伝えられるのはピットレポーターである私だけなので、ものすごい責任があることも自覚しています。
間違った情報を言ったら怒られて当然だし、チームやドライバーの皆さんにも迷惑をかけてしまう。お客さんもがっかりさせてしまう……そのことは絶対に忘れてはいけないと思うし、責任感を持ってやらないといけないなと思っています。
──最後に、今年のスーパーフォーミュラの見どころを教えてください。
英美里:“ヒューマンモータースポーツ”というテーマが掲げられて3年目になるので、すっかり浸透しているとは思うのですが、ここまで積み重ねてきたものがドライバーそれぞれにあればあるほど、ヒューマンモータースポーツという言葉に重みが出てきますよね。
近年では公式映像でも積極的にエンジニアさんとかチーフメカさんとかスタッフさんを撮ろうと意志を持ってカメラ映像で映すようにしているのですが、その方々もやっぱり毎年それぞれの挑戦があります。
例えばチーム移籍もあれば、そうではない人も移籍しないがゆえのプレッシャーが、現場にはあると思うんです。そういうのを知れば知るほどヒューマンモータースポーツの重みを感じられると思うので、皆さんがそれぞれのストーリーを感じるままに味わってほしいですね。人の部分に今年も見どころはたくさんあると思いますし、それを全部ひっくるめて、今年も注目して欲しいと思っています。私も精一杯レポートしたいと思います!
●プロフィール
Emily:日本×イギリスのハーフ。レースアンバサダーとして活躍後、2023シーズンからスーパーフォーミュラのピットレポーターを務める。5月24日生まれ、神奈川県出身。
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